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南の領地の魔獣討伐3



 一晩、騎士団の皆に、厳重に護られて過ごし、翌朝、日が昇る前に、周囲を騎士達に護られながら、アルフレッド公と共に、野営地へ移動した。

アルフレッド公の乗る馬に、一緒に乗って。

幸い、早朝だったため、私兵達に止められることもなく、侯爵達の顔も見ずに出発できた。


 王宮のレジナルド王の元にも、今回の顛末が早馬で届けられ、騎士の増援もその中で、依頼されている。早馬だと、3日で、王宮に届くらしい。

増援がくるとしたら、2週間後か。

この増援は、魔獣に対しての戦力増強ではない。魔獣討伐のために、300名ほど来ている。それをあえて増援を頼む、というのは、サウザンド侯爵の私兵に襲撃されることを警戒しての増援だ。サウザンド侯爵が持つ私兵は、5000人を超える。一度に全員集めることはないだろうけれど、少なくとも500人くらいは、すぐ集まる。

それを用心して、300名の増援を要求していた。

そこまで、侯爵が馬鹿ではないと思いたいけれど。


 野営地につくと、野営地のテントの中央に、私達が泊まるテントが、用意された。その隣が、ルーカス王子夫妻のテントで、この2つのテントを囲む形で、騎士達のテントが、配置される。


「昼はもとより、夜も、魔獣を警戒して、数人が、交代で、寝ずの番をするから、安心して?」

 リリアナ妃に、励まされて、笑顔を見せる。

「皆様、とてもお強いので、頼りにしてます。」




「私の力を、自分で、たくさん、一度に出せるといいのですが・・・。」

 野営地に来て、2日。私は、しょんぼり、アルフレッド公に謝る。

明るい日中は、ほとんどの騎士達が、魔獣を狩るために出かけている。

私とアルフレッド公、リリアナ妃と数人の騎士がお留守番だ。

私は、戦力外なので、基本、野営地から出られない。リリアナ妃達は、野営地の周囲を警戒して見回っている。


「私から、白い光が出ていると、シュヴァルスは言っていたけれど、自分ではそれが見えないですし・・・。」

「ユーリが気にすることじゃないよ。」

「でも・・・。早く、浄化して、王都に戻りたい、です・・・。」

「そういえば、ユーリは、魔力はあるけれど、魔法が使えない。だから、魔力の動かし方を教えたことが、無かったね?」

「ええ。」

「・・・ユーリ。自分の中にある、魔力を意識することは、できる?」

「え?わからないです。」

「ちょっと、手を貸して。」

 私の手を、アルフレッド公が、ぎゅっと握る。

「私の魔力を、流すから、もう一度、魔力ってどういうものか、理解して?」

 温かい何かが、私の手のひらに流れてくる。目をつぶると、その温かいものは、きらきら光って、私の中に溶け込んでいくように、感じた。

「ユーリ?私の魔力は、わかるんだよね?」

「はい。温かくて、光って、綺麗です。」

「うん・・・。じゃ、ユーリの魔力を、私の手のひらに流し込もうと、意識してみて?・・・焦らなくてもいいから。ゆっくり。」


 え?と混乱する。私の魔力を、アルフレッド公に流す?どうやって。

魔力よ、流れろ、流れろ、と頭の中で、反芻してみたけれど、手のひらから何かが流れ出るような感覚は無い。


「ごめんなさい・・・。わからないです・・・。」

「いや、急にできることでもないから。でも、自分の中の魔力の流れを見て、流すことができれば、もしかしたら、白い光も、意識して、外に広げられるのかも?って思っただけだ。できないなら、いいんだよ。心配しないで。」


 アルフレッド公は、優しい。魔法もちゃんと勉強しておけば、良かった。と後悔したけれど、毎日、この野営地では、特にやることもない。魔力の流れを見る訓練をしよう、と思う。




