第九十五話 悪魔と統べるもの
ネネと話を続けること一時間、かなり話が盛り上がり時間を忘れてしまっていたが今から冒険者ギルドに行ってパーティー登録を更新しようかなと、腰をあげたところだった。
突如、大きな爆発音が外から聞こえる。
「なんだ?」
爆音に続くように人々の絶叫が耳に飛び込んでくる。
これはただ事ではないと感じ、みんなと顔を見合わせ外に出ることにした。
道に出ると逃げ惑う人々の流れができていた。
ということは元凶は逆の流れの向きにあるということだ。
しかし一見街には被害が出てないように見えるので、どこか遠いところで爆発がおきたのかな。
なんにせよ市中だと視界が悪いから状況が把握できない。
植物魔法だと少し大型になるから人の邪魔になる。
「どうにかして上から見れないかな……」
そうぼやいたのが聞こえたのかラナが顔を上げる。
「私、できるかもしれません」
「本当か?」
「はい。ロゼッタちゃんお手伝いお願いできますか?」
『わかった』
「では行きます……『風』……『飛行』!」
ラナはまず初級の風魔法を唱えてから、今まで聞いたことのない魔法の名を唱えた。
最初の魔法が後者の魔法の補助的役割を担っているということは想像できるが、果たして『飛行』なんて魔法が初級魔法にあっただろうか。
初級魔法は大抵簡単使えるメジャーなものが多いため、さほどオリジナルなものはないが、中級魔法以降になってくると型にはまらない魔法が出てくる。
ラナの固有スキルでは初級までしかできないはずだったが気づかないうちにレベルアップでもしてたのかな。
「ラナ、レベルアップでもしたのか」
「っ……はい……」
「っとごめん、集中してたか」
話しかけてみるもラナはキツそうな顔をしたまんま魔力を消費している。
ロゼッタの補助があってなおここまで苦戦するとは、もしかしたらラナの行おうとしている魔法は中級魔法をさらに外的要因で昇華させて上級魔法にしようと?
すると徐々に身体が浮遊感を持ち始め、ついに地から足が離れた。
そうするとそこからは速くて、一気に上空まで突き進む。
ラナの方を見ると肩で息をしている。操作に負担がかかってるっぽい。
さて、上級から市内を見ると、大きく目立った外傷はない。
あれ程の爆発音大きな被害があってもおかしくなかったはずなのに全壊している家屋が見受けられない。
ただ、よく目を凝らすと家屋にヒビが多岐にわたって入っている部分があった。
ヒビは主に屋根……ということは上空でなにか起きた可能性が高い。
視線を上げるとそこには一人の男が立っていた。
こちらとの距離は少し離れていて気にもかけていない様子だが、何もツラそうな顔をせずに上空に浮かんでいるのを見ると相当な手練だと考える。
すると不意に大音量で声が聞こえた。眼下にいる人々も逃げ惑う足を止めて、どこから聞こえた声なのか周りを見渡していた。
『久しいな現世の空気は。我は退屈であった。月日が流れもう我の知った顔はなくなったか?』
低く高圧的な声が聞こえ、周りはざわざわし始める。
『ん、あれは? ……いやまあいい。突如現れて驚くものも多いだろう。申し遅れた、我が名は――悪魔アザミ、悪魔を統べるものだ』
目の前にいる男は身振りを見せていることから、あいつが喋っている。
もし言っていることが本当だったならば……。
『かつての怨み、晴らすため千年余の時を経て再び舞い戻った』
千年ほど前の出来事、悪魔の進行が起きるということだ。
かつての怨みとはエルフの里の世界樹で話してもらった勇者ロメリアたちに対してだろう。
そうか、そういえば両親が言ってた不穏も悪魔が出たということもすべてこの伏線か。
しかしどうだろう。視界に捉えているその男は俺の知っている悪魔の形とはかけ離れている。
もっと黒黒とした図体を持ち、異型の骨格をしていると思ったらどうだ、あいつは筋肉こそ隆起しているもののきちっとした服を着ており、皮膚は紫色だが人間らしい顔を持っている。俺の知っている悪魔と共通してるのは背中から生えた翼と頭から生えている二本の角くらいだ。
『早速始めたいところなのだが、エネルギーを世界の横断で使ってしまって仲間が来るのもしばし後だ。今は大人しく撤退するかな』
それは聞き捨てならない。過去の勇者がどれだけ強かったのかはわからないが、目の前にいるあいつとは今戦って互角だろう。
ちょうど街にS級が揃っている今叩くべきだ。
そして上空には何らかの魔法で浮いているベリアさんと騎竜に乗ったアイリスさんがいた。
これなら勝てる!
「行くぞ、ラナ! ネネ!」
「はい」
「わかったわ!」
ラナは魔法の維持に専念してもらうため後衛においた。
他のS級二人も俺と同じ考えなのか同時に突っ込む。
そして各々の固有スキルを発動させた。
俺は上空で植物を発芽させることができないため、アタップで作ってもらった剣を構える。
そして計4人のS級の攻撃が悪魔に迫ろうとしたとき、夥しいほどのさっきが流れる。
『撤退するといったろ?』
瞬間悪魔の周りに黒い風が吹き荒れた。
咄嗟に受け身を取るが、重い魔法がのしかかって来る。
他の人たちもそれに抵抗することができずに吹き飛ばされる。
『ククク、少しくらい余力はあるさ。ではまた会おう』
最後にそう言い残した悪魔の姿は一瞬にして掻き消えたのだった。
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