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アルフレッド公との結婚式



 あっという間に月日は過ぎ去り、早くも、結婚式を迎えた。


 朝も昏いうちに起こされ、入浴、マッサージ、化粧のフルコースで、ほとんどの体力を持っていかれた気がする。


 真っ白いドレスが着せられた。

ドレスは、幾重もの薄い絹生地が重ねられ、白い糸で細かな花の刺繍がほどこされ、花の中央には、真珠。葉にはメレダイヤモンドが水滴のように輝く。

ネックレスとイヤリングも、真珠とダイヤモンド。

新郎新婦が纏うのは、白しか許されないから。

髪はアップにされて、ティアラを抱く。そのティアラの宝石、ルビーだけが、色を添える。

その上から、裾を引くヴェールがそっとかぶされ、顔も隠された。


 アルフレッド公が迎えに来てくれて、彼の腕に手を添え、王宮の奥の神殿に向かう。

アルフレッド公も、白いジュストコール、ジレ、キュロット姿だ。クラバットに輝く宝石は、真珠。

 神殿に入るまでは、お互いに言葉を交わしてはならない、という決まりがある。

でも、目を合わせれば、彼の瞳には、優しさと、愛おしいという想いがあふれ、思わず、微笑みかけてしまう。・・・何も言わなくても、お互いに伝わる想い。




 王宮の奥にある神殿に入れば、正面には神殿長、その横には、レジナルド王とアイリーン王妃、ルーカス王子とリリアナ妃が立っていた。

他には誰も居ない。彼らの親類を呼ぶか聞かれたけれど、断った。

私の家族は、王族だけ、だったから。


 高さが3メートルくらいの、透明だけれど、七色に輝く不思議な石の前に立てば、神殿長が、

「婚約指輪を、こちらに。」

と、白いリングピローを差し出してくる。


 この国では、婚約指輪は、正式に結婚すると、二度と嵌めないのだそうだ。

だから、一度、神に、婚約期間を無事に終えたことの感謝を込めて、奉納するのだと。

結婚式の後は、記念として、大切に保管される。


 2人が、お互いに、相手の左手の薬指から、指輪と抜き、リングピローに載せれば、神殿長が、不思議な石の前に据えられた白いテーブルの上に置き、婚約期間を無事に終え、新たな夫婦が誕生することの感謝の祈りを捧げてくれた。


「それでは、夫婦の誓いを立ててもらいましょう。」

 神殿長が、私達の方を向いて、厳かな声を出す。


「152代国王王弟たる、アルフレッドは、神の御使いたる、ユーリ・カンザキを妻に娶ることを誓いますか?」

「誓います。」

「神の御使いたる、ユーリ・カンザキは、152代国王王弟たる、アルフレッドを、夫に娶ることを誓いますか?」

「誓います。」

「それでは、結婚指輪の交換を。」


 神殿長が、結婚指輪の載っているリングピローを差し出してくる。


 結婚指輪は、白金に透明なダイヤモンドがぐるりと一周している、エターナルリング。

 アルフレッド公が、まず手に取り、私の左手の薬指に嵌めてくれる。

その後で、私が、アルフレッド公の左手の薬指に嵌めれば、彼が、幸せそうに微笑んでくれて、顔が熱くなる。


「最後に、誓いの口づけを。」


 アルフレッド公が、ヴェールに手をかけ、後ろにそっと上げてくれる。

ゆっくりと彼の顔が近づき、やさしく、口づけられた。


「これで、152代国王王弟たるアルフレッドと、神の御使いたる、ユーリ・カンザキが夫婦となったことを認めます。新たな夫婦に、神の祝福があらんことを。」


 その瞬間、透明だけれど、七色に輝く不思議な石から、まばゆい金色の光が、神殿の中に拡がった。


「「「「「え!?」」」」」


 その場にいた、全員の声が重なる。

以前、ルーカス王子の結婚式では、そんな現象は起きなかった。


 その金色の光は、神殿の中にいる、私を含む、王族全てを包み込み、全身を暖かく、爽やかな風が吹き抜けるかのような、心地よさを感じさせた。


「これは・・・。我が王家に、神の祝福?」

 つぶやくようなレジナルド王の言葉。


 金色の光が、静かに少しずつ、消えていくのを、皆で黙って見守り、完全に消えた後で、アルフレッド公を除く、4人の王族が、私達の前に膝まずいた。


「神の御使いたるユーリ様。そして、その伴侶となられた、アルフレッド様。我らは、御身に、生涯、お仕えいたします。」


 それは・・・、と、断ろうとした、私を、黙って、アルフレッド公が制止した。静かに首を横に振っている。

「・・・この金色の光は、レジナルド王の結婚式でも、起きなかった。神のご意志を、人間が、無碍にすることは、許されない。」



 神殿から出てきたとたん、喧騒に包まれた。

神殿の外で、青い顔をした騎士が、控えていて、

「王宮の上空に4匹の竜が!どういたしましょう!?」

と、指示を仰いでくる。


 急ぎ、王宮から庭園に出て見れば、黒、赤、青、黄色の4竜が、ゆったりと、円を描くように、優雅に舞っていた。

北の黒竜シュヴァルス、南の赤竜ロート、東の青竜ブラウ、西の黄竜ゲルプ、であることが一目でわかる。


 突然、全ての人々の頭の中に、4竜の言葉が、響き渡る。


「神の御使いたる、ユーリの婚姻を、我ら4竜は、祝福する。数千年にわたり、我ら4竜を苦しめていた黒き想念を完全に払ったのは、ユーリ、そなただけだ。エルダー国の民よ。ユーリへの忠誠が、我ら4竜への忠誠となることを、その心に刻め。」


 その瞬間、4竜から、まばゆい金色の光が、エルダー国全体に降り注いだ。

その光は、人には何も影響しなかったけれど、魔獣に荒らされた大地を癒し、国土は、濃い緑に包まれた。


 金色の光が消えた後、4竜の姿はなく、真っ青な雲一つない、青空が広がっていた。





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