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快晴の青い空の下、色とりどりの玩具のブロックが敷き詰められた大地は戦場と化していた。
大口径の短い砲身から放たれた弾は鋭い弾速で一直線にターゲットへと迫る。
「爆破斬!」
技の使用タイミングをドンピシャで合わせ、斬撃と中規模の炎球が敵の砲撃を迎え撃った。
発射されたビー玉は威力を相殺されたがそのおまけの爆発までは防げずターゲットを呑み込んだ。
爆炎と硝煙を貫き、刀を携え突き進む黒いスーツ。
「ッッ! てめぇッ!! ぐぴ」
回復アイテムの効果で蓄積されたダメージは瞬時に癒やされていく。
第2弾の装填までの時間は、ガチャガチャと安いキャタピラで後退していくその青い戦車に追いつくのには十分だった。
「……痛くても死にはしない! ゲームだろ!!」
「うおおおお爆王斬!!」
紅い斬撃を受けた砲身は、そこから巨大な炎球を発生させ青い装甲は呑み込まれていき、
玩具の戦車は光の粒へと還った。
単騎で突貫し強力な砲台を先に仕留めることに成功した父親パーティーだが、敵は待ってくれない。
広いブロックの地をカラフルなスライムたちは散り散りに移動していく。スクランブル発進、現れた脅威を取り除くため後方に在るメカに乗り込むつもりだ。
赤い三角の積み木と青い三角の積み木、その帽子を被った2体の積み木弓師は矢をつがえる。そして上空に向け矢が放たれた。
曲射されて降り注いで来た赤と青の玩具の矢の雨は後退していたスライムたちに見事突き刺さっていく。
脆弱なスライムたちは続々と光の粒へと還り消滅していった。
「よしアカアオ、乗り込ませるな!」
新戦力の赤と青の積み木弓師は指示通りに後方から父親の全力での支援に徹した。メインウェポンの可愛らしいピンクの弓と世の男の子の好きそうな雷を呼ぶ勇者の青い弓から矢が惜しみなく放たれ続けている。
運良く矢の雨を掻い潜ったスライムたちは各々メカに乗り込み発進し離陸していく。セットになることで強力なモンスターへと生まれ変わる彼ら、圧倒的な数の差によりその一部は父親パーティーの猛攻から何とか逃れる事に成功。
「【爆破斬】【爆王斬】ぐぴる【爆破斬】【爆王斬】!!」
剥き出しの基地に先回りしていた父親はまりょくを補充しながら荒ぶる炎の連撃で次々と玩具のメカを燃やし。
「斬波爆王斬!!」
「てめぇら全員二階級特進だ、炎をうけとれええええ!!」
破壊行動で溜まったリミットメルトを解放し紅い斬撃波は効率よく戦闘機を斬り裂き。
前線でひとり無防備になっている敵を相手に暴れ回る父親により玩具の基地はほぼ壊滅状態だ。
「脳筋をヤリすぎたか……モグ蔵が生きているか心配だな、戻る!!」
燃やされた基地を脱し離陸に成功した灰色の機体はろくな隊列も組まず父親パーティーの後陣を叩きに行った。
状況を判断した女神石像は既にその準備を整えていた、迎撃。
狙いを定めて……美しい石の顔は大きく強く叫ぶ。
∀の字が頭上に浮かび上がる。アオいオーラは解き放たれ、コピーされ構築された多数の魔法陣から斉射された水の矢。
水はうねり空に向かって、狙いは外さない。
上空を舞う玩具の戦闘機たちは強烈な魔法に被弾しその機動力戦闘能力を活かせぬまま撃墜されていった。
しかし、他と飛行速度の一味違う機体がいた。うねり追尾して来た水の矢のミサイルを華麗に掻い潜り、反撃に転じた。バルカン砲から連射したカラフルな弾を密集していた父親パーティーたちにぶち込んだ。
電光石火のアタックに慌てて回避行動を取った積み木と石像とモグラたちはダダダダダと被弾してしまった。
が、言い渡されていた【全力】の作戦通り無理せず回復アイテムを飲みそのブロックの地に弾き散らばる色鮮やかなBB弾の砲撃に耐え凌いで反撃のチャンスを待つ。
