刀狙い
俺たちは今、雪原の森の中にあるセーフゾーンで休憩しながら2つのクランの連中が来るのを待っている。俺が今日の午後NMに挑戦すると言うと情報クランと攻略クランのメンバーが実際の戦闘を見てみたいと言ったんだよ。
「今日も頼むぞ」
「問題ないのです。強い敵をぶっ倒してやるのです」
「ガウ」
タロウもリンネ、そしてクルミもいつも通りだな。うん、これなら大丈夫だろう。彼らはレベル120でNMが135だと言っていた。つまりレベル118の俺たちが相手にしてもNMのレベルは135だと言う事だ。前回よりもレベル1上がってもNMのレベルが変わっていないとなると勝てる確率は高いぞ。
セーフゾーンで休んでいると攻略クランと情報クランのいつものメンバー10名がやってきた。彼らはアライアンスを組んで敵を薙ぎ倒しながら進んできたそうだ。その方が早く移動できるしね。
「目的は経験値を稼ぐ事じゃないからな。移動がスムーズに行く方がいいだろう?」
確かにその通りだよ。しっかりと休んだ俺たちは森の中を北西方面に進み出した。彼らは2パーティでアライアンスを組んでいるが俺たちはいつも通りだ。タロウとリンネが森の中の敵の気配を察知すると、アライアンスの連中が倒していく。
森を抜けて雪原に出ても雪を被っている岩に擬態しているスノウオークを先に見つけるので全く危なげがない。
「タロウとリンネの気配感知があると全然違うな」
後ろからそんな声が聞こえてくるけどその通りで、従魔達に随分と助けられているのは間違いないよ。
雪をかぶっている岩に擬態しているスノウオークを倒して進んでいると、オークが消えて雪原になった。
「そろそろなのです」
俺が何も言わなくても従魔達が先に言ってくれる。
そのまま雪原を進んでいくと、前方に雪を被っている大きな岩らしきものが見えた。
俺が蝉を詠唱すると、リンネが強化魔法をかけ、クルミが魔法壁をかけてくれる。情報クランと攻略クランの連中は少し離れた場所に立った。
「主が敵を倒すところをとくとご覧あれ、なのです」
リンネが言うと頼むよ、なんて声が聞こえてきた。おいおい、煽るなよ。
スノウオークキングはこの前と同じだった。レベル135とミントが言っている。120のクランの連中の時も135だったから当然と言えば当然だ。
戦闘はこっちのレベルが1つ上がったこともあるのか前回よりも楽だった。狂騒状態の吹雪も今回は横に飛んだので2枚剥がされることもなかったよ。雪の加護も効いている。
19分50秒でNMが倒れて宝箱が現れた。
中身は4種類の神魂石、でも前回と色は違う。50万ベニー、それとスカーフ、盗賊の短剣がドロップした。武器枠の1枠は確定っぽい。雪の加護は出なかった。あれは1度だけかもしれないな。
宝箱が消えるとクランの連中が集まってきた。
「余裕で倒しているな」
「蝉も優秀だしタロウの噛みつき、蹴り、リンネ、クルミの魔法。全てがフルヒットしている」
「タクの刀もいい切れ味ね」
「慣れとこっちのレベルが上がったのもあるんだろうね。この前よりも楽だったよ」
実質13レベルほど上になっているのでこっちのレベルは131。NMのレベルが135なら倒せない敵じゃない。従魔の魔法もレジストされることがないし。
「ステータスで実質レベルを上げるとここまで楽に倒せるのね」
「主が一番強いのです。見たか!なのです」
「ガウガウ」
「おいおい、もういいだろう」
リンネとタロウ、それにクルミも思い切りドヤ顔だよ。本当はお前達が頑張ったからなんだぞ。そう言うと3体の従魔達が寄ってきた。
「一旦岩盤の街に戻ろう」
転移の腕輪で岩盤の街のコテージに移動した。すぐに10名が俺のコテージにやってきた。内緒話は俺のコテージ。
庭のテーブルに短剣とスカーフを置いた。
「今回は雪の加護は出なかったんだな?」
「出なかった。一度きりかもしれないね」
「神魂石の4個、それとスカーフは確定かな。武器枠1つも確定みたいね」
ドロップ品を見ながらクラリアが言った。
