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④学校

第四話です。

沙耶と結乃が登場しました。

ここから少しずつ学校生活も広がっていきます。


 人の流れが、横を通り過ぎていく。


---


 その中に入るタイミングが、少しだけ分からない。


---


(……行こ)


---


 少し深呼吸をして、歩き出す。


---


 教室の前。


 一度だけ、中をのぞく。


---


 知らない顔ばかり。


 男子の笑い声


 女子の笑い声


 誰かが机を引く音。


---


 朝の空気は、

思っていたよりずっと騒がしかった。


---


 そのまま扉を開ける。


---


 ざわつきが、少しだけ耳に入る。


---


 一瞬だけ、視線が集まる。


---


(……見られてる)


---


 何も言わずに、窓の端っこ側の席を歩いた


---


 椅子を引いて、座る。


---


 少しだけ、肩の力が抜ける。


---


 前を見る。


 横を見る。


---


 やっぱり、落ち着かない。


---


「ね」


---


 横から声がかかる。


---


 少し遅れて、顔を上げる。


---


「……な、なに?」


---


 隣の席の女子と目が合う。


---


 明るい雰囲気の子だった。


 肩あたりで揺れる髪。


 制服の着崩し方も自然で、

無理している感じがない。


---


 思っていたより背も高い。


 近くにいるだけで、

空気が少し軽くなる感じがした。


---


「同じクラスだよね?」


---


「……うん」


---


「よかった」


---


 少しだけ笑う。


---


「私、小夜川沙耶」さよかわさや


---


「……東雲琥珀」


---


「ん」


---


 沙耶が軽く頷く。


---


「こっちは白雪結乃」しらゆきゆの


---


「……結乃」


---


 小柄な女子だった。


 少し眠そうな目。


 でも、

視線だけは妙に鋭い。


---


 そのまま、

じーっと琥珀を見る。


---


(……近)


---


 距離が近い。


---


 結乃はそのまま、

少しだけ顔を寄せてくる。


---


「……な、なに?」


---


 思わず声が裏返りそうになる。


---


「別に」


---


 そう言いながら、

まだ見ている。


---


(見てるだろ……)


---


「結乃、

じろじろ見すぎ」


---


「気になるから」


---


「なにが」


---


「なんか、

警戒してる猫っぽい」


---


「……え?」


---


「あと、

お前もこっち見てくんな」


---


(……なんだ、こいつ)


---


 結乃は少しだけ口元を緩めた。


---


「反応した」


---


「結乃」


---


 ぺしっ。


---


 沙耶が軽く頭をチョップした。


---


「だーめ。

そうゆうことしたらだめ」


---


「……いて」


---


 結乃は少しだけ不満そうに、

沙耶を見る


---


「わかった….」


---


 さっきまでの勢いが、

少しずつ大人しくなる。


---


(……沙耶には弱いんだ)


---


 なんとなく、

関係性が見えた気がした。


---


「……別に、

警戒してないし」


---


「してる」


---


 即答だった。


---


「顔ちょっと固い」


---


「それ沙耶も言ってた」


---


「あ、やっぱ固いんだ」


---


「……」


---


 なんか、

調子が狂う。


---


 でも。


---


 嫌な感じではなかった。


---


「まあ大丈夫だって」


---


 沙耶があっさり言う。


---


「そのうち慣れるし」


---


 その言い方が、

妙に自然だった。


---


 励まそうとしてる感じじゃない。


---


 ただ、

本当にそう思ってる感じ。


---


「……そういうもんか」


---


「そういうもん」


---


 チャイムが鳴る。


---


 先生の声に呼ばれて、立ち上がる。


---


 三人で、なんとなく同じ方向へ歩く。


---


 体育館。


---


 並んで座る。


---


 周りはざわついている。


---


 前では、校長の話が続いている。


---


 声が、遠くに聞こえる。


---


 横を見る。


---


 沙耶はちゃんと前を向いている。


---


 結乃は、

少しだけ沙耶にもたれていた。


---


「眠い」


---


「まだ朝だよ?」


---


「もう疲れた」


---


「早すぎない?」


---


 沙耶が笑う。


---


(……仲いいな)


---


 自然に距離が近い。


---


 なんとなく、

見ていて落ち着く感じがした。


---


 しばらくして、拍手が起こる。


---


 やがて、式が終わる。


---


 人の流れに乗って、教室へ戻る。


---


 席に座る。


---


 少しだけ、ほっとする。


---


「ね」


---


 すぐに顔を上げる。


---


「……なに?」


---


「連絡先、交換しよ?」


---


 少しだけ驚く。


---


「……あ、うん」


---


 三人ともスマホを取り出す。


---


「はい、QR」


---


 沙耶が慣れた手つきで画面を見せる。


---


「あ……待って」


---


 少し焦りながら、

琥珀もアプリを開く。


---


「琥珀ちゃん、

ちょっと慌ててる?」


---


「べ、別に……」


---


 言いながら、

操作を間違えそうになる。


---


「ふふっ」


---


 沙耶が楽しそうに笑った。


---


 その横で。


---


「……遅」


---


 結乃がぼそっと言う。


---


「う、うるさい」


---


「まだ?」


---


「今やってるから……!」


---


 ようやく登録が終わる。


---


「できた……」


---


「おっけー」


---


 沙耶がスマホを操作する。


---


「じゃ、グループ作っとこ」


---


「はや」


---


「絶対あとで楽だから」


---


 慣れた様子で、

沙耶がぽんぽん操作していく。


---


「できたー」


---


 通知が鳴る。


---


 画面を見る。


---


『最強組』


---


「……」


---


「……」


---


 琥珀と結乃が、

同時に画面を見る。


---


「ダサ」


---


 結乃が即答した。


---


「えー!?」


---


 沙耶が笑う。


---


「かっこいいじゃん!」


---


「どこが」


---


「なんか強そうだし」


---


「小学生かよ」


---


「ひど」


---


 沙耶は楽しそうに頬を膨らませる。


---


「琥珀ちゃんはどう思う?」


---


「えっ」


---


 急に振られる。


---


「う、うーん……」


---


 反応に困る。


---


「ほら」


---


 結乃がすぐ言う。


---


「琥珀も困ってる」


---


「えぇー……」


---


 沙耶が少し考え込む。


---


「じゃあ……」


---


 スマホを操作する。


---


 通知が変わる。


---


『コサユ』


---


「……?」


---


「琥珀の『コ』、

沙耶の『サ』、

結乃の『ユ』!」


---


 沙耶がちょっと得意げに言う。


---


「そのまんまじゃん」


---


「分かりやすいの大事」


---


 結乃は少しだけ画面を見る。


---


「……まあ、

さっきよりはマシ」


---


「ほんと?」


---


「うん」


---


 沙耶が嬉しそうに笑う。


---


「じゃあ決定ね」


---


 そのやり取りを見ながら、

琥珀は小さく息を吐いた。


---


 騒がしくて。


---


 距離も近くて。


---


 調子は狂う。


---


 でも。


---


 思っていたより、

悪くなかった。

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