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後日譚

 ――クリストロフ王国西部の端っこ。大きな河に水を汲みに来ていた耳の尖ったエルフの女が1人、河の傍で倒れている1人の男を発見した。


 女は、鎧を着たその男を発見するや否や走り出した。女は、緑色の髪の毛を揺らしながら……一緒にいた他の仲間達に報告しに行った。


「……ムー君! 大変! 河の傍で男の人が倒れてる!」


 エルフの女の一言で、一緒に来ていた男が、河へ走りだす。彼の後を追うように他にいた女達も走り出した。


 彼らは、河につくと……エルフの女が指さす方を見て、驚いた。


「あれは……」


 男が、そう言うと……他の女達も同じように驚いた様子で、男の事を見ていた……。彼らは、しばらくの間固まっていたが……男が歩き始めて、倒れている男の元へやって来て、彼の様子を見ていた。


 そして……倒れている男のポケットの中に手を突っこみ、男は中に何か持ち物がないかを確認した。すると――倒れている男のポケットの中には、何かのバッジのようなものが入っており、男はそれを見つけるや否や、いつの間にか自分の傍に来ていた仲間達にそれを見せた。


「……クリーフ? って、言うのですわね……。この人……」


 女が、そう言うと……男達は、河の傍で倒れている謎の男――クリーフの事をしばらくの間見つめていた……。


                     *


 ――スターバムとエカテリーナが誓い合ったより後、クリストロフ王国に1人の男がやって来ていた。


「ようやくやって来たか。いやぁ、人界領にやって来るのも久しぶりであったかな……」


 と、転移魔法陣の上でかったるそうに立っていた男に王城の門番をやっていた騎士達が、警戒した様子で告げる。


「止まれ! 貴様! 魔族だな! ここは人界領だぞ! 南北条約を忘れたか!」


 しかし、魔法陣の上に立っていた男は、告げた。


「……南北条約? あぁ、知ってるさ。なんたってそれは……この俺が、締結した条約なんだからな」


「締結だと……? 貴様、舐めているのか? そんな冗談が通じるとでも……」


 と、1人の騎士が腹を立てて、剣を抜こうとしていると、もう1人の騎士がこの男の正体について感づいた様子で告げてきた。


「……まっ、待て! もしかしてこの方は……」


「あぁ? なんだよ?」


 イライラしながら剣を今にも抜こうとしている騎士に対して、もう1人の騎士は告げた。


「……まっ、魔王!?」


 門番の男達は、目の前で突然転移してきた人物の正体が魔王である事を知り、すぐに要件を聞くや否や門を開ける事にした。そして、国王のいる部屋まで騎士達は魔王を丁寧に案内した。


 国王と魔王は、会談用の部屋の中で一緒に話をした。


「……久しいな。クリストロフ……」


「ふっ、誰かと思えば……魔族の……。何の用じゃ? わしは今、忙しいのじゃ」


「いつも忙しいと言っているわりには、暇そうに見えるがな……」


 魔王アブシエードと国王クリストロフは、まるで久しぶりに会った腐れ縁同士のような再会と挨拶を交わしながらお互いにお茶を飲んでいた。


 いつものクリストロフ国王ならこれに対して「たわけ」とか「魔族如きが……」などという捨て台詞を吐き捨てるものだが、この日の国王は、エカテリーナやスターバムの騒動があって本当に機嫌が悪かった。そのため、アブシエードに対しても何も言っては来なかった。


 それを見ていたアブシエードもクリストロフの気持ちを察し、あえてそれ以上は何も言わなかった。2人は、普段ならお互いに罵り合い……そして、最後にようやく本題を話し合うのが、いつもの会談の流れなのだが、この日は……クリストロフの機嫌が少し悪かった事もあり、すぐに本題となった。


 アブシエードは、告げた。


「……単刀直入に言おう! クリストロフよ……アンタの国の人間達が、ここ最近俺の国の領土に不法侵入し過ぎている! これは、お前の職務怠慢があって起こった事なんじゃないのか? どうなんだ?」


 アブシエードは、真正面から一切言葉を濁したりせずにはっきりとモノを言う王だ。彼は、自分の国の民の命がかかっている状況で、絶対に物怖じはしない。はっきりと要件を伝えるのが、アブシエードの外交の仕方だった。


