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ティータイムを済ませた父親パーティー。用のなくなったお菓子の家を出て、小高い緑抹茶味の丘を降り3936階、その階層の先へと進んだ。


「外のモンスターさんたちが強くて……私ここに命からがらノ、逃げるようにこもって耐えてました」


「そりゃそうだな……」


俺でも1人じゃろくに進めないしな。ソロでなんとかなるゲームじゃないしそりゃこうなる。

可黒美玲は別だが……。


「だがここから先はチームプレイだから早々逃げるようなことにはならないぜ」


「は、ハイ王!!」


視界の彼方からかなりのスピードで何かが迫って来る。

電子の荷から取り出された美しい白い刀は既にその男の手に。

敵襲だ。


巨大なドーナッツタイヤが焼き菓子の道路を爆走し父親パーティに襲いかかってきた。


「さっそく来たぞ! サムは俺の後につづけばいい」


突っ込んで来るのは!

戦闘開始時、既に用意してあった炎の柱のトラップが焼き菓子の道路から噴き上がる。


【爆柱斬】

斬りつけた地点を通った敵に地から炎の柱を発動させるトラップ技だ。隙は爆牙斬より大きいため使いどころが肝心だ。


炎の柱の威力により宙に打ち上がったドーナツバイクの穴を水の矢が撃ち抜く。内側に乗車していたホイップクリームでできた人形(ひとがた)は貫かれ【オールドファッショナー】は光の粒へと還った。


「魅せてくれるじゃん!」


女神石像は父親に向けて両手であざといガッツポーズを見せている。

そうこうしている内に後方に現れたドーナッツぽーる。本体の白い棒に突き刺さっているドーナッツが棒を中心にぐるぐると回転し遠心力を得て弾き出され。


激しく横回転したドーナッツりんぐが前衛に狙いを付け飛んできた。発射されるドーナッツの種類はランダムだ。


激しい火花を上げその勢いを得た質量とかち合う白蜜。


「うおおおお変な生物ってェ! ドークスしてやりたいところだが!」


炎の連撃は猛スピードのドーナッツを斬り刻み焼き払った。矢継ぎ早に発射されたドーナッツは父親を追撃し。


「敵は飛び道具が多いなァッエロいゲーム! もう品切れでいいぞ」


プレイヤーの魅せる美技! その美しい刀により焼き焦がされ地に散らばった小麦は電子のもくずとなり消え失せ。

強力な遠距離攻撃を放ったドーナッツぽーるはその身に纏っていたご自慢のドーナッツのドレスを失い棒立ちしている。

そしてフルセカイ化したラヴあスの敵は悠長に待ってくれない。父親もこのセカイで経験を積みこのゲーム世界は一筋縄ではいかないことを把握している。


白蜜は握られている、彼のその手に、しっかりと。

どこからか湧いてきたオールドファッショナーがぞろぞろと一斉に父親に向かい仕掛けてきた。


「3人で父親に仕掛けてきてもサァ!」


肉薄してきた3体はその巨大なお菓子のタイヤでターゲットを押し潰すつもりだ。

袈裟斬り、上段から振り下ろされた父親の代名詞。その技。

巨大な炎球が敵を包み込む。


「戦いは数より一人の火力なんだろ!」


「これが……王のチカラ!! すごい! 炎がっ……狂ッてる!!」


その黒いスーツは炎の中で笑いながら踊り続けている。それを口をぽかんと見つめるピンクの髪の彼女はひとつ、ごくりと唾を飲み覚悟を決めた。

爆王斬の炎の威力に仰け反り動きの止まったドーナッツタイヤたち。


「って私も! 【凪】払わせてもらいます!」


【凪】払われた七枝刀。父親の炎により動きの止まっていた人形ポイップは真横に一閃され、弱点を突かれたオールドファッショナーたちはまとめて滅されていく。


「ぐぴぴぷはぁッ! よしいいぞ! なんでもいいッ! とりあえず片っ端から斬りまくれ」

「アレこれ連携言うよりもまずはっ……勝利だろ! ゲームはみんなでたのしくだエロいゲーム爆王斬!!」


「あはははは! ヤリましょー!」


ナニかのスイッチが壊れ勢いを得た新生父親パーティー。

焼き菓子の道路の攻防は激しい炎と魔法、狂った剣風が入り混じり。次々とエンカウントしたドーナッツを斬り刻み焼き払っていった。


「よし進むぞ! もうドーナツ屋に生涯用はねぇ!」


「はぁはぁ……あははハイ、王!!」


迫り来る敵を滅しお菓子のセカイを攻略していく父親パーティー。数多の敵を倒し勝利の勢いのまま次の階を目指して焼き菓子の道路を駆け抜けていく。


彼と一緒に戦い煌めく汗が心地いい。

わたしをどこまでも引っ張っていってくれるような、圧倒的な王の熱量!


