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聖パトリルクス修道院は今日も平和!  作者: 運果 尽ク乃
第四話【11人いる?】

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その02 テスト

 午後、久々に座学の時間だ。

 参加者は私ことイウノ、チオット、トチェド。そしてロドゥバとヘアルト。ついでにエーコちゃんの六人だ。


「なんだかロドゥバちゃんが張り切ってるから、エーコちゃんは今日は見学にしましょうね」

「…………歴史どころか、私は文字は読めてもまだ書けないので、そこからですね」


 平民の生まれで文字を読める人は多くない。エーコちゃんの年齢で文字を読める時点ですごいのでは?

 もしかして良いところの生まれだったとか。


「オホホホホホ! 地理でも歴史でもどんとこいですわ! 貴族は平民と違いちまちました計算などせずに、広い視野と深い知識を持っているのですわ!」


 ついでに人並み外れた肺活量も持っているのかな?

 私、チオット、トチェドの数学の得点は同程度。私は理科系が得意で、チオットは暗記が得意。トチェドは字が綺麗で語学が得意。


 貴族学校と私達の修道院では勉学に使う時間が大きく異なるだろう。

 あちらは仮にも学校だ。そこで成績優秀だとされるロドゥバに、私達が太刀打ちできるのか不安でしかない。


 いや、でも数学のような事もある。

 私は楽観的な気持ちで挑むことにした。


「歴史の問題を用意するのは少し時間が足りなかったから、今日は地理にしますよ〜」


 おばあちゃん先生はいつも通り眠そうな目でニコニコしなから丸まった羊皮紙を抱えてきた。

 大陸の大地図だ。私と同じか少し小さいくらいのおばあちゃん先生に代わり、チオットとトチェドが壁に貼り付ける。


 広間の壁には一部木製の部分があり、そこにピンで刺して止めるのだ。


「これから私の方で順番に指名していきますから、質問に答えて下さい〜。分からない場合はパスして次の人に答えてもらいま〜す。

 パスの少ない人が良い点ということでよろしいですね〜?」

「はーい」「よろしくってよ!」

 

 おばあちゃん先生は満足げに頷くと、教鞭を握った。


「これが私たちの大陸です。六龍歴を制定した大陸統一王の名が大陸の名として呼ばれておりますが……イウノさん」

「ライドシェート統一王です」


 比較的簡単な問題からで、私は胸を撫で下ろした。エーコちゃんに説明をするのも兼ねて、地名やらの総復習が始まるのだ。


「大陸を東西に分断する大山脈は」「レッドライン大山脈です」

「その東の砂漠は」「ハサディ熱砂帯」

「では砂漠の南部にある通常生物を寄せ付けないのは」「大汚染域ですわ」

「はい。では『南の魔王』はどこから来たと言われていますか」「パスです」


 力強くパスするヘアルト。もしかしなくても勉強ニガテかな?

 いや、今現在人類圏に侵略をしてくる北方の『冬の魔王 カーツ=マイレン』と『南の魔王 レグサド』は勉強ではなく社会情勢の問題なのでは?


「手前は身の程をわきまえない平民召使と違い、誇り高いヴェーシア侯爵家の郎党でございますので、お嬢様と同じ講義に出るような出しゃばった真似は致しません」


 無駄にキリッとしながらヘアルト。つまりお勉強は全然ダメなのはロドゥバの家のせいだということね。

 本当に都合の良いときだけお嬢様呼びなんだから。


「ではイウノちゃん」「『南の魔王 レグサド』とその軍勢は大汚染域を通り、さらに東から進行してきたと言われています」

「正解です。ではレッドラインの南端にあり、大陸の東西の交通の要所と言われている都市は……」


 それから大陸西部の主要国家や都市国家の名前や特徴、大きな山や湖などまでなら私もぎりぎりついて行く。

 正直言って私はティカク領から出たことがないので、このあたりの知識はお話の中の情報に近いイメージだ。


 すぐ側の森ですらあんなに深くて広いのに、もっともっと広い場所や高い山があるなんて想像もつかない。


 続いてどんどん問題が出る、我らがオールガス帝国の四大公爵家もセーフ、しかしその先はさらに質問が難しくなっていく。


「では南部シートラン共和国には主要の港が三箇所あります」

「シートラン共和国と親交の深いペラゴニア諸島の主要な島名は」

「北方ハインラティア王国の更に北方を何と呼ぶか」


 お、おばあちゃん先生……そんなの授業でやってましたっけ……?


「オールガス帝国領は四季があります。ハインラティア、シートラン、ペラゴニア諸島、トリティオンの各地域の気候は」

「シートラン共和国と帝国の定期船は常に行き来しているわけではない。その理由は?」

「帝国とハインラティアの国境は百年以上動いていないがなぜ?」


 そんな難問にも答えられるロドゥバに、私は戦々恐々とした。

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