 野営地で過ごすようになって、2週間後、そろそろ、増援が来るかなあ、という頃に、突然、魔獣が、野営地を襲ってきた。

野営地は、魔獣との戦いの場に近いので、全く襲われないという保証がないことは理解していたけれど、実際に襲われれば、やはり、怖かった。


 リリアナ妃と、5人の女騎士に囲まれて、魔獣とは逆の方向に、避難させられる。

野営地に残っている騎士は、少ないので、アルフレッド公も剣を持ち、戦っている。


「大丈夫よ、ユーリ。アルフレッド様も、優れた騎士だから、数匹程度、難なく、倒せるわ。」

 リリアナ妃が、飛び回る、コウモリ型の小型の魔獣を倒しながら、励ましてくれる。


 どれだけの時間が経ったのか、襲ってきた魔獣が、全部倒されたように見えて、ほっとしかけたところ、突然、地面から湧き上がるように現れた魔獣が、1人の騎士を押し倒した。魔獣が振り上げた腕が振り下ろされる!

その瞬間、アルフレッド公が、その腕を、剣で切り飛ばした。

が、その瞬間、魔獣が振り返り、反撃に出て、アルフレッド公の剣を持つ手と反対側の腕を、魔獣の爪がかすったのが目に入った。

彼は、それに構わず、剣を魔獣に突き刺し、魔獣は、黒い霧となって霧散したけれど、すぐに腕を抑える。


「アルっ!!!!」

 アルフレッド公に駆け寄る。

「血・・・血がっ・・・!」

「ああ、大したことない、かすり傷だから。」


 急ぎ、野営地に駐在している医師が呼ばれ、アルフレッド公の傷が洗われ、薬が塗られる。

「あの魔獣の爪には、毒があります。解毒薬を飲んでいただきましたが、今日明日、発熱されるでしょう。・・・ああ、命の心配はありませんから、大丈夫ですよ、ユーリ様。」

 傷自体は、皮膚が切れただけで、解毒のために熱が出るだけ、と聞いたけれど、とても心配で、夜、発熱して眠りに落ちたアルフレッド公の側について、ずっと、手を握っていた。

「早く、良くなって。お願い、神様、アルの痛みが早くとれますように。アルの傷が、早く治りますように・・・。」


 ふと、握っていた手のひらが、熱く感じた。夜のテントの中は、薄暗い。けれど、手のひらのあたりが、ぼんやりと白く光っている?


「ユーリ・・・?」

「あ、アル、痛み・・・は?」

「大丈夫・・・。」


 アルフレッド公が、私に握られた手を、ぎゅっと、さらに、強く握りしめる。


「アル?」

「・・・ユーリから、魔力が、流れ込んできている。」

「え?」

「真っ白に輝く、光が流れ込んできている。・・・まるで、爽やかな風が、身体の中を、吹き抜けていくようだ。」


 アルフレッド公が、何とも言えない、幸せそうな顔をした。やがて、


「ああ、ユーリからの魔力が途切れたな・・・。」

 残念そうに、アルフレッド公が、私の手を離し、起き上がる。


「アル!熱があるのだから、まだ寝ていないと?」

「下がっている。傷も、おそらく、治っている。」

「え?」


 アルフレッド公が、肩から腕にかけて巻かれた包帯を、自分で取った。あらわになった肌を見て、思わず、口元を両手で押さえる。

・・・傷が、無い?


「やっぱりね。・・・ユーリの白い光が、私の身体の中を、清涼な風となって、吹き抜けていったの感じた。そうしたら、身体から力が湧き出て、痛みも何も消えていたのだよ。・・・これが、神の御使いの御力か、と・・・。」


 アルフレッド公の目に、私に対する、崇拝の念が浮かんでいる。


「・・・え?私の力?」

「意識して、魔力を流してくれたのではないの?」

「ええ。ただ、アルが早く治りますように・・・と祈っていただけで・・・。」

「祈っていた?」

「ええ・・・。」

「・・・神の御使い・・・神・・・祈り・・・。」


 アルフレッド公が、私の手を握って、考え込む。


「祈り・・・で、神の御使いの力が、あふれる?」



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