────王、あなたはこのサム。いえ、わたし吉田さくらまで変えてしまうのでしょうか!



しらず心の鼓動は速まっていた、彼女はドキドキも忘れるぐらいのワクワクの心で先をゆく彼の背を追いかけた。





見上げる飾り気のない青い空と香る茶畑、のどかな雰囲気とどこか懐かしい日本家屋が佇んでいるそんな煎餅の里に、突如飛来してきたプレーンな柄のクッキー円盤。

特攻を仕掛けてきたバタークッキーは七枝刀に凪払われ粉々に砕け散っていく。


「なんですこれー!?」


「クッキー星人だろ! 爆炎斬!」


「……あはははは! そんな星人は星屑にしてヤリましょー! あははは」


突如、ピンクのセミロングをゆらし狂ったように前線に躍り出て剣を振り回す彼女。

無茶苦茶に暴れ寄って(たか)る軟弱なバタークッキーたちを斬り裂いて粉々にしていった。


「お、おう……!」


飛来してきたクッキーたちはそんなハイになっている彼女に狙いを定め空から黒い小さな固体が地へと連続で撃ち放たれた。


「きゃ、痛たたたたっ痛!!」


「おーい油断するなよー」


そう言いつつ父親は彼女の元へと駆けつけた。


怖いもの知らずだなぶっ飛んでいやがる……。何故かすすんでイカれた行動をしがちのこいつを制御するには……成功体験を重ねるしかないだろうな。


「ハイ王……たたたぁ……。空からなんて卑怯過ぎませんカァ!」


「マァナ、本当にそう思うよなここ最近は特に。こっちは斬るしかないんだからようおっと!」


チョコチップクッキーがその身を削りチョコチップバルカンが放たれ続ける。空からの連続射撃だ。

炎の斬撃では相殺しきれない弾速の速い連続射撃。


「──ッッいくら山田燕慈さんでもそんな繊細なことできるかよ」

「とにかく相殺するより動け! 物陰に隠れてもいい無理せずチョコなしを狙え」


「ぐぴぴっ……ふぅハ、ハイ王!!」


「カードは女神石像を守れ、女神石像解放だヤれ!」


頷いたパーティーメンバーは父親の指示に従いそれを実行していった。


「って王どこに!?」


「大丈夫だエロいゲームの攻略法を魅せてやる!」


父親は地を走りひとり敵陣へと向かう。

予想通り飛び道具を持たないバタークッキーは発見した敵へとすぐさまその身を激しく横回転させ体当たりするように突っ込んでいった。


父親は地に迫り来るバタークッキーをいなしその円盤の中心を踏み台にし、さらに跳躍。

続々と襲いかかってくるバタークッキーは彼の並じゃないゲームプレイにより空へと上る階段へとされていく。


そしてジャンプ+【爆回斬】【爆炎斬】で大きく宙を移動し。

チョコチップバルカンがその宙の無防備になった的を蜂の巣にする。


「甘くて軽いんだよ! 父親の装甲はそんなちょこっとのチョコでサァ!」


黒いスーツにドカドカと火花を散らしぶつかるチョコチップをものともせず。


刃は届いた。


「+爆王斬!!」


巨大な炎球は宙をたむろするチョコチップクッキーの群れを焼き焦がした。


「ハッハーー、これで硬かったら冗談じゃないからなエロいゲーム!!」


彼女はその光景に口をしらずあけ遠くから彼をながめる。

今まさに彼女の見つめる目のカメラに信じられないことが起こっている。


「王……やっぱりこの人はイカれ……フツウじゃない!」


状況は更に動く。

石の板の守護により水を刺されず完成した複数の魔法陣。


アオいオーラは解き放たれ女神石像の強く指差した上空へと水の魔法は発射された。

アクアスナイプ∀∀のマルチロックオン。

ロックオンされたクッキーたちは次々とその水のミサイルに貫かれその身を爆散させボロボロと地に小麦片の雨を降らせた。


その圧巻の空殺劇に、またも新入りは驚く。


「メガミさん、すごすぎません!?」


「ハハ、そうだな!」


女神石像は狙い通りに上手くいき右の拳を大きく空に掲げて喜んでいる。


「よし、残党狩りだ! あとは全員好きに暴れろ!」


「ハイ王!! 待っていましたきょうのフツウ超えポイント稼がせてもらいますあはははは」


さっきの驚きはどこへやら、ナニかのスイッチが入ってしまった。

