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「ふぅ、エロいゲームなのに旨かった。やはり腹が満たされていないと人間じゃないな」


ぽんぽんと幸せに満たされたその腹を叩き、


「よし」


おもむろ満足気にカウンター席を立ち上がった。


ここで裏技ってほどではないが。


【∀】父親は例のサインを指で作り厨房にいるペンギンたちに見せつけた。


それを受けた1匹のペンギンはどうやってかその黒く美しいペタっとして手で【∀】のサインを作り出し応えた。

実にコミカルなペンギンさんだ。


「どうやってんだよ、かわいいな」


8,610,000∀


焼きおにぎり×99 1,000,000∀




表示された額、所持金を二度見……。


「……しまった!! 金がない!!」


いやここは……。



「バイ……フル!!」


610,000∀


仕方がなかった。完全にペンギンたちに胃袋を掴まれていたな……。いや、生命活動のためだ。いやいや、そもそもこの状態生命と言えるのか? ……ええい、ふざけるなエロいゲーム! 腹ゲージも仕様通りに無限にしとけ! エロいプレイヤーはそこまで望んでいないぞ。


父親は露骨なリアルなため息をひとつ吐いた。

いくら文句を言ってもプレイヤーは与えられたゲームシステムに従うしかない、

かるく気持ちを切り替えて、もう用も無くなったしここでペンギンを愛でていても仕方ないしな。


「生き返りましたごちそうさま。じゃあまた、手を繋いでっと。ん?」


ふと視界端に見えて目をやったカウンターの1番奥の席、画家石像がむしゃむしゃとフライパンに置かれた焼きおにぎりを手に取り食べていた。


「おまえいつから居た……どうやって入った、しかも順応していらっしゃる。ここ父親パーティー専用だぜぇ」


「まいいや、女神石像」


隣で見つめる彼女にそっと左手を差し出し。


石の右手がバチンと重なる。


「いてぇよ! ハハ」


元気の良い笑顔で女神石像はこちらを見ている。

いつもかわいいかよ、美人な石像ちゃんと焼きおにぎりデートしているのは地球上で俺ぐらいか。

ハピハピな優越感が湧き上がってきたな。


「じゃあ」


「デッカー!!」


そうおまじないを唱えると石の壁に貼られていたステッカーから吐き出されるように出てきた父親と女神石像、と画家石像。


役目を終えたのか、貼られていたステッカーはいつの間にか消え去っていた。


焼きおにぎりを片手に持ち帰っていた画家石像がいる、その焼けたサンカクをじっと芸術家の目で見据えている。


「食い逃げだぞそれ、まぁタダだけど」


画家石像は父親に対して頷き、歩き出しアトリエにある丸い椅子に座る。

所定の落ち着く場所へと戻った。


「さて、エロいゲーム内で存分に腹を満たすという目的も達成できたしあとは……この腹に込めた燃料で進むだけだな」


となると……。またもこの人に頼らざるを得ないな。だだっ広い草原でゴールを探すのはおそらく骨が折れるからなぁ。


「銀色の木を知らないか画家石像くん?」


そのシンプルな問いに対して画家石像はノータイムで頷き立ち上がりまたもアトリエの奥から何かを取り出して来た。


画家石像が見せてきたキャンバスには緑の地に立つ美しい銀色の木が描かれていた。

ぽんぽんとなんでも出て来る小気味の良いテンポに、


「さっきから有能すぎやしないかキミ?」

「……そこまで案内たのめる?」


画家石像はまたもまたも即頷いた。


「よっしゃァーー!!」


やってて良かったお使いクエスト。

なんでも屋の画家石像は今後エロいゲームに必須キャラになるのでは? ハハハ。


「ちょっ待ってえ!」


要請を受けてそそくさと街の大通りの方へと歩き出した画家石像、その背を小走りで追いかけた父親と女神石像であった。




画家石像の背を追うように大通りを歩いて行く父親と女神石像たち。


「ただただ黙ってついて行くだけっていうね。良いねぇ癒されるねぇゲームっぽくって」


……しかしアレだなもうこの石の街とおさらばってのも少々寂しいな。

石像相手とのコミュニケーションにも慣れてきたところだし。

家にお邪魔して壺を割ったり絵を描いたり鬼ごっこしたり……。


後ろを振り返るとひょこひょこと石のノーマルな顔で父親の背について来ている女神石像がいる。

なんだかんだここまで上手くいっている、ここに来た訳を考える間に滑り出し始めたなぁ。


「はやいとこ上を目指して行くかぁ」



「…………俺の息子は一体どうなってるんだろうな、俺の息子じゃないけど中々心配ではある」



左手で黒い髪をがしがしと掻きながら色々と頭の中で考えを巡らせていく。

付き従い順調に歩を進め街の外へと向かっていたそのとき。


パカリ、パカリ、と何かが石像住民を通り(ぎわ)に壊しながら石畳の大通りを駆けて来ている。