「それでタク、この前も言ったけどドロップ品を売ってくれるかな?」
「もちろん。俺は使えるものはもう貰ったし、そっちで使ってくれた方がいいよ」
情報クランの1人がスカーフと短剣を持ってコテージから出て行った。アイテムショップでの買取り価格を調べに行ったそうだ。
「杖は720万ベニーだったの」
「ってことは定価900万ベニー?115装備の武器よりも高いじゃない」
「そうなるな。115装備の武器は600万だからな」
「しかも強化可能よ」
しばらくするとアイテムショップに出かけたメンバーが戻ってきた。
「短剣は720万、スカーフは400万だったよ」
武器は900万、スカーフは500万ってことになるのかな。
彼らは定価で買うと言ったがこっちは使えない装備だ。結局定価の9割で販売した。杖は情報クランの神官のユーリが、短剣はクラリア。スカーフは抽選の結果モンクのダイゴが購入した。
「こっちはお願いする立場だ。タクが時間があるときにNM戦をしてくれてドロップしたら教えてくれるとありがたい」
「問題ないね。経験値稼ぎだと思ってやるよ」
「やるよ。なのです。皆朗報を待つのです」
最後はリンネが締めたよ。
正直俺にとってスノウオークキングとのNM戦は厳しい戦いじゃない。それに刀が出るかもというモチベーションもある。
1日に1回挑戦してはスカーフや武器を彼らに売っていた。経験値も入るのでレベルが上がって119になったよ。さらにNM戦が楽になった。クランの連中は121にレベルが上がった。その時点でNM戦に挑戦したみたいだけどやっぱりNMのレベルは135のままだったそうだ。残念ながら時間切れになったとトミーが言っていた。
ランドトータスのスカーフが後衛用の魔力用アップとしてあるけど、神官、魔法使いによるとスノウオークのNMからドロップするスカーフの方が実際の戦闘の時には役に立つと言っている。強化もできるし、装備するのは間違いなくスノウオークNMのスカーフになると言ってるよ。
この日も午後からNMのエリアに向かった俺たち。岩盤の街からソリに乗って移動するんだけどこれが従魔達には好評で、NM戦よりもソリに乗る方がメインになっちゃっているよ。そしてものすごい勢いで金が増えている。これがリアルだったら最高なんだけど。
雪原を走ると、20時間ポップのNMがその場にいた。もう慣れたものだ。
戦闘時間も17分や16分台になってNMを倒すといつもの神魂石に加えてこの日、刀が出た。
「おっ、刀が出たぞ」
「でかしたのです」
「ガウガウ」
タロウもリンネ、クルミも大喜びだ。もちろん一番喜んでいるのは俺だよ。刀を手にとってAIのミントに聞いてみた。
(タクが今持っている刀よりも攻撃力、素早共に高くなっています)
(この刀は強化可能だよね?)
(はい。強化可能です)
その場から岩盤の街に飛んで強化屋に顔を出した。親方のヘイムさんは俺の顔を見ると手をあげてきた。相変わらずNPCの反応がリアルすぎるんだよな。
「よう、タク。今日はどうした?」
「これを強化してもらおうと思って」
そう言ってカウンターの上にNMからドロップした刀を置いた。それを見たヘイムさん。
「いい刀だな。それでどうするんだ?」
「赤と緑でお願いします」
カウンターの上に赤と緑の石を3個ずつを置くと刀と一緒に手に持って奥に消えていった。しばらくして刀だけを持って戻ってきた。
「ばっちりだ」
「ありがとうございます」
「この前強化した刀よりも強くなってるぞ」
やっぱりそうなんだ。
「それは助かりますね」
「主がまた強くなったのです」
俺の頭の上に乗っていたリンネが言うと肩に乗っているクルミはジャンプをし、タロウは身体をグイグイと押し付けてくる。
早速試し切りとばかりに石盤の街の外で右手に新しい刀を持ってスノウオークをやっつけてみた。確かにこっちの方が優れているのを実感できる。身体もよく動くし、刀を振った時のダメージも大きい。
「もう1本欲しいな」
「あのでかい敵を倒して取るのです」
「そうしよう」




