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アリアの行方


 グレンとネジイは洞窟を出てルウラへと戻る途中で、正面から向かって来る集団に気付いた。


 それは王国の第一騎士団の小隊であったわけだが、この時点でグレンは少し不思議に思った。


「王国第一騎士団所属のソーサルだ。キミがグレンくんで間違いないかな? そちらは?」

「あ、は、はい。僕がグレンです。こちらはネジイさん。リーヤマウンテンの時も同行していた冒険者の方です」


 騎士団はフィルネに話を聞いて、直ぐに応援に来たという事だった。

 そして、ルクルの家にいたのはシャトルファング盗賊団の一味だったのだと説明され。

 グレンは、洞窟入り口のターバンの男を思い出した。


 性懲りもなく繋がりがあったのか、などと先ずは呆れたが。

 あの男は裏切られた盗賊で、洞窟の中にあったゴブリン〝以外〟の死体もそうだと考えれば。

 なるほど……辻褄が合うのかもしれない、と思うのだ。


 だが、グレンは盗賊の話が聞きたいわけではない。

 グレンが騎士団に出会って真っ先に疑問に思ったのは、そこではなかった。


「騎士団の方々は、ここに来る途中に冒険者の姿を見ませんでしたか?」

「ん? おまえ達、道中で誰か見かけたか?」


 ソーサルが部下達に訊ねるも、全員が〝誰も見ていない〟という反応を見せたが。

 つまり、グレンが知りたいのは〝アリアの行方〟なのだ。


 夜だから、歩いている彼女に気付かなかったのだろうか? とも考えたが。

 ルウラからベイナント渓谷まで、森も林もないので見落とすとは考えにくい。

 

 どういう事かと顎に手を添えて考えるグレンに、「ちなみに渓谷では何があった?」と、ソーサルは訊ねてくる。

 

 正直な所。アリアの事が気になりそれどころではないのだが、事の経緯を話すにも直接見てもらった方が早いだろう。

 グレンは騎士団を連れて一旦現場に戻る事にした。

 

 そうしている間にもアリアが来るだろうと、グレンは考えたのだ。

 しかし。それから一時間以上経っても、アリアが来る気配はなかった。



「とにかくご苦労だった。君たちにはまだ話を聞きたいが、我々はもう少し詳しくここを調べてから王都にもどる。また後日詳しく伺うと思うが、その折はご協力願いたい」

「は、はい。わかりました、では僕はこれで……」


 この時、グレンはかなり焦りを感じていた。

 騎士団の話でも、アリアをベイナント渓谷に誘い出したのは確かにシャトルファング盗賊団のようだ。


 そして、彼らがサヴァロン……もとい、ダリオンに頼まれたのも間違いないのだ。

 ならば何故アリアはここに来ないのか……



 ネジイと二人帰り道を歩く道中。

 グレンが考えていたのは、実はシャトルファング盗賊団の方がダリオンを裏切っていた可能性である。


 ダリオンの指示通りに、アリアを洞窟に誘い出すように見せかけて。

 実はかなり手前で、盗賊団の別部隊がアリアを拉致する事が出来るだろう。


 あの洞窟で盗賊団が殺されたのも、実はその裏切りがバレたからではないか? などと、とにかくネガティブな思考が今のグレンの脳内を支配していた。



「どうかしたか?」

「いや、ネジイさん。少し気になるんです、ひょっとして〝まだ〟何かを見落としているのではないかと」

「例の少女の事が気になるのか?」

「はい。ネジイさんが来る時も、誰も見てませんか?」


 ネジイは困った顔で静かに首を横に振る。


 グレンが何の為にここに来たのかを考えれば、心配するのは当然だったが。

 そんな冷静さを失っているグレンの様子は、ネジイの目にも明らかだったのだろう、珍しく彼が積極的に話し掛けてきた。


「リーヤマウンテンでもいた少女だな? それなら俺も顔は知っている。探すならば手伝おう、あんたには大きな借りがあるからな」

「あ、ありがとうございます」


 ネジイの言葉に、グレンは人の温かさを感じていた。

 彼ならば〝転移魔法〟を見せても黙っていてくれそうだ、などとも考えてしまうほど。



 だが、途中で落ち合う可能性もまだある。ここは敢えて転移する必要はないだろうと、考えをアリアの行方に戻した。


 もし何者かに拉致された可能性を考えるならば、ほぼシャトルファングだと考えるのが妥当だ。

 寧ろ、そうじゃなかった場合。完全に〝詰んだ〟状態に陥るのだが。

 

「少女が街を出たのはいつだ?」

「それがハッキリしません。でも、午前中には出ている気がするのです」

「白昼堂々、何かあるとは思えない」

「ですよね。ではやはりベイナント渓谷付近までは、普通に移動していたはずですね」

 

 と、考え至りグレンは余計に不安になる。

 何故ならば既にグレン達はベイナント渓谷〝付近〟からは移動してきているのだ。

 もちろん、その間に誰とも会っていない。


 一応、休憩などで火を起こした痕跡も探しているのだが、そういった手掛かりも無いのだ。

 このまま歩き続ければルウラに辿り着いてしまう。


「やはり、彼女は誰かに……」

「少し落ち着け。盗賊団の可能性なら、情報はある」

「え? 何かありますか?」

「騎士団が言ってただろ。ルウラの何とか」


 ネジイの言葉でグレンは思い出した。

 そうだ。ルウラの鍛冶屋で捕まえたのはシャトルファング盗賊団なのだ。

 つまり奴らが何かを知ってる可能性はある。


 洞窟で殆どが死んでしまったように考えていたが、生き残りがいるのだ。

 冷静さを失い、グレンはその事を完全に失念していた。

 

「そうでした。とりあえずは街に戻りましょう」

「うむ……」


 グレンとネジイは、その後も足元の痕跡を見逃さぬようにルウラへと戻った。





 そして────


 既に日が上り、明るくなったルウラの街へと二人は辿り着いた。


 辿り着いてしまった……と言うべきか。


 とりあえず、あの時全てを任せたフィルネに話を聞いて見ようと。

 グレンとネジイは、既に営業中である冒険者ギルドへ向かったのだが。


 そこで、グレンは勿論。ネジイさえもが驚く事が起きたのだ。


「フィルネ! あの後、盗賊達はどこに……」

「ああ、お帰りグレンくん。あれ? ネジイさん?」


 緊迫した面持ちで駆け込んだギルドで、グレンの言葉に応えたのはフィルネではなく。

 


 ────アリアだったのだ。

 

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