 それに対して、クリストロフは告げた。


「……それについては、ワシの方でも手を打ってある。騎士達による国内の警備をより厳重なものとし、今後はないように努める」


 しかし、それに対してアブシエードは激怒した。


「……努めるだと!? お前の国の騎士達が俺の国に侵入してきているという報告もある! そんな状況で……警備の強化だと? 笑わせる……。アンタの所の騎士達は、どうなっているんだ? 南北条約を結んだはずだ! それによれば……互いに不用意に関わる事も互いの民族を殺す事も許さないと……そうしているはずだ! 先代やその前の国王は、しっかりとこの条約を守った。奴らとは、戦った事があったが、しかし、指導者としてしっかりしていた。なのに……貴方は、なぜこうも……条約を簡単に破ろうとする!」


 アブシエードの魂の叫びに対し、クリストロフは面倒くさそうに告げるのだった。


「……西部の方は、まだ開拓が進んでおらず、ワシらにもまだ把握しきれていない部分が多数存在する。そうした犯罪者の取り締まり、西部の開拓……それに加えて、魔族領に対する我が国の見落としがあったのかもしれぬ。今後は、ないように努めていくつもりだ」


「具体的には……?」


 アブシエードは、クリストロフを詰めるが……国王が言った言葉は――。


「……検討中だ」


 以降も、アブシエードとクリストロフの会談は、続けられたが……しかし、一向にして話し合いは、進まなかった。


 アブシエードは、内心焦りを感じていた。彼は、人と魔族の戦争が起こってしまうのではないか? それを止めるためにクリストロフと話し合おうとしてやって来たのだが……この状況では、話し合いは全く進行しなかった。


 ――クリストロフめ……貴様、本当に……俺の民を……潰すつもりか?


 アブシエードは、内心そう思いつつ、会談の最後に告げた。


「……クリストロフよ! 俺は、できればお前達と戦争をしたくない。今日は、そこまで話し合いは進まなかったが、明日以降もここへ来る。お前の先代やその前の国王達がそうしたように……我々も今生きている民達の平和と安全の為に……尽力しよう! 共に話合えば、きっと見えてくるはずだ」


 ――今は、こう言う他ない。……今すぐに成果が出ずとも……何度も話をすれば、きっと……クリストロフも分かってくれるはずだ。奴とて、一国の主なのだからな……。


 だが、それに対するクリストロフからの返答はなかった。彼は、そんな事よりも早くアブシエードに出て行って欲したげにお茶を飲んでいるだけであった。アブシエードを外まで見送るなどと言う事も決してしなかった。


 魔王アブシエードは、そんな事を思いつつ、会談を終わりにし王城から出て行く事にした。帰りは、王城にある馬車に乗って、人界領の特別なホテルで一泊する事が決まっていたので、アブシエードは部屋から出て行く間際に国王に別れを言った後、馬車に乗りに行き、人界領を移動していた。


 彼は、移動中に人界領の景色を眺めていた。大きな畑……大きな建物。教会に、人で賑わう市場……。


 ――美しい。……やはり、人間というのも良いものだ。……国は、違えど……いつかは敵国同士ではなく対等にやりとりのできる国同士としてクリストロフとも向き合いたいものだ……。


 人間達の世界に少しだけ目を輝かせていたアブシエードだったが、その時だった。突然、彼の乗っていた馬車が停止してしまう。


「……どうしたのだ?」


 アブシエードが、尋ねると……馬車を運転していた男がアブシエードに告げた。


「いやぁ、すいません! ちょっと車輪の調子が良くねぇみたいだ! ちょっと見てくらぁ!」


 そう言って操縦者が席を立ち、馬車の修理に向かった――はずだったのだが、少ししてアブシエードは自分の回りが不気味な位に静かになった事に違和感を感じた。



「おい! どうした! 修理しているのではないのか!?」


 そう思って、彼が馬車のドアを開けようとした次の瞬間、まるで狙っていたかのように馬車の中が強く光り出す。


「……図られたか!?」


 その僅か一瞬の出来事に魔王でさえも反応する事はできず、彼はそのまま強い光の中に飲み込まれていき、やがて馬車は……凄まじい大爆発を起こして、アブシエード共々炎の中に消えていった――。



 これが……魔王アブシエード殺害事件。……この事件の犯人について、人界領側の捜査では全くの不明とされた。


 全てが謎に包まれたこの事件であったが、しかし1つだけ分かっている事がある。それは、この事件をきっかけに魔族の穏健派側であった魔王アブシエードが倒れた事により、魔族の里内での過激派の勢力が増し、本格的に人と魔族の戦争が……始まろうとしている事だった……。

 と、いうわけで皆さん……こんにちは! 作者の上野蒼良です! 今回も第九章を最後まで読んでくださり、ありがとうございます! ここまで書けたのも読者の皆さんのおかげです!


