第7話「朝の匂い」 〜遠い背中は、いちばん近い場所で待っている〜
朝の光は、まだ弱かった。
東の空から差し込む薄い橙色が、団地の廊下を斜めに照らしている。古い手すりの影が、コンクリートの床に細長く伸びていた。夜露を含んだ風が通り抜け、廊下の端に置かれた小さな鉢植えの葉を、かすかに揺らした。
佐藤誠司は、鍵穴に鍵を差し込むまでに、一度、指先を滑らせた。
金属が小さく鳴る。
かちゃ、と乾いた音が、まだ眠っている家の前でやけに大きく響いた。
「……ただいま」
声はほとんど息だった。
玄関の扉を開けると、家の中の匂いがした。昨夜の味噌汁の残り香。洗剤の薄い香り。子どもの靴に染みついた土の匂い。外の冷えた空気と違い、そこには人が暮らしているぬくもりがあった。
誠司は靴を脱ごうとして、壁に手をついた。
ほんの一瞬、足元が沈むような感覚があった。睡眠不足のせいだとわかっている。それでも、膝から力が抜ける感覚は、思ったより深かった。
革靴の底が玄関の床を擦る。
その音に気づいたのか、廊下の奥から足音が近づいてきた。
ぱた、ぱた、と柔らかいスリッパの音。
「おかえり」
美咲だった。
髪を後ろで軽くまとめ、薄いカーディガンを羽織っている。まだ朝の支度の途中なのだろう。袖口を少しだけまくった手には、布巾が握られていた。
「ごめん、起こした?」
「起きてたよ。そろそろご飯の準備しようと思って」
「そっか」
誠司は無理に笑おうとした。
だが、頬の筋肉がうまく動かなかった。目の奥が重い。まばたきをするたび、まぶたの裏に赤い警告表示が残っている気がした。
区画内人員、四名。
通信途絶。
退避経路、全封鎖。
文字はもう目の前にない。けれど、頭の奥に張り付いていた。
「仕事、大変だった?」
美咲が聞いた。
問い詰める声ではなかった。朝の湯気のように、そっと置かれた声だった。
「うん。ちょっと……データ入力、やけにエラー多かったな」
「そう」
「でも、まあ、なんとかなったよ」
誠司はそう言って、鞄を下ろした。
鞄の中で、空になった缶コーヒーがかすかに転がる音がした。帰りに飲み切ったはずなのに、缶の底に残っていた数滴が揺れたのかもしれない。
美咲はその音に一瞬だけ目を向けたが、何も言わなかった。
「コーヒー、飲む?」
「……うん。もらえると助かる」
美咲は頷いて、台所へ向かった。
カーテンの隙間から入った朝日が、リビングの床に四角い光を落としている。光の中で、細かな埃がゆっくり舞っていた。夜明けの静けさの中、冷蔵庫の低い音と、台所で水が流れる音だけが聞こえる。
誠司はソファに腰を下ろした。
座った瞬間、身体が深く沈んだ。背中に染み込んでいた緊張が、少しずつほどけていく。だが、ほどけた場所から疲労が溢れ出した。肩が重い。腕が鉛のようだった。
台所から、湯の沸く音が聞こえる。
こぽこぽ、と小さな泡が立ち、やがて電気ケトルが短く音を立てて止まった。美咲がマグカップを置く音。スプーンが陶器に触れる音。どれもいつもの朝の音なのに、今日は遠くから聞こえるようだった。
誠司は目を閉じた。
ほんの数秒だけのつもりだった。
けれど、その暗闇は思ったより深かった。
「あなた」
呼ばれた気がした。
返事をしようとしたが、声が出なかった。
次に目を開けた時、テーブルの上には湯気の立つコーヒーが置かれていた。白い湯気が細く揺れ、朝日に透けて消えていく。
美咲は、誠司の顔をじっと見ていた。
「少し寝て」
「いや、会社……」
「まだ時間あるでしょ。十分でも、二十分でも」
「……ごめん」