上空を飛び去った鈍い金色の機体はもう一度狙いをつけるためUターンを試みる。地と空の絶対的な優位の差を叩き込むつもりだ。
「上を取れて安心したか? 軟体パイロットくん」
その機械の翼をがっしりと掴みぶら下がっていたヤツは、電子の腕のチカラでひょいと金色の背に乗り移り。
がっしりと張り付いたその両足は風を切るスピードでも振り落とせはしなかった。
「残念、エロいゲームはガチじゃねえ」
コックピットに座っていた赤いエースパイロットは天を見上げるが。
刃は迫る。
「爆王斬!!」
上空に巨大な爆発花火が咲き誇った。
強力な金色の鳥は討ち取られ。
両軍のエース同士の空でのたたかいは決着した。
すべてを終え、玩具の地に舞い降りた黒いスーツの男。
相棒の美しい白い刀は労わり仕舞われ。
その元へと駆けつけてきた4つの影。
集まった────ふたりと2体と1匹。
「ここからは。俺たちと戦争だ、エロいゲーム」
▼
▽
「ミーヌ」
▼
積み木弓師(赤)
ランク 苛炎
技
【散】
【連】
【雨】
【赤】
【命】
▼
▽
積み木弓師(青)
ランク 苛炎
技
【散】
【連】
【雨】
【青】
▽
【積み木弓師】
赤と青の三角の積み木の帽子をかぶり、木の色の積み木を積まれ人の形を成したモンスター。
他にも色々とドークスできるヤツらはいたが……後衛の弓使いということでパーティーに採用した2体。
どちらも癖のないシンプルな弓の技に、積み木弓師(赤)はなんと回復の矢を放てる。パイナップルパイナップル天然水の節約にはもってこいの念願の……一応ヒーラーだ。
やはり前衛は俺、父親ひとりの方が色々とやりやすい。後衛の女神石像とこの2体はなかなか良いバランスだと言える。合わせたビジュアルもいい感じだろう。
「ミーヌ」
▼
タチモグラ
ランク 豪炎
技
【オーラ張り手】
▼
「やっぱりランクが変わらない……」
「性格が悪いんだよなぁエロいゲーム」
モンスターのランク、レベルが上がらないこのエロいゲーム。言い方はアレだが……使い捨てだ。限界を超え成長していくエロいヒロインとの差は明らかだろう。仕様が変わっていることを期待していたがダメだなこりゃ。
このところモグ蔵を前衛に参加させるのは厳しくなってきた。完全にその毛をさすさすされるだけのマスコットキャラだ。生き残ることが仕事となり父親に与えられたその役目をきっちりと果たしている。
それでも、俺はそれなりにゲーマー。パワーアップ方法も考えてみた。特産品の黒糖土竜饅頭を食べさせたりモグラ住民が使っていたスコップをモグ蔵に手渡してみたりしたがダメだった、なぜか振り返ると女神石像が装備していた始末だ。
モンスターは使い捨て、俺があまり積極的にドークスしたくない理由。まぁ、試しに仲間にしてみたタチモグラは生き残りそこそこの愛着がわいてしまったわけだが。
ドークス、やはりダメージを受けやすい前衛はやめて後衛タイプを仲間にしていくのが良いということだろう。あと毛の生えたモンスターもダメだな! 特にネコ科は絶対にパーティーに加えないと決めた。
「ふわふわふー……戦闘後の甘いおやつは最高!」
突如戦闘になったスライムと玩具の機械たちを殲滅し、ここ一帯を占拠したプレイヤー。やはりゲーム、友好的なモンスターとばかりはいかなかったようだ。
中身が切り取られたかのように剥き出しの大きな白い洋館の1階、おしゃれな椅子に腰掛けた父親パーティーはテーブルを囲い優雅なティータイムを楽しんでいる。
そして可愛らしいわたあめメーカーで作ったわたあめを各々味わう。ここはおもちゃの王国、甘い食べ物もありサービス精神に溢れているようだ。
隣に座った、ふわふわの白い繭をパクパクと食べる石の女神の彼女。
「ここはまだ夢の国かな」
モンスターは使い捨て。例外もいる。
2908階、敵も強くなり己も強くなる。まだまだ父親パーティーのミジュクセカイの塔攻略はつづいている。
▼
▽
「爆王斬!!」
