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聖パトリルクス修道院は今日も平和!  作者: 運果 尽ク乃
第六話【イグアナの娘】

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その03 『ゴブリン』

 『ゴブリン』。


 六色の世界龍の一頭『島龍 ファンガーロッツ』の大天使『交易路の占師 ラベルック』の眷属である『人間意外のヒト』だ。

 『ラベルック』は旅と商売の大天使で、『翼人(バードマン)』や『人馬(セントール)』みたいな有名な種族を眷属としている。


 特に『翼人(バードマン)』は非常に特別な種族で、多くが傭兵を生業とすることから帝国でも見かけられる。

 彼らは極めて外交的で細かいことを気にしないらしく、『人間以外のヒト』差別の激しい帝国でも普通に傭兵活動をしちゃうのだ。


 話を戻す。


 『ゴブリン』は大人になっても1メルト程度しかない小人で、くすんだ緑の体皮を持つ。足が短く手が長いので本気で走る時は四足歩行になるんだって。

 体毛は薄いが、男性はひげ、女性は髪だけが濃い。


 顔立ちはトカゲの中でもイグアナという種に近いらしい。四角い頭部で口が大きくて、鼻は穴だけ。

 顎や顔、頭、背中に棘状のいぼが生えていて、それで個体を見分けるらしい。


 非常に特殊な種族で、性格も能力もいじめられてるのかなって思うくらいに悪いことばかり書いてある。


 性格は好奇心旺盛ながら臆病で強欲で飽きっぽくて調子に乗りやすい、弱いものいじめが好きで我慢ができない。

 ヘアルトかな??


 筋力的には大人でも十歳児と同じ程度で、しかし足は遅くて頭の回転もかなり悪い。

 反面指先は器用で、細工物や工作が得意なのだが飽きっぽくて我慢が苦手な性格が災いしてあまり役には立たないらしい。


 ネズミのように繁殖力が高く、二年で成人し、一度の出産で五人以上産むそうだ。

 しかも妊娠期間も三ヶ月程度。『ゴブリン』は性格的にも肉体的にも簡単に死んでしまうが、それを上回る速度で産まれるからバランスは取れていると言う。


 『ゴブリン』は家族による一団で動き、住みよい場所を探して旅をするらしい。

 住みよい場所が見つかったら定住して増え、自分たちの洞窟を掘って地下に王国を作るのだという。


 彼らは文化的な生活を営むことも可能だが、多くは野蛮で略奪と窃盗を繰り返しながら旅をする。

 それって、種族的にならず者ってことなのでは?


 さて、『ゴブリン』には三種の亜種がいるそうだ。どれも普通の『ゴブリン』の家庭から突然変異的に産まれるらしい。


 一つ目が『役立つ(ホブ)・ゴブリン』。簡単に言うと、我慢ができる『ゴブリン』。

 街に現れた普通の『ゴブリン』はただの厄介者だが、『ホブ・ゴブリン』は我慢ができるし集中力もあるので良い職人になるのだという。

 『ゴブリン』社会や家族への依存度が低いのも特徴。落ち着きがあるので老齢まで生きやすい。それでも寿命は三十年程度。


 二つ目が『旅人(ワンダラー)』。名前の通り旅する『ゴブリン』。

 自分の家族から飛び出して結婚し、新たな家族を作る。種族として広がるのに欠かせない亜種なのだ。


 そして三つ目が『(ロード)』。

 肉体か頭脳、あるいはその両方に優れた突然変異で、全ての『ゴブリン』は『王』の命令だけは絶対に従うという。


 肉体派の『王』は危険で、『ゴブリン』を統率して集団で村落を襲う。


 頭脳派の『王』は意味不明の機械をどんどん発明するのだという。

 原理は不明だがすごい力を出す道具や、原理は不明だが便利な道具を開発し、手下の『ゴブリン』に量産させるそうだ。


 ここまでが、図書室で調べた『ゴブリン』の情報だ。

 『カルマ・ノーディ』に登場する『ゴブリン』は、『王』の支配下で安定していた。彼らの大洞窟は古代遺跡から掘り出した魔法機械の修理を得意とする、職人の町だった。


 問題は『旅人』とその家族だ。

 彼らはつまり、勝手に増えるし突然現れる略奪隊なのだ。


 どこから来たかを考えるのは無意味だし、何人居るのかも分からない。

 一応言葉が通じるのだから平和的解決もできなくもないのだという。


 しかし、『王』の居ない『ゴブリン』は統制が取れない。与えられた仕事はサボり、隙を見ては盗みや喧嘩を繰り返すのだという。

 そのため、結局は追い出されちゃう。


「仲良くはできないのかなぁ」

「いたずらで家畜を殴り殺すような連中だよ〜、丁重に『別の場所』に行ってもらうしかないよね」


 司書先生はいつも通りの顔で、態度は冷淡だった。

 私は納得が行かなかった。話ができるのに。


 『自警団』は彼らを退治するだろう。つまり、暴力で追い出すか、殺すかだ。

 それはなんだかすごく嫌だった。吐き気がするほど嫌だった。


 私はおばあちゃん先生から護身術を習っているけれど、暴力に頼るのは最後の手段だとも教えられていた。

 暴力は振るうのも振るわれるのも好きになれない。


 私のこの考えは、夢見がちと笑われる類のものたった。少なくとも三人の『自警団』も『ゴブリン』も、聖パトリルクス修道院という平和で守られた世界の外から来た存在だった。


 冒険者も、魔物も、邪神の眷属も、魔王も、戦争も。

 世の中には暴力がありふれているという現実を、私は忘れるべきではなかったのだ。


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