表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
goodbye MR ライディ  作者: 富永 真一
1/27

先読み


 今では、“先読み”という生業をしている俺がまだ若い頃の話だ。その頃は無名の大学を何とか四年で卒業してさ、なんとか無名の地方銀行に就職することができたんだ。そこでであったある顧客との交流が、後に俺に“先読み”の力を授けてくれたことになったんだ。


“先読み”って何かって? 少し先の未来のことが分かったり、それを知らせてくれる人の心の声みたいな何かが分かる人間のことを、その界隈では“先読み”って呼ぶんだ。まぁ、ちょっと聴いてみるかい?


薄っすらとし白みがかった視界の中央に白い螺旋階段が見える。

俺は砂の上に立っている―。


足が重くて、思うように歩けない。自分はいつからここを歩いているのかと考えたとき、オレは自分が夢の中にいることに気づいた。また自分は砂漠を歩いている、そう思った途端に足が砂に深くめり込んだ。青い空に大きな太陽、その太陽に照らされた眩しい白い砂。ぼんやりとしていた世界が徐々に輪郭を持っていく。

またいつもの夢を見ている―。


オレは改めて遠くに見えている螺旋階段に目を凝らした。天高くそびえる螺旋階段を、誰かが上っていくのが見える。オレもその階段へ駆けようとしたが、数歩走り出しただけで砂に足を取られて前に倒れ、両膝と両手をついた。立ち上がってまた走る。何かに急かされるように駆けた。何度も転びながら夢が覚めないことを祈った。青かった空も暑かった太陽も全てがぼんやりとし始めた。


早く―。

早く行かなければ―。


そう思った次の瞬間、オレは螺旋階段の下にいた。

やはりあの人だったか―。


あの老人が、自分の踏み出す足元を用心深く確しかめながら、一段、また一段、一歩、また一歩と、空へと続く階段を上っている。その姿を見上げながら、オレはその時、目が覚めた。目覚めてもなお目を閉じているオレの瞼に、あの老人の無垢な笑顔が写ったままだった。

  

                つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