 さて、第九章はいかがでしたでしょうか? 早いものですね。このお話は、前にも書いた通り……スターバムが主役のストーリーです。ここまで書いて来て初めて、ジャンゴ以外の人を主役においた話を書くなぁと思いつつ、しかしスターバムについてのストーリーを書くのは、楽しかったです。


 ちなみにこの章の小話としては、旅行期間と重なっていたために……スマホで執筆する事が多かったです。そのため、誤字が多いなと後から読んで感じる部分が多く、見つけ次第直していました。


 皆さんも見つけたら誤字報告をして下さるとうれしいです。


 さて、そんなわけで……とうとう第九章まで終わってしまったわけですが……ここまで楽しめていますでしょうか? 今回のお話は、主人公が全然出てこない話と言う事で……正直に言いますと閲覧数が下がってしまうのではないかと……思っていたのですが、思いのほかそうでもなく、皆さん……僕と同じでスターバム好きなんですね(笑)


 僕もスターバム大好きです。この作品を書いていて一番好きなキャラクターかもしれません。今回、彼の過去と言う事で……実は、これまで大雑把としか決めていなかったスターバムの設定を墓から掘り起こし、詳細な部分を決めていきました。


 元々、スターバムは、早い段階で退場or没落させて、ジャンゴ達に成敗される予定のキャラだったのですが……いつだったか……エカテリーナ姫とのやりとりを書いている時に「コイツ、思いのほか……面白いかも!?」となったのが、きっかけで現在まで活躍するに至っております。


 そのため、前半に読んだ印象と多少異なる部分が、あるかもしれません。しかし、まぁ……まさかここで没設定としてこの作品を書く前に決めていたスターバムの「恋人の為に戦う勇者」っていう設定を墓から掘り起こして、それをより詳細に深掘りして書く事になるとは、思いませんでした。


 スターバムのイメージとしては、最初の頃は厭味ったらしい感じのキャラクター像で考えていて……それこそ、当てはめるとしたら……よくあるなろう系作品のかませにされる勇者みたいなのを想像していたのですが……エカテリーナとのやりとりやジャンゴの心臓を狙いだした辺りから私の中でのイメージが大きく変わっていきました。


 それこそ、現在のこのキャラクターに対するイメージは、『ガン〇ムOO』のグラ〇ムみたいなネタキャラでありつつ『人造人間キカイダー』に登場するハカ〇ダーのような主人公の絶対的ライバルキャラでもあると思っていて、同時に今回、スターバム編を書くにあたってイメージしたのが『仮面〇イダー龍〇』の秋山蓮こと、仮面〇イダーナイ〇です。特にスターバムの過去を描く上で、このキャラクターの事を強く思い浮かべていました。


 ……という、なんとも変な経緯を経て、現在に至るキャラなのであります。ただのかませになると思いきや……ネタキャラになりそうになって、かと思えば……主人公のライバル。そして、3人目の主人公です。


 まぁ、この作品を群像劇にしようとなったのも実は、最近の事なので……こういうキャラが出てくる事も仕方ない事なのかもしれませんが……。


 元々、本作の結末や展開については、最初に大きく決めてはいるのですが……私の性格上、決められた道の通りに進みたくない主義でして……どうしても、キャラクターを描いているうちに……いや、こうなる方が面白くないか? とか、こうするのが自然な流れか……とか、そう言う事ばかり考えてしまって、私の場合、最初に作ったプロットというのが後になると、ただの紙切れになってしまうというのは、よくある事なのです。(勿論、そうじゃない作者さんも多いです)


 まぁ、あれです。作者の人、そこまで考えてないよ……というのは、まさしく私の事です。(すいません)



 そんなこんなで、墓から掘り起こされて、色々な要素が悪魔合体して凄い事になってしまっている私の推しキャラスターバムに関するあとがきでした。


 ここまで読んでくださった読者の皆さん、いつも応援ありがとうございます! 皆さんのおかげで、今日まで執筆を続ける事ができています。これからもまだまだ続いていきますので、今後とも応援よろしくお願いします!


 さて、次回ですが……『それぞれの戦い編』となります。


 物語もそろそろ終わりへ向かっていく中、3人の主人公達の戦う理由も定まって、これから! という感じになって来てますね。いやぁ、もうここまで来ているんですねぇ……。時の流れが早い!


 そんなこんなで、また次の章で会いましょう! サラダバー!

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