「謝らなくていいよ」
その言葉のあと、二人の間に静けさが落ちた。
重たい沈黙ではなかった。けれど、何かを隠している人と、それに気づきながら聞かない人の間にだけ生まれる、薄い膜のような静けさだった。
美咲はそれ以上、聞かなかった。
聞けば、誠司が困ることを知っていた。誠司が嘘をつくのが下手なことも、無理をするときほど何でもない顔をすることも、知っていた。
だから、ただテーブルの端を拭いた。
布巾が木目をなぞる音だけが、静かに残った。
*
洗濯機の前で、美咲は誠司のシャツを手に取った。
襟元は汗で少し硬くなっていた。袖口には、薄い灰色の粉のようなものがついている。事務所で一晩パソコンに向かっていた人間の服には、あまり似合わない汚れだった。
美咲は指先でそっと擦った。
粉は完全には落ちなかった。
洗面所の小さな窓から、朝の風が入ってくる。外の植え込みの葉が擦れる音が、かすかに聞こえた。柔らかい風だったが、洗面所の空気はどこか湿っていた。洗剤の香りと、眠った家族の体温と、昨夜から溜まった生活の匂いが混ざっている。
美咲はシャツの袖口を、顔に近づけた。
ほんの少しだけ、息を吸う。
眉が動いた。
土の匂いがした。
ただの公園の土ではない。雨に濡れた地面とも違う。もっと冷たく、乾いた石と湿ったコンクリートが混じったような匂い。地下道の奥で長く閉じ込められていた空気を、布が吸ったような匂いだった。
「……データ入力、だよね」
小さくつぶやいた声は、洗面所の壁に吸い込まれた。
洗濯機の中で、他の服が丸く沈んでいる。陽菜の体操着。湊の靴下。美咲のパート先で使うエプロン。その上に、誠司のシャツだけが、別の場所から帰ってきたもののように見えた。
美咲はもう一度、袖口を見た。
灰色の粉。
知らない土の匂い。
聞けば、誠司はまた「大丈夫」と言うだろう。
その顔が、目に浮かんだ。
美咲はシャツを洗濯機に入れた。
洗剤を入れる。柔軟剤の甘い匂いが広がった。それでも、あの冷たい土の匂いは、鼻の奥に薄く残ったままだった。
ボタンを押すと、洗濯機が低く唸り始める。
水が流れ込む音が、狭い洗面所に満ちた。
美咲はしばらく、その音を聞いていた。
*
「ママ、おはよう」
陽菜が眠たそうな目で起きてきた。
髪が少し跳ねている。パジャマの袖を片方だけまくり、もう片方は手の甲まで落ちていた。廊下を歩く足音は軽く、まだ朝の夢を引きずっているようだった。
「おはよう。顔、洗っておいで」
「うん……あれ、パパ?」
陽菜はリビングのソファを見て、足を止めた。
誠司が眠っていた。
背広の上着だけ脱ぎ、シャツのまま横になっている。ネクタイは緩められ、片腕がソファから少し落ちていた。テーブルの上のコーヒーは、もう湯気を失っている。
陽菜はそっと近づいた。
窓の外では、朝の風が植え込みを揺らしていた。細い葉が擦れ合い、さわさわと乾いた音を立てている。カーテンの隙間から伸びた光が、誠司の頬にかかっていた。目の下には、薄い影がある。
「パパ、またここで寝てる」
陽菜は小さな声で言った。
責める声ではなかった。少し寂しそうで、少し慣れてしまった声だった。
リビングの隅に畳んであったタオルケットを持ってきて、陽菜は誠司の身体にかけた。小さな手では少し大きすぎる布を、何度も引っ張りながら肩まで上げる。
その時、陽菜の指が、誠司の頬に触れた。
誠司は起きなかった。
陽菜は指先を止めた。
「パパ、あったかい」
その声は、とても小さかった。
美咲が台所から振り返る。
