表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/96

盗賊と水巫女


 アリアが目を覚ました所は小さな部屋だった。


 普通に大きめの窓があり外が見える。外の景色は森だ。

 おそらくは自分が香草を摘んでいた森だと思われるが、何故ここにいるのかがわからない。


 すると部屋の扉が開き、一人の男が現れた。

 その顔を見てアリアは全てを思い出したのだ。


「ちょっと、これはどういう事?」

「悪いな姉ちゃん。少しばかり眠ってもらったんだ。あんたが何者なのかわからねぇからな」

「あなた、シャトルファング盗賊団の賞金首よね?」

「さすがにわかるか。わからない方が話し合えたかもしれねーな」


 少し奇抜な髪をした男はアリアの前にあったソファーに、脚を組んで深く腰かけた。


 その態度には〝余裕〟が感じられる。

 おそらくは、絶対的に腕に自信があるのだろう。


「青髪の女の子はどうしたの? あの子は水巫女じゃないの?」

「それもわかってるのか。それでどうするつもりだ? 俺を倒して、あのガキを連れてくのか?」

「当たり前じゃない! 我が光のちから────」

「やめとけ。ここで魔法を使うと魔力を持ってかれるぞ。ちなみに窓を開けたりするのもやめとけよ」


 魔法の詠唱をしようとしたアリアを、男は強めの言葉で制した。


 直ぐにその言葉が本当だという事はアリアにもわかった。

 詠唱開始直後、僅かに体内で動いた魔力が消失した感じがしたのだ。

 おそらく魔力結界だろう。


「随分と用意がいいのね。この建物はあなたの隠れ家ってわけ?」

「いや。それは違う。誰の持ち物か知らないが、随分と高度な魔力結界が最初からあったみたいだ。ちなみにこの部屋だけじゃない。家丸ごとが結界になってる」

「じゃあなたは、どうやって家に入ったのよ」


 魔力結界は、仕掛けた本人なら影響を受けない。

 だが、それ以外の者が下手に触れば〝死〟に直結する可能性もある。


 まして、目の前の男が言うような家全体が護られる規模の結界ならば、相当な強さだろう。


「ここって、まさか。噂の幽霊屋敷?」

「は? なんだそりゃ? そんなの俺が知った事かよ。俺もちょうどさっき見付けたから利用してるだけだ」


 アリアは近くの森に〝幽霊屋敷〟と呼ばれる建物がある事は以前から聞いていた。

 古い建物で、誰も住んでいないようだが。夜になると明かりが灯っているのを見た者がいる。


 だが、気配はなく。

 入ろうとしても誰も中に入れない事から、幽霊屋敷などと呼ばれているらしい。


 しかし、そんな所に目の前の男が入れたなら。

 彼は魔力結界を張った本人以上の魔力を持つ事になる。

 家全体に魔力結界を張るような者より強いなら、到底アリアが勝てる相手ではないだろう。


「一体何が目的なの? 女の子は無事なの?」

「聞きたいのは俺の方だ。何故、隠れて俺達を見ていた?」

「そ、それは。まあ、なんとなく隠れたのよ……私はただの冒険者よ」


 男は一瞬、呆れたような間抜け面をしたが。すぐに立ち上がり何故か部屋を出て行く。


「どこ行くのよ」

「ちょっと待ってろ。俺が話しても信じてはもらえねぇだろうからな」


 そう言い残して、男は普通にドアを開けて部屋を出ていった。

 家全体に結界があるなら、ドアを開ける事も出来ない気がしたアリアは静かにドアに近付きドアノブに手を伸ばす。


 もし何か結界があるなら、触れる瞬間に体内の魔力に何かしら変化が起きるはずだ。


「だ、大丈夫……あの男も開けたんだから。結界なんて、嘘に決まってる」


 独り言を言いながらも、アリアが慎重にドアノブに触れようとすると〝ガチャ〟っと再びドアノブが回る。


 慌ててアリアは後ろに飛び退いた。

 するとさっきの男が、青髪の少女を連れて立っている。

 焦っているアリアを見て、ため息を漏らした。


「おい、死にたいのか? 俺が平気なのは生まれつき魔力が無いからだ。お前や、このガキがドアを開けたら命の保証は出来ねぇぞ」

「そんなデタラメが……」

「信じられないなら試すか? 俺は構わねぇぞ。ただ、その前に一つ俺の話を聞いてくれると助かる」


 アリアは青髪の少女を見たが、彼女が男を怖がっている様子は無い。

 つまり、この男は彼女から一定以上の信頼を受けているという事なのだろう。



「わかったわ。何を聞けばいいの?」

「まず、このガキは見ての通り〝水巫女〟だ。それで俺はこのガキを聖王国まで連れていく。その為の船を用意してくれ」

「な、何言ってるのよ。いくらなんでも盗賊に任せられるわけないじゃない。それだったら私が連れて行くわ」

「それは出来ない。悪いが信用してない」


 どの口が言うのだ、とアリアは男を睨み付けた。

 盗賊を信じろというだけでも難しいのに、逆に自分を信じられないとか言われたのだから腹ただしい。


 怪しい盗賊だと、アリアが疑いの目を向けていると。ついに女の子がアリアに向かって口を開いた。


「わ、私は聖王国の者によって連れ出された。だから、簡単には人も国も信じられない……」

「なら、どうしてその男は信じるの?」

「わからない。この人は、私の為に自分の命を投げ捨てる事が出来たから、かも……」


 そう聞いた所でアリアには、彼女が男に騙されているようにしか思えなかった。

 しかしながら、この魔法結界の中で彼女を救うのは難しい。


 一旦引き受けたフリをしてルウラに戻り、グレンに助けを求めに行くか?……とアリアは考える。

 

「わかったわ。船を用意すればいいのね?」

「頼まれてくれるか?」

「仕方ないわね。じゃあとりあえず、ここから出して」


 話が決まりそうになった時。

 男が急に窓の外を気にしたので、アリアが、連られて外を見ると。

 何故か、グレンがキョロキョロしながら歩いていた。


「くそっ! 誰か来やがった。この屋敷の主か? おい姉ちゃん、悪いがちょっと一緒に来てもらうぜ」


 と、男が急にアリアの手を掴む。

 アリアは驚いて思わず小さく悲鳴をあげた。

 その直後、一瞬で大きな窓ガラスが全て音をたてて割れた。


 同時にあり得ない速度で部屋に飛び込んで来たグレンにアリアは抱き上げられ。

 直ぐに外へと連れ出された────


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