ガルバン帝国の王太子3
翌朝、私から、そっと、アルフレッド公が離れていく気配を感じて、思わず、腕をつかんでしまう。
「ユーリ?」
困ったように、アルフレッド公が、微笑みながら、私の顔を覗き込む。
「まだ、夜が明けてないから、もう少し、寝ていても、大丈夫だよ?」
「離れない?」
アルフレッド公が、苦笑いする。
「わかった。君が、起きるまで、こうしている。」
アルフレッド公が、眠っている間に消えてしまわないように、私の頬に置かれた手をしっかりと握って、また、うとうとと、眠りに落ちた。
「ユー・・・リ?」
アイリーン王妃が、私の様子を見に入ってきて、アルフレッド公がベッドに横になっているのを見、般若の顔に豹変し、アルフレッド公を睨みつけ、アルフレッド公が、しっ、と私を起こさないよう、口に指をあてたことを知らずに。
目が覚めて、目をあければ、私をじっと見ていた、アルフレッド公と目があって、ぼっと顔から火が出た気がした。
「ユーリ?起きた?・・・もう起きる?」
「う、ハイ。」
アルフレッド公が、半身起こし、私の背中に手を添えて、起こしてくれる。
「・・・うん。少し、顔色、良くなった・・・。」
ほっとしたような声を聞いて、申し訳なさで、いっぱいになる。
「ごめんなさい・・・。」
「ユーリ?」
「私、勝手なことばっかりして、ずっと、アルを、困らせてしまいました・・・。」
「ユーリ?」
「北の領地のことも、王太子に襲われたのも、アルが言ったことを守らなかったから・・・。ちゃんと言われたとおりにしていたら、私・・・。ごめんなさい。」
またもや、涙腺が決壊する。
「ユーリ。君は、何も悪くない、悪くないんだ。守り切れなかった、私が悪いんだ。」
「2人とも、そろそろ起きない?朝ごはん、食べたほうが、落ち着くと思うのだけれど?」
突然、呼びかけられて、ばっと、アルフレッド公から、離れる。
「アイリーン姉さま・・・。」
ニッコリ笑っているけれど、額の青筋が隠されていない。
「アルフレッド様?ご自分の部屋で、お召替えをされてこられてはいかがです?」
「・・・。ユーリ?離れても大丈夫?」
うなずきながらも
「すぐに・・・。」
「すぐに、戻る。」
アルフレッド公は、私の額に口づけを落として、自室に消える。
「ユーリ?昨夜は、アルフレッド様に添い寝してもらったようだけれど、無理やり入られてきたわけじゃないのね?」
アイリーン王妃が、困ったように、聞いてくる。
「はい。私が、眠れなかったので、頼みました。・・・あの、アルは、何も悪くないので、叱らないでください。叱るなら、私を・・・。」
「誰も、叱らないから、安心しなさい。で、ユーリ、どうしたの?一人で眠れないなら、わたくしが一緒に寝てあげても良かったのだけれど?」
アイリーン王妃に、横になると、王太子の体がのしかかる感覚があって、辛くて眠れなかったと、白状した。
「・・・アルフレッド様が添い寝したら、それは、無くなったの?」
「はい。安心できました。・・・あの、たぶん、上書きしてもらった?」
「上書き・・・ふふっ。」
アイリーン王妃が、軽く、噴き出した。
「そう。なら、いいのよ。・・・なるべく、結婚式までは純潔を守った方が良いけれど、正式に婚約しているから、同じベッドで寝ても、まあ、許されるから、心配はしないで?」
ぼっと顔が赤くなる。
「いえ、いえ。さすがに・・・。落ち着いたら、また、別々に寝ますっ。」
「・・・良かった。少し、ユーリらしくなってきたかしら?・・・着替えて、ご飯食べましょう?食べないと、ね?」
「はい。アイリーン姉さま。ごめんなさい。」
「もう、謝らなくていいから。ユーリは、何も悪くないのよ?」
ドルチェとレーテが入ってきて、着替えを手伝ってくれ、居間に移れば、食事の支度ができていて、アルフレッド公も呼ばれて、2人で食事を取った。
食事をしながら、同席しているアイリーン王妃に、恐る恐る、声をかける。
「あの・・・。ライアン王太子は、どうされているのですか?」
「普通よ。客室から、全く出てこないわ。出そうとしても、貴方の命令が効いていて、ここに居るように命令されたんだ。と絶対に出てこないわ。」
「そう、ですか・・・。」
「だから、ユーリが、絶対に自分に近づくな。と命令すれば、絶対にもう近づかないから、大丈夫。」
魅了をかけてしまったことに、申し訳ないと思いながらも、ほっとする自分がいる。
「王太子は・・・、いつ、ガルバン帝国に帰るんでしょう?」
「うううん。そこは。というか、ユーリが命令しないと帰らないわね。・・・今、皆が、相談しているわ。・・・魅了を解くことができないので、このまま帰した場合の影響がつかめないの。何とか、我が国にとって、良い方向で、帰したいのだけれどね。・・・ああ、ユーリは、心配しないで。この件を考えるのは、王たちに任せておけば、良いの。」
朝食のあと、アイリーン王妃は、私に、そばに本当に付いていなくて大丈夫か、何度も確認してきて、私が、アルフレッド公に付いていてもらえれば、もう大丈夫、と答えれば、それでも、何かあったら、すぐ呼ぶのよ?と、政務に戻っていった。