陽菜は眠る父の顔をじっと見ていた。触れた指先に残るぬくもりを確かめるように、もう一度、そっと頬に触れる。
「でも、ちょっと痩せた気がする」
朝の光が、陽菜の横顔を照らしていた。
美咲は返事をしなかった。
言葉を出すと、何かがこぼれてしまいそうだった。
陽菜はランドセルの横に置いてあった図工の画用紙を思い出したように取り出した。
「ママ、これ、昨日持って帰るの忘れてた」
広げられた絵には、四人の家族が描かれていた。
ママは真ん中に、大きく描かれている。髪は茶色で、笑っていて、手にはフライパンのようなものを持っている。湊はその足元で、青い服を着て両手を上げていた。
陽菜自身は、ママの隣にいた。
そしてパパは、右端にいた。
小さかった。
身体も、顔も、他の三人より少しだけ小さい。笑ってはいる。けれど、画用紙の端に寄り、家族の輪からほんの少し離れているように見えた。
陽菜は自分の絵を見て、首を傾げた。
「パパ、最近いつも遠いからかな」
美咲の手が止まった。
フライパンの上で、卵が小さく音を立てている。じゅう、という音が、やけにはっきり聞こえた。外では車が一台、団地の前を通り過ぎていく。その音が遠ざかるまで、美咲は何も言えなかった。
陽菜は絵の中の小さなパパを、指でなぞった。
「でも、ちゃんといるよ」
その言葉に、美咲はゆっくり息を吸った。
そして、陽菜の頭をそっと撫でた。
「うん。ちゃんといるね」
誠司は眠っている。
朝の光の中で、何も知らずに。
その手の届かない場所で、娘は小さな父親の絵を見つめていた。
陽菜が学校へ行ったあと、リビングには少しだけ静けさが残った。
玄関の扉が閉まった音の余韻が、廊下の奥に薄く沈んでいる。外では子どもたちの声が団地の壁に反射し、朝の風に乗って遠ざかっていった。ランドセルの金具が揺れる音。誰かが階段を駆け下りる音。植え込みの葉が擦れる乾いた音。
美咲は、陽菜が置いていった画用紙をそっと持ち上げた。
絵の中のパパは、やはり小さかった。
紙の端に寄って、少しだけ離れて立っている。それでも、顔には笑顔が描かれていた。陽菜なりに、そこにいてほしいと思ったのだろう。小さくても、遠くても、消してはいなかった。
美咲は画用紙を胸の前に持ったまま、ソファで眠る誠司を見た。
誠司は深く眠っていた。呼吸は浅く、時々、喉の奥でかすかな音が鳴る。昨夜の疲れが身体から抜けきらないまま、ただ電池が切れたように横たわっている。
朝日が少し高くなり、カーテンの隙間から差す光が移動していた。光の帯が、誠司の指先に触れる。乾いた指。爪の間に、洗っても落ちきらなかったらしい灰色の影が残っていた。
美咲は、それを見なかったことにした。
見なかったことにするしかなかった。
誠司のスマホが、テーブルの上で一度だけ震えた。
ぶ、と低い音。
美咲は思わず画用紙を抱え直した。画面には通知の光が一瞬だけ点き、すぐ暗くなる。誰からなのか、何の連絡なのか、見ようとは思わなかった。
夫婦だからといって、すべてを覗いていいわけではない。
けれど、知らないままでいられるほど、鈍くもなかった。
「……お昼まで寝かせてあげたいけど」
美咲は時計を見た。
会社に行く時間は、もうあまり残っていなかった。
起こさなければならない。
でも、その声をかけることが、まるで水の底から誰かを無理やり引き上げるようで、胸が痛んだ。
しばらくして、美咲はそっと近づいた。
「あなた」
返事はない。
「会社、間に合わなくなるよ」
誠司の眉がわずかに動いた。
何かから逃げるように、目が開く。焦点が合うまで少し時間がかかった。天井を見て、カーテンを見て、美咲を見て、それから急に身体を起こした。
