↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/68

西の領地から王都へ



 黄竜が引き上げていったので、魔獣の脅威は、完全に去った、と、ルーカス王子は、判断し、今までのように、様子を見るための騎士を残すことなく、私達は、全員、西の領地を去った。

 西の領地の領主、スナハイム侯爵には、フェロー王国の動静を、今まで以上に警戒するよう、指示を残して。


 そして、シュヴァルスも、北の領地に戻っていった。

「何かあったら、ゲルプではなく、我を頼れ!我の名を呼べ!」

と、しつこいくらいに、私に言って。

 東の領地の浄化と、その後の結婚式が終わったら、北の領地に行くことを、シュヴァルスと約束し、助けてくれたお礼を何度も述べて、黒竜と別れた。





 王宮に着けば、また、レジナルド王と王妃が、馬車寄せまで出てきて、待っており、後ろには、困った顔の宰相や大臣達も揃っていた。

 馬車から降りれば、レジナルド王が、いきなり私の前に跪き、フェロー王国の元帥が我が国に入り込んで、私を誘拐したことを、詫びてくる。

 国王に跪かれて、真っ青になり、必死で、立ってもらって、お詫びはもう不要だと、何度も、お願いする。


 アルフレッド公がとりなし、どうにか、王宮の中に入ってもらえたけれど、その後、一室に王族が集まれば、レジナルド王だけでなく、王族全員から、頭を下げられてしまって、困惑で、いたたまれなかった。

 どうにか、お詫びを受ける、と言って、もうこの件は、蒸し返さないように、頼んだ。



 ようやく、帰還の挨拶と、お詫びの嵐から逃れて、赤の宮殿に戻ってきて、ドルチェとレーテの歓迎を受ける。

誘拐、監禁されたことは、2人も知っていて、私を、お風呂に入れて、マッサージをしながら、無事で良かったです、と泣かれ、私も、2人の顔を見て、やっと、自分の家に帰ってきた安心感がどっと湧き出て、3人で、抱き合って泣いてしまった。

 身支度が終わったころには、3人とも、ウサギのように赤い目をしていたことは、言うまでもない。




 着替えが終わってから、アルフレッド公の居室に行けば、アルフレッド公が、とても思いつめた顔をしていた。

 実は、監禁から戻って以来、アルフレッド公は、ずっと、張りつめた顔をしていて、西の領地や、その帰りの馬車の中など、ずっと考え込んでいる時間が多かった。


「・・・アル?」

「ユーリ・・・。」


 アルフレッド公が、手を差し伸べてきたので、その手を取れば、軽く引っ張られて、彼の隣に座らせられる。・・・珍しい。いつもだと、膝の上に座らせられるのに?


「アル?ずっと顔色が悪いし・・・。大丈夫?」

「・・・君を護る、と約束しながら、何度も、その約束を、破った。」

 苦渋に満ちた声が聞こえた。


「ユーリ。私は、君に、ふさわしくない・・・のではないか、と思う。」

「アル!?」

「君を守れないのは、神の御使いの伴侶として、失格だ。だから・・・。」

 私は、アルフレッド公の両頬を、パン!と両手で、強くたたいた。

「っ!・・・ユーリ?」

「守れないから、失格って何?」

「ユーリ・・・。」

「私は、守ってほしくて、アルを選んだんじゃないわ。」

 私の目から、ぽろぽろ涙がこぼれた。

「アルが好きなのに、アルは、そうじゃないの?」

「ち、違う!私も、ユーリが好きだ!」

「だったら!・・・ふさわしくないとか、言わないでよ・・・。」

 私は、アルフレッド公の胸にしがみついた。

「い、居なくならないで、お願いだから・・・。」

 ぎゅっと、アルフレッド公が力を入れて、抱きしめてきた。

「ユーリ・・・。君を守れなかったのに、君の側にいてもいいのか?・・・私を嫌いにならないのか?」

「き、嫌いになんか、なるわけ、ないでしょう!・・・アルの、ばかあ!」

 涙が滝のように流れて、アルフレッド公の上着を濡らす。


 アルフレッド公が、頬を、両手で挟んで、上を向かせる。

顔が近づいてきたと思ったら、目元に口づけし、その口づけは、頬から顎に下がっていく。舌が、涙をなめとる。

 頬などに口づけられるのは、慣れていたけれど、舌で舐められるのは、初めてで、私は、びっくりしすぎて、涙が止まったのにも気づかず、アルフレッド公の青い瞳を見つめていた。


「ユーリ。ごめん。泣かせて、ごめん。・・・愛してる。・・・君を、これからも、愛することを、許してくれる?」

 ひくっと、まだ、けいれんを残しながらも、うなずく。

アルフレッド公が、口づけしてきた。

「ん・・・!」

 彼の舌が、噛みしめた歯を割って、侵入してくる。その舌は、やさしく、口内を愛撫し、意識が、半分どこかに飛んでいた。

彼が、離れたとき、脱力して、ぐったり、彼の胸によりかかったまま、動けなくなっていた。


 そんな私を、膝の上に抱き上げて座らせ、ぎゅっと抱きしめてくれる。

「ユーリ。私は、君を、君だけを、愛している。・・・私から、離れて行かないで。私の側にいて、私に、君を守らせて。」


 西の領地で、誘拐されてから、ずっと、守れなかったことを、悔いていた。だから、もう側にいてはいけないのではないか、自分の独りよがりの愛情で縛ってはいけないのではないか、と悩んでいたと、つぶやく。

今度こそ、間違えない。何があっても、君の手を離さない。と、アルフレッド公が、私の目を見つめながら、言葉を紡ぐ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。