すぐさまサムは跳躍し日本家屋の青い屋根の瓦を走り、彼のゲームプレイのマネをするように宙飛ぶお菓子の敵へと飛び掛かっていった。


「とんだモンスターがパーティーに加入しちまったな……あ、女神石像はアクアスナイプな」


父親は女神石像の頭をチョップし巨大な魔法陣の詠唱を中断させた。


煎餅の里の住民も洋菓子の残党狩りに加わり、襲来してきたバタークッキーとチョコチップクッキーは余すことなく平らげられるように殲滅されていった。





「バリボリバリボリっ……煎餅とお茶これだけあればいいよにゃっ」


「ばばばりぼぼぼり……ふぅぃい、そうですにぇお茶が沁みみゃす」


腰の曲がったお婆さんのシルエットを型どった甘い醤油煎餅星人、【ぼたぼた煎餅婆さん】から仕入れたお茶っ葉で淹れた緑茶とお茶請けの煎餅を味わう父親パーティー。


そして案の定すっ飛んできた女神石像はコーヒーフィルターに茶葉を入れコーヒーと同じ要領でそれを淹れた。すっきりとした味わいのお茶に仕上がりメンバーに好評のようだ。


襲来したクッキー星人たちを殲滅した後、一仕事を終えた後に訪れたゆるやかなじかん。ティータイム、父親たちは大きな日本家屋の縁側に並び段々と連なった小高い丘に伸びる緑鮮やかな茶畑を眺める。


「にしても王、なんですここは?」


「きっと煎餅星人の里だろ」


「煎餅星人……味方なんですか?」


「襲って来なけりゃ全部味方だサム」


「あはははそうですね!」


「王さっきからやってる……なんです?」


父親は茶菓子を楽しみながら紙に鉛筆を走らせ何かを思い出しながら書き込んでいく。

子供のようにたのしそうに。


「これはまぁ説明書だな、サムお前の能力だ」





ささよ 防御デバフ

よささ 攻撃デバフ

よさよさ スピードデバフ

ささささ リミットメルト溜まり

よよよよ 自己回復


凪払い リセット


シチシトウ オールバフ


サム★スペシャル オールデバフ


七枝刀はデバフを打つ度────





その紙に書きなぐったものをサムに見せ、丁寧に彼女に説明をしていく父親。

突然の事に驚いた彼女だが王のよく話を聞き。


「さくら斬り、よしだ斬り……ふむむそんな効果が!?」


「あぁ雑魚相手は凪払ってればいいけど、硬いやつはそれだけだと芸がないだろ」


「たしかに、これで王をサポートできますよわたし!」


「ハハ、そうだな頼もしいぜ」


「て、ほんとに見れちゃったんですね全部私の考えた技ですよ王! わたし以上にわたしを知り尽くしてるなんて占い師ドリー見ぐらいヤバイですよ王!」


「そ、そうだな……」


誰だよそいつは……。本当にダレだ……ラヴあスにそんなのいたっけ?

てか占い師と同じくらいってどうなんだそれ? おっと、ダメだサムのペースにハマったらテンションが保たないぞー。


「ぶはっ!?」


「どした!?」


ピンク髪は急に飲んでいたティーカップのお茶を宙に吐き出した。


「──えっふえっふ!! ……王、ナンか来てます!!!!」


()せた彼女の背をさすり介抱しながら。父親は見渡した、その縁側から前方に広がる光景は。


「あぁ、さっきの大群はどうやら偵察部隊だったようだな……」


茶畑ののどやかな緑の地その上空に現れた異物、カラフルなケーキの超ボリュームの白い大型戦艦。


「なんですアレええええ!」


「バカバカしいから考えるな、エロいゲームだ!」


「エロいゲームとは!? 王!?」


「突然すぎてイカれているってことだ!」


「な、なるほど!」


「とにかく戦闘準備だ、サム、女神石像、カード!!! あれはきっとタダじゃないぞお!」


緊急事態、それを察し父親の元へと集まってきたパーティーメンバーたち。


フルセカイ化したエロいゲームであるラヴあスは予想を超えた進化を遂げた。のどかな日本式ティーブレイクは打ち切られ現れたその甘いデカブツと父親パーティーの甘くないバトルが始まってしまうようだ。

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