「今、何時?」
「まだ大丈夫。急げば間に合う」
「ごめん」
「だから、謝らなくていいって」
美咲はそう言って、いつものように笑った。
笑えたはずだった。
けれど、誠司が洗面所へ向かったあと、口元からその形だけがゆっくり消えた。
*
夕方、湊は玄関で靴を脱ぐなり、片足を上げて靴底を見ていた。
「ママ、これ、つるつるになってる」
美咲は買い物袋を台所に置き、玄関へ戻った。
湊の靴底は、確かにすり減っていた。もともとあったはずの溝は薄くなり、ところどころ平らになっている。かかとの外側だけが大きく削れて、歩くたびに身体がわずかに傾きそうだった。
「また走ったの?」
「走った。今日、校庭で鬼ごっこした」
「転ばなかった?」
「ちょっとすべった。でも転んでない」
湊は得意げに言った。
その笑顔を見て、美咲はすぐに「買おう」とは言えなかった。
靴が必要なことはわかっている。
けれど、財布の中身も、通帳の残高も、冷蔵庫の中身も、頭の中で同時に並んでしまう。米。牛乳。給食費。電気代。陽菜の書道。湊の遠足代。誠司の定期。次の給料日までの日数。
小さな数字が、夕方の台所に次々と浮かんでは消えた。
「今度、見に行こうね」
「ほんと?」
「うん。サイズも測らないとね」
湊は嬉しそうに頷いた。
その時、リビングのテレビからニュースの音が流れてきた。朝、誠司が眠っていたソファの前。湊がランドセルを放り出し、テレビの前に座る。
『昨晩、B-14区画で発生した事故について、国家対策部隊は、閉じ込められていた四名全員の生還を発表しました』
画面には、遠くから撮影された施設の映像が映っていた。夜の照明に照らされた黒い車両。防護服を着た人影。規制線の向こう側で、風に揺れる草。
『現場では一時、通信が途絶えたものの、部隊の迅速な対応により、全員が無事に退避したとのことです』
美咲は、包丁を持つ手を止めた。
B-14。
昨夜、誠司の服についていた、知らない土の匂いが鼻の奥に戻ってきた。
もちろん、関係があるはずはない。
誠司はデータ入力の深夜バイトをしているだけだ。危険な現場に行っているわけではない。そう聞いている。そう信じている。
けれど、テレビの中の夜の照明と、誠司のシャツに染みついていた冷たい匂いが、頭の奥で細くつながりそうになった。
美咲はその線を、自分で断ち切った。
まな板の上で、にんじんを切る。
とん。
とん。
包丁の音が、少しだけ硬くなった。
「ママ、これって怖いやつ?」
湊が振り返る。
「うん。でも、みんな助かったんだって」
「じゃあよかったね」
「そうだね」
湊は少し考えてから、また聞いた。
「パパは怪獣より強い?」
美咲は包丁を止めた。
「怪獣?」
「テレビの人たち、すごいじゃん。閉じ込められても助けたんでしょ。パパも助けられる?」
湊の目は本気だった。
子どもにとって、世界はまだ単純だった。強い人がいて、弱い人がいて、助ける人がいる。父親は、そのどこかに必ずいるはずだと思っている。
美咲は少し笑った。
「パパは怪獣とは関係ないよ」
「ふーん。じゃあパパが一番強いのは何?」
台所に夕方の光が差し込んでいた。
西日が窓ガラスを通り、シンクの水滴を小さく光らせている。風が網戸を抜け、カーテンの端をふわりと持ち上げた。どこかの家から夕飯の匂いが漂ってくる。
美咲は湊の顔を見て、少し考えた。
「……朝ごはんを作ること、かな」
「朝ごはん?」
「うん。パパ、卵焼き上手でしょ」
湊は目を輝かせた。
