第二十一話 トレントと上位種
進んでいく馬車に木の姿をした魔物、トレントが襲い掛かってくる。
「ごめんなさい。私の商品に食材があるのでよってきてるのかもしれません」
「商売道具ですからね。仕方ないでしょう」
ゆっくりと馬車を走らせているその周りを一方は俺、もう一方はラナとイチゴに任せている。イチゴはラナの頭の上に乗ってるけど。
木の姿をした魔物だということで、体が堅いのか変則的な攻撃はしてこないため捌き切るのは楽だ。しかし堅さで阻まれるのも確かであるが、そこは植物作成でなんとかなった。
ラナはさっき俺がユソウボクを植物作成して作った斧を使っている。武器が斧のため木こりのような感覚で倒せるのだろう。
ユソウボクは別名リグナムバイタという名前の木で、世界一堅く重い木らしい。その比重はコクタンを上回るほどだ。
過去に植物作成を使ったとき、斧に変化した。武器として使う斧もあるのでそのときは不思議に思わなかったが、こういう使い方もできるんだな。
そういえばイニーザのまちにいた1か月の間に気づいたことだが、世界樹の加護と植物作成の相性が良すぎた。
植物作成は木製の武器にするだけでなく、実際刃の部分などは金属に近いものもある。にもかかわらず、世界樹の加護では植物扱いされるため、ラナの武器としてよく使えるのだ。
前までは矢を作って、ラナが操っていたが、それは純粋な木製のように見えたからだと思っていた。でもよくよく考えたら金属のようになっててももとは純粋な植物だもんな。
「それにしても数が多すぎるな……いつになったら攻撃が止むんだ」
もう十数匹は倒しているけれど、討伐証明部位を取れる余裕もないくらいだ。
ふと考えを思いついた。
トレントは木の姿をした魔物だ。ならば植物操作が使えてもいいんじゃないか。それができれば植物作成の武器を使って肉体を疲れさせることもない。
「まずは試しにこいつを、『植物操作』」
すると突然ピタッっと一匹のトレントの攻撃の手がやんだ。
お、これは成功だな。じゃあ次は……
そのまま自分の体を折ろうとさせる。しかしそれは抵抗されてどうもうまく行かない。
そうか、今まで生えている植物を植物操作で折ろうとしたことがないからわからないが、植物も生物だ。生きているため自分から死を選ぶようなことがあるはずがない。だからそういうことに対しては抵抗力は高いのは当然だな。
しかし攻撃が止む、もっと言えば動かなくなるのは確認できた。
「ラナ、馬車に乗り込め! レオニさん、みんな乗り込んだら馬車を速度を上げてください。トレントの動きが止められることを発見しました」
言葉を発すると同時にラナが交戦していたトレントたちも植物操作で動きを止める。
俺も馬車に乗り込み、レオニさんは馬を叩いて速度を挙げさせた。
「ロイさんどういうことなんですか?」
ラナが質問をしてきた。まあ疑問に思うのも仕方ないだろ
「植物魔法に植物操作ってのがあるんだ。それがトレントにも聞いたらしくてな」
そうも言いつつ次々と出てくるトレントに、馬車が通り過ぎるまで植物操作をかけていった。
てか、普通の植物と違って抵抗されるから余計に魔力をくう。魔力が久しぶりに付きそうだ。
「みなさん、もう少しでこの林から抜けれますよ」
少しの安堵だが、気を緩めず植物操作をかけていったところ、プツンと魔力が切れる感じがした。魔力が尽きた感覚ではない、これは……抵抗された?
「こちらへトレントが前から突っ込んできます!」
馬車は急ブレーキを踏んだ。がしかし前の抵抗したと思われるトレントには、まだ速度が残った状態であたってしまう。
「はああぁぁ!」
しかしそこで馬車から飛んできた攻撃によって魔物は真っ二つに。馬車も完全に停止できた。
魔物が真っ二つに割れたのはラナが飛ばした斧だった。
「ごめん……魔力がもうないから……動けなかった」
「大丈夫ですよロイさん。ここまで抜けれたのはロイさんのおかげですから」
言葉を発するだけでも倦怠感に襲われるので、あとは聞くだけにした。
「ところでこの魔物は普通のトレントと違って色が、白い?」
「まさか……そいつはエルダートレント! 噂に聞いたんですがトレントたちのボスです。だからこの周りにはトレントが寄ってこないんですね。何はともあれ無事で良かったです。あなたがたの護衛がなければそもそもここまで行けてません」
「でも危険にしてしまいました。ごめんなさい。この森ってこんなに普段トレントが出て危険なんですか?」
「いや、普段は違うよ。ただエルダートレントに対する噂があってだね、エルダートレントが出現するとトレントの数と凶暴さが増すっていうことさ。ちょうどそのときに当たってしまったのだろう」
「そうなんですか……あ! エルダートレントの討伐証明ってどこかわかりますか?」
「普通のトレントと一緒なら、頭の方にある葉の中に赤い果実があるはずだからそれだと思います」
ラナは言われたとおり頭の葉の中を探すと、一つ何かを見つけたようだ。
「これ、果実だとは思うんですけど……赤じゃなくて金色? どうぞ、どうですか、レオニさん」
「多分上位種であるエルダートレントだからなんでしょう。これは私も見たことないですね。でも、その素材はあなたがたのおかげによるものですので、私は受け取れません」
思いがけないところでラナがレア素材をゲットしたな。
その後再び馬車に乗り、すぐに森を抜けれた。
俺は魔力を使いすぎたせいですぐに寝た。




