第十三話 新魔法と勇者
翌朝、近くの開けた場所に行き、自分のステータスを改めて確認する。
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ロイナス=アルメリア・男 (16)
スキル
「並列思考 Lv1」「剣術 Lv5」「索敵 Lv4」
固有スキル「植物魔法 Lv4」
Lv1 「光合成」「植物操作」
Lv2 「成長促進」「種子複製」
Lv3 「植物付与」
Lv4 「植物作成」
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少しづつだが通常スキルも上がっているんだな。並立思考はよくわかんないし、使ってもないだろうからあがってないけど。
それは置いといて、新たにできるようになったことは植物作成か。聞く限りだと種子複製と成長促進を組み合わせたようなものだけど、多分違うんだろうな。
そして使えるようになってからの感覚ではこれはなにか植物に対して作用させるらしい。
じゃあ早速近くにあった白樫にかけてみますか。
「『植物作成』」
――ズゥン!
魔法をかけたところには大きな木剣が落ちていた。
なるほどこれは、木の形状を変化させて武器にする、と言う感じだな。
一見、植物付与と似ているかもしれないが、植物付与はベースとなる武器にその植物の特性を付与しているのに対し、植物作成の方は植物そのものが特性を持ちながら武器化すると言ったところか。
試しに以前使ったことのあるスズランを植物作成してみる。
すると植物付与よりは弱い毒だが、しっかりとしたナイフが手に収まっていた。
植物付与よりかは性質は落ちる、と。
だが植物作成したほうが有利な場合もある。例えばつる植物だ。つる植物を剣にエンチャントしたって、あまり特性が活かされなく、鞭にエンチャントすることによって本来の特性を100%引き出せる。
しかし鞭なんて常備していくわけにも行かない植物作成することによって鞭として武器化すると思う。
このようなこともあるしひと通りよく使いそうなものは何が武器として出るか確認しておこう。
「ロイさん、お昼ごはん持ってきましたよ」
「お、もうそんな時間立ったのか。ありがとう」
気がつけばお昼になってたらしくラナが昼ご飯を持ってきてくれた。
ラナもここで食べる為に少し量を多く持ってきたそうだ。
近くに腰おろして、サンドイッチを食べながら話す。
「そういえばロイさんが来てからもう少しで一年ですね」
突然話を振られて思う。多分学園で行方不明扱いになってもう探されていないだろうなと。
「ロイさんは今後どうしていくんですか? 例えばエルフの里を出るとか出ないとかは……」
「そうだな。全然考えていなかった。むしろこの状況に慣れてしまっていたな。でも、外に出てみたいという気持ちはある」
いつまでもラナの家に居候させてもらう訳にもいかないしな。
「そうですか……私も人族の生活が気になったりします。いつか外へ出てみたいです」
昼ご飯も食べ終わり家に戻っていく。
「ロイナス! また手伝ってくれよな!」
「ロイナスくん私のところもお願いね」
すっかり里の皆とも仲良くなってこの暮らしが楽しくなってきたところなのかもしれない。
しかしエルフの中では異端だし、そもそも人間の世界をまだあまり知らない俺は、俺のためにもここを出ていく必要があるのではないとも考える。
しばらく歩いていると世界樹にたどり着いた。
ここももう見慣れたものだな。
世界樹の下では年配のエルフが集まっている。
エルフの平均寿命は500年だ。その500年近く生きたエルフが自分の経験などを話す演説のようなものがたまに開かれている。
俺もたまに聞いたとこがあるが、ためになる話ばかりだった。
俺はそこに足を運んだ。
御年550歳だというエルフがいた。
「ほう……君は、ロイナスとやらじゃったかのう」
「はいそうです」
「人族なんじゃって、ならば勇者の話をしようか」
「勇者とはの、4人パーティーじゃった。何故勇者と呼ばれるようになったかというと、悪魔の大進行と呼ばれる1000年以上も前の出来事を止めた張本人だからじゃ。彼女らの名は勇者ロメリア、魔術師アネモネ、僧侶ラナンキュラス、そして竜騎士ランディーニ」
その後の話を要約する。
悪魔の大進行とは悪魔帝と呼ばれる最上位の存在が、四天将を率いて多くの悪魔と世界を襲った歴史上の事件だそうだ。
この戦いでアネモネとラナンキュラスは瀕死状態に。
あまりにも強大だった二人の魔力が放出され、その場の生態系を変える恐れがあったためロメリアの魔法で二人は花に込められた。そしてその花の持つ魔力がダンジョンを作った。
また、残された二人のうちロメリアは他種族との交流を深めた。
エルフ族に魔族、獣人族にドワーフ族などいわゆる亜人と呼ばれている種族とだ。
その時の行動がエルフに対しては世界樹を植えるということだったという。
ランディーニのその後は知られていないそうだが、彼の死とともにロメリアが同じように魔力を花に込め、ダンジョンができたと言われる。
彼女らの名前を取って世界最高難易度ダンジョンの3つの名はアネモネ、ラナンキュラス、ランディーニとされているそうだ。
不思議なことにロメリアというダンジョンもあるそうだが、難易度は他の3つと比べて劣るらしい。
最難関ダンジョンか……どんな敵がいるのだろうか。
1年前アブソリュートウルフと戦ったときに自分の実力が通じなかったのを覚えている。
今回新しいスキルを得て、少しでも近づけたらと考えると嬉しさがこみ上げてくるのがわかる。
そういえば学園の卒業生は冒険者も多いんだったな。
今から学園に戻ったって主席という泊はあまり効力を成さないだろう。
それならば、自分の実力が上がっていくのが目に見える冒険者というのは天職なのではないか。
それとダンジョンも冒険者のランクが必要な場合があると習った。
よし、外へ出るんだったら、再び人族の街へ出るのだったら、冒険者になろう。
結構な頻度で光合成はしています。