東の領地にて2
その後、ルーカス王子達が調査したところ、魔獣達は、白い光に包まれた直後こそ、落ち着きを取り戻し、敵意を向けてこなかったけれど、地下に帰るそぶりが全くないことがわかった。
しかも、その落ち着きは、数日しか持たず、魔獣達は、また、殺気を纏い、森に入っていく騎士達を襲うようになった。
「たぶん、青竜ブラウを浄化できていない、んだと思うんです。」
困惑しながら、ルーカス王子達に話す。
「森の地下に、青竜ブラウは、いないのかも、しれません。」
もし、森の地下にいるなら、白い光で、完全にではなくても、ある程度は、浄化できたはずだ。だけれど、私の中の何かが、青竜ブラウに光が届いていない、と警告している。
「ユーリ嬢の仮定が正しいとして・・・青竜殿の場所は、わかるのですか?」
「わかりません。」
「・・・まさか、東の領地全部を癒して歩くわけには・・・いかないですよね?」
うなずく。
とてもではないけれど、それだけの魔力は持っていないし、時間もかかりすぎる。
「・・・ユーリ。黒竜殿を呼んだらどうだ?」
「アル?」
「西の領地も、黒竜殿が滞在していたら、気にされて、黄竜殿が現れただろう?どこに青竜殿がいるかわからないが、同じように気にされるのではないか?」
「あ!」
「叔父上、それは、良いお考えです。ユーリ嬢、いかがでしょうか?」
「そ、そうね。シュヴァルスに来てもらえるか、あるいは、青竜の居場所に心当たりがないか、聞いてみます。」
私は、窓を開けて、北の方に向かって呼びかける。シュヴァルスからは、声を出さなくても、強い祈りを向ければ、届くと聞いている。だから、手を組んで、シュヴァルスに強く、心の中で、呼びかける。
「シュヴァルス。私の声、聞こえますか?」
何度か呼びかければ、しばらくして、頭の中に、声が響く。
「ユーリ?どうした?」
「今、東の領地にいるのだけれど、青竜がどこにいるか、わからないの。」
「ブラウが?」
「ええ、シュヴァルス、青竜の居場所に心当たり、無い?」
「・・・海ではないか?」
「は?」
「海だ。ブラウは、もともと、海神。海にいると思うぞ?」
「海・・・。わかった、シュヴァルス、教えてくれて、ありがとう!」
ルーカス王子の方を振り向く。
「青竜は、海にいるそうです!」
「は?海?」
そこで、はた、と頭を抱えてしまった。
「海・・・広いですよね?」
ルーカス王子と、アルフレッド公も、ため息をつく。
「海・・・。船で乗り出すのか?」
「船の上から、海面に手を当てる?」
「そもそも、海のどこだ?陸地より広いぞ・・・。」
情報収集のために、慌ただしく、東の領都に、騎士達が向かい、聞き込みを始める。
海で、最近、何か変わったことが無いか。と。
「海の色が、濃くなっている場所があるそうです。」
「色が?」
「はい。透明度が高く、かなり海底まで見えたのが、全く見えなくなったと。」
「どこだ?」
「ユーリ様がいつも散策に行かれていた場所です!」
私達は、そこに向かうことになったけれど、岩場がごつごつした海岸で、私が、波打ち際で、海面に触れられる場所ではない。
また、万一、襲われた場合、足場が悪いので、騎士達も戦うのに不利だ。
その結果、船に乗って、青い海の中央まで漕ぎ出すことになった。
この野営地から一番近い波止場の船は、漁師の船しかない。
だけれど、私の安全を絶対に守るためには、漁師の小さな数人乗りの船は、使えない。と、アルフレッド公が、判断した。
そのため、ルーカス王子が、領主に相談した結果、貿易商が持つ、海の向こうの大陸に行くための大型の帆船を貸し出してもらうことになり、その帆船に、浄化する場所についたら、私が乗り込む、小型の船を載せることになった。
その小型の船は、漁師たちの船を使うしかなかったのだけれど、安定感が無い船のため、短時間とはいえ、私を載せることをできない、と、また、アルフレッド公が、拒否した。
また、私も、実は、泳げない・・・5メートルくらいなら泳げるかもしれないけれど・・・スイミングスクールなど通ったことなく、小学校のプールで、足をばたばたさせたくらい・・・なので、海に落ちるのは、正直、怖い。
結果として、漁師の船を、ルーカス王子が買い上げ、波が荒くても転覆しないように、また、私が、海に身を乗り出しても安定するように、手を入れることになった。
船大工に依頼したところ、3週間、かかるという。
この時点で、当初の2か月以内に討伐完了せよ、という王命が、守れないことになり、王都との間に、慌ただしく、人が行きかった。