父親は灰色のブロック床を飛び上がり顔面を斬り捨て、巨大な炎球は弱点であるその巨人の頭を呑み込んだ。
顔を消し飛ばされたお洒落な洋服を着た、デッカchan☆人形Mは光の粒へと還っていった。
「普通のおんなのこ人形に襲われるのは気味が悪いからマジ勘弁だな」
「ふぅ」
襲い来る人形たちを倒し役目を終えた白蜜は納刀され電子の荷へと消えていった。
「いよいよ……3000階がみえてきたわけだがッ!」
身体と両腕を天へとおおきく伸ばし長く息を吐いた。深呼吸ともちがう押し寄せてきたひとつの達成感。
敵を殲滅し城の上から見えてきた景色。緑のブロック草原に凛と佇む銀の木。
銀の木の前の攻防、石造りの城を襲ってきた様々な種類の洋服や和服を着たデッカchan☆人形シリーズは迎え撃つ父親パーティーに返り討ちにされ全て光の粒へと還された。
「にしてもさぁこの階、敵が多すぎてさすがに疲れたぞ……ぐーすか寝たいところだが」
その前に溜まっているステッカーを使っておくか。
「宝箱のステッカー。無難にこいつからいこう」
ミジュクセカイの塔を攻略しながら集めてきたステッカーたち。宝箱のステッカーは単純にアイテムや武器が手に入るほぼメリットしかないステッカーだ。
父親はよくあるRPGの赤い宝箱の描かれたステッカーを手に取り、それを城壁へとぺたりと貼り付けた。
学習したのか女神石像をはじめ父親パーティーの面子、各々は手を繋ぎ合い。
「ハイッカー!」
魔法にでもかかったかのようにステッカーの中へと父親パーティーは吸い込まれていき。
一瞬にして移動して、視界に見えてきた。煌びやかな空間と赤の威厳のあるカーペットとその先にある。
鉄のプレートアーマーと鋼の剣を装備したネズミ騎士たち。
「鼠退治といくか」
1人で突っ込んでいった父親は電子の荷から取り出した白蜜を抜刀し挨拶代わりの一撃をお見舞いする。
その存在に既に気付いていた7体のネズミ騎士たちは父親をターゲットにし一斉に群がるように襲いかかった。
「爆王斬!!」
鉄の鎧を袈裟斬りし発生した炎球が空間いっぱいに広がっていった。
宝を守っていた7体のネズミ騎士たちは父親に一撃で燃やされ葬られた。
「どうやら俺は雑魚狩りで強くなりすぎたようだ、ハハ」
守護者はいなくなり、用を済ませるため奥にある6つの宝箱へと近づく。
周りの赤色より目立つ紫色の宝箱。これには必ず武器が入っている。普通のプレイヤーならラッキーというやつだろう。
さっそく父親はしゃがみその紫の大きな箱を両手で上へと開けてみた。
「はぁ、またこれか……」
「いったいだれの装備だよこれ……」
「ついに大きくバグったかァエロいゲーム」
箱の中身に在ったもの。
緑色の三日月、金の縦線の模様が二本左右対称につけられている。
見るからにブーメラン。そんな装備はラヴあスには存在しない。
俺のゲーム知識によると……。
▽
可黒美玲 刀:赤蜜
虎白子春 素手
令月かほり 刀:水月
蒼月霞 刀:雷月
宝先生 薙刀:光
────。
▽
ラヴあス2の世界。神座した武器が得意武器っていうのが法則のはず。例外もいるが……。
「……ほんと誰のだよこれ」
「幸い武器には困ってないからいいんだけどさ」
そもそもブーメランは武器か?
父親は振り返りそれを、後ろにぴったりとついてきていた女神石像に手渡してみた。
女神石像は不思議な顔で手に持った緑のブーメランを眺め、えいっやーと叫び素振りをしている。
「ぜったいちがうな」
「うおっ!?」
突如、投げつけられた緑のブーメラン。
縦回転していたそれを、ぱちんと白刃取りした父親。
女神石像は両手を可愛らしく口元へと寄せて驚いた表情をしている。
「お嬢様、私やっちまいました的なお顔で……」
……どの道使う機会のないモノ。女神の遊び道具にでもするのが使い道というやつか。
彼の手から投げ返された緑のブーメランは、ふわりと空を舞い彼女はそれを元気よく追いかけていった。