石の馬に跨る石の騎士が槍を構えて突っ込んで来た。

このままでは衝突する。

その存在を遠くから見て察知していた父親は、画家石像の前に躍り出て、突如現れた見知らぬ脅威に対して白蜜を抜刀し両手で構える。


「……何かは知らねぇが、出会って即セックスならぬバトルだよなァ!!」


大通りを駆ける騎士。

狙いを決めたのか構える父親の元へと吸い込まれていくように肉薄して行く。


そして。


騎士の、妖しい紫のオーラを纏った槍技が薙ぎ払うよう振るわれた。


「爆炎斬!!」


勢いのついたオーラ槍の穂先と爆炎斬がかち合い火花を上げる、技のパワー差で父親が騎士に難なく圧し勝った。


ご自慢の槍技を弾かれ上体を馬上で仰け反り突進がピタっと止まる──致命的な隙をさらした騎士にニヤリと狙い通りにいった父親はすぐさま、


「爆王斬!!」


エロいゲームのコンボシステムでコンボを繋ぎ爆王斬で石の馬の顔を斬り裂いた。

そして起こるあの巨大な炎球に呑み込まれた石の馬と騎士は大通りで盛大に焼かれ光の粒へと還っていった。


「フゥ……あ…………」


並々ならぬ爆炎のエフェクトがやみ、気づく。考えなしに街で爆王斬をかましてしまった父親は少し焦りながら辺りの被害状況を確認し。


「石の街のかたーいかたい石像住民のみなさん、ケガぁは、おそらくないよな!! ハハハハよし!!」





街中の騒動明けて────


ここは画家石像のアトリエ、あらため……。


キャンバスに描かれただだっ広い緑の地形と敵城、敵勢力図。

この街の石像住民たちによる軍評定(いくさひょうじょう)、作戦会議が行われていた。

緊急招集された石像たちのただならぬ雰囲気がただよっている。


「いやいや、なんだよこのイベント」


バラエティー豊かな石像住民たちが一同に、そのキャンバスを中心に取り囲み、ふむふむと作戦内容に頷いていた。

やがて画家石像を筆頭に石像住民たちは続々と作戦会議室を後にし石畳の大通りを行進して行った。


「おいこれ、まさかこのまますぐどこかさんと戦争ってことはないよな……」


「いやあるよな、このゲームっぽいオンオフの切り替え感……!」





緑の草原にそびえ立つ立派な平城(ひらじろ)

外堀もなく不自然に配置された天守閣のようなそれの前に、城門から出た石像騎士たちがごちゃごちゃとだいたい似た石の種類分けをするように隊列を組み集まっていた。


「向こうさんも準備万端だよなー」


「これがアートルにあった石の城ってやつか、なんで日本のお城なんだか。騎士の多い敵さんもう騎士道語れないだろ、知らないけど」


西洋風の石の鎧、全身を覆う石のプレートアーマーなどを纏った騎士たちが天守閣からぞろぞろと陣を築き上げているなんとも和洋チグハグな光景だ。


対し、遠く離れ敵城の視界まで行進して来た石の街の石像住民軍。勝手に進んだイベントについて行く形になった父親と女神石像。


「おそらく」


「間とかないよなぁさすがエロいゲーム」


このまま行進を続けるとすぐにぶつかり合いそうになる両者の軍。

これはもうそろそろおっぱじまる……。

父親は背にいた女神石像の方を振り返りこれが最善であろうという指示を出した。


「女神石像、アクアスナイプ、で!! ちょっとごちゃつくだろうけどたのんだぞ」


パーティーメンバーの女神石像はうんうんと元気良く頷いた。


元気は良いがほんとに分かってんのか。まいいや……。ガチガチに彼女を縛る趣味はないと思うぞ山田燕慈!


「誠に悲しいけどこれ、エロいゲームなんだよな」


白い鞘から白蜜をすべらせ。


堂々と抜刀。


「そだそだ注意しておきたいのは爆王斬で巻き込んじまうからなこの脳筋キャラクターは……」


かち合う前に、いっちょ。

この世界の異端児がやってやりましょうよ!


「じゃ、斬り込み隊長ってことでお先に!」


ぞろぞろと歩き行進していく石像住民と女神石像を背後に置き去り、父親は2人だけのパーティーではなく気持ちは軍の前衛としてひとり騎士たちの待つ敵陣へと臆せず走って行く。


緑の地を走る黒いスーツを着た侍とテリトリーに侵入した異物に反応した足の速い石の馬に跨った騎士、騎馬隊がぶつかり合う。



「今なら爆王斬!!」



身に突き刺さろうとする槍もろとも巨大な炎球に呑み込み石の騎馬隊を燃やし壊し光の粒へと還していく。


デタラメなチカラをさっそく披露。


グレープグレープ天然水でぐぴキャンを駆使し、押し迫って来る次の騎馬隊に白蜜を構えて備える。

この数にもプレイヤーは臆する事などない、ここまでの父親の性能ならば。

勇敢というよりは止めどなく湧き上がるワクワク、テンションをブチ上げて。


「石の争いの善悪なんて知らねェ!! 俺と戦争だ、エロいゲーム!!」

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