「じゃあ、パパは朝ごはんの王様だね!」
「そうだね」
美咲は笑った。
今度は少しだけ、本当に笑えた。
リビングの隅では、陽菜が持ち帰った画用紙が、まだテーブルの上に置かれている。小さなパパは、画用紙の端で笑っていた。
*
夜になり、誠司はまた家を出た。
玄関で靴を履く背中は、朝よりもさらに重く見えた。会社から帰って、夕飯を食べ、子どもたちと少しだけ話し、湯船に短く浸かり、もう一度ワイシャツに袖を通す。
その動きの一つ一つに、疲れが染み込んでいた。
「無理しないでね」
美咲が言う。
誠司は振り返って笑った。
「大丈夫。今日はたぶん、普通の入力だけだと思う」
普通。
その言葉が、玄関の狭い空気の中で少しだけ浮いた。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
扉が閉まる。
外の廊下を歩く革靴の音が、少しずつ遠ざかっていく。かつ、かつ、と硬い音が階段へ向かい、やがて聞こえなくなった。
美咲はしばらく、玄関に立っていた。
扉の向こうには、もう誰もいない。それなのに、誠司の背中だけがそこに残っているようだった。
リビングへ戻ると、部屋は静かだった。
陽菜と湊は寝ている。テレビも消えている。冷蔵庫の音だけが、低く鳴っていた。窓の外では夜風が吹き、団地の植え込みを揺らしている。葉が擦れる音が、暗いガラス越しにかすかに届いた。
美咲はテーブルに家計簿を広げた。
電卓を置く。
ペンを持つ。
来月の収支を書き出す。
誠司の給料。減った分。自分のパート代。児童手当。固定費。食費。学校関係。医療費の予備。湊の靴。
深夜バイトの収入は、まだ入っていない。
初めての振込は、来月末。
それまでは、今あるお金だけで回さなければならない。
電卓のボタンを押す音が、静かな部屋に響いた。
かち。
かち。
かち。
数字が表示される。
足りない。
美咲はもう一度計算した。
結果は変わらなかった。
陽菜の書道の月謝を、一か月だけ止めれば。
湊の靴を、もう少しだけ待てば。
食費を少し削れば。
自分の昼ごはんを、残り物だけにすれば。
考えは次々と浮かび、そのたびに胸の中が細く削られていく。誰か一人を我慢させれば、別の誰かを守れる。そういう計算ばかりが、目の前の紙に並んでいく。
美咲はペンを置いた。
天井を見上げる。
白い天井には、蛍光灯の薄い影が丸く落ちている。昼間は気にもならない小さな染みが、夜になると妙にはっきり見えた。
「……がんばってるね、あなた」
声に出すと、胸が少し痛んだ。
「わたしも、がんばらなきゃ」
その声は、誰にも届かなかった。
届かなくてよかった。
美咲は立ち上がり、テーブルの上の画用紙を手に取った。陽菜は恥ずかしがって、貼らないでと言った。パパが小さくなっちゃったから、と。
冷蔵庫の前に立つ。
扉の内側には、学校からのプリントや買い物メモが貼ってある。その隙間に、そっと画用紙を重ねた。磁石で留めると、紙が少し波打った。
小さなパパが、そこにいた。
家族の端で、笑っていた。
「パパ、もっと大きく描いてもらえるように、しなきゃね」
美咲は指先で、絵の中の誠司の肩を撫でた。
冷蔵庫の冷たい光が、画用紙の白を淡く照らしている。夜の台所には、洗剤と炊飯器の残り香と、さっき切ったにんじんの匂いが薄く残っていた。
その夜、佐藤家の冷蔵庫には、小さなパパが描かれた絵が貼ってあった。
そのパパが今、地下の静かな部屋で、見知らぬ誰かの命を守る数字を見つめていることを、絵を描いた娘は知らない。




