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迫り来る運命編⑥

 ――俺達は、魔王城に飛ばされた。クリストロフ王国に攫われたマリアを救うために北東の方角にある王都を目指して旅をしていた俺達だったが、旅の途中で俺達は、魔王へと変貌してしまったエンジェルと出会い、奴に敗北した俺達は、再び魔族の里に戻されてしまったのだ。


 早く救いに行かなきゃいけないのに……マリアを……。こうしている間にもアイツは今、何をされているのか……くそ……。


 俺=佐村光矢は、屈辱的な思いを胸に抱いたまま魔王城の地下牢獄へと送還された。ルリィ達と旅をしていた時は、あんなに遠く感じた距離も……一瞬で飛び終えていた。順番にドラゴンから降ろされた俺達は、牢獄の中へと移される。


 全員が入り終えると……牢獄に鍵がかけられる。見張りの魔族達は、地下牢の入口の前へと歩いて行く。俺は、そんな魔族の様子を見ると、地面を蹴って舌打ちをした。


「くそっ……」


 もう少しで、マリアの所まで行けると思っていた。なのに……どうして、こんな事になってしまったのか? エンジェルが魔王になった事、そして人間と魔族による戦争が始まってしまった事……。俺には、突然の事過ぎて理解が出来なかった。


 すると、そんな俺にルリィが告げた。


「……殿方様。……大丈夫ですか?」


「大丈夫……ではないな。マリアとの距離が、一気に遠ざかってしまった。……今までの努力が全部水の泡になってしまったんだ。悔しいさ……」


 そんな事を言っていると、その時だった――。


「あれ……? もしかして、その声……」


 聞き覚えのある女の子の声だった。俺が、牢獄の奥の方をジーっと見つめていると、影に隠れて奥から顔を出したのは……。


「エッタ……?」


 エンジェルといつも一緒にいた少女――エッタ。彼女の姿が、あった。その衝撃的な再会に俺とルリィ、サレサ、更にはスターバムも目を大きく見開いて驚いた。


「……どうして、ここにエッタさんが? 貴方は、エンジェルと一緒だったはず……」


 サレサが、そう告げるとエッタは――。


「……エンジェル?」


 と、一瞬だけキョトンとした様子で俺達の事を見つめ返して、やがて少し時間が経ってから告げた。


「……あぁ。アっ、アイくんとは……ちょっとその……色々あって……」


「……?」


 エッタの様子が、少し変だった。俺は、尋ねてみる事にした。


「……どうしたんだ? 何かあったのか?」


「はい……。実は、その……」


 俺達は、エッタの口からエンジェルが、魔王になった経緯についてを聞いた。2人で一緒にこの国を出ようとした事。サンダンス・キッドとの出会い。新しい力の代償。……そして、エンジェルの決意。


 エッタは、語った……。


「……アイくんは、変わってしまいました。魔王となって……あの即位の日の後、彼は……創造の知恵の力で、”偽りの記憶”を作り出し、それを配下の魔族達に与えました。彼は、自分こそが魔王にふさわしいと……そう言って、自らの権力を主張するかの如く、抵抗する穏健派の魔族達を次々と打ち破り、魔族達の人間に対する敵対意識を強めました……。そして彼は、魔族達との戦いの中で自分の体を魔獣へと変貌させていき、とうとう……自分の持つ魔力まで人間のモノじゃなくなってしまいました。彼は、もう……私の知るアイくんではありません。……ある日、彼は私を牢獄へ追放しました。役に立たない者は、必要ないと言って……私を……。彼は、変わってしまったのです。身も心も魔王になってしまったんです。それもこれも……あのサンダンスって言う人と出会ってから……」


「サンダンス……」


 あの男、確かに……得体のしれない男だった。……だが、俺は不安そうに語ってくれたエッタに対し、告げた。


「……アンタが思っているような事は、ないと思うぜ」


「え……?」


「……アイツと戦って分かったが、アイツは……前と変わらない。確かに記憶を失くしているが、それでも……何も変わらない。相変わらず、アンタの為に戦おうって気持ちが、節々から伝わって来る。……きっと、アンタをここへ隠ぺいしたのも……アイツなりの考えあっての事じゃないか? 他人の記憶から自分が抜け落ちるという代償があるんだから……自分の前で惚れた女が、自分を忘れて行くなんて……そりゃあ、耐えられんないだろうしな……」


 俺の言葉にエッタは、顔を上げた。近くにいたルリィやサレサもコクコク頷いてくれている。


「……確かに。前世で、ろくに徳を積んでいない君にしては、良い事を言う……」


 スターバムもどうしてだか、納得してくれている。……上から目線な所は、ムカつくけど……。と、思っているとその時だった。



「……やはり、素敵な方ですね……。サム・コーヤ」


 という声と共にパーカーを深く被っていた1人の女が、そう呟きながらパーカーを脱ごうとしている。いや、というより……この声、何処かで……。


 と、その時だった。脱いだパーカーから出てきたその横顔に俺は、見覚えがあった。というよりも……その女性こそ……。


「……アンタ、王族の……」


 確か、名前は……と、思い出そうとしていると、女は告げてきた。


「……お久しぶりでございますわ。サム・コーヤ。わたくしです。エカテリーナです」


 そこに立っていたのは、初めてこの世界に転移してきた時、俺に話しかけてくれた美しきお姫様。……エカテリーナさんだった。


「え!? えぇ! えっ、えっ……えぇ!? エカテリーナ様!?」


 この場で一番驚いていたのは、シーフェだった。当たり前だ。この世界の人間であるシーフェにとっては、物凄く有名な人物なはずだ。ルリィもサレサも目を丸くしていたが、シーフェの驚きっぷりは、尋常じゃなかった。対してスターバムは、不敵な笑みを浮かべているだけで……つまらない反応をしている。


 俺の方も、急な再会に少しだけ驚いた。


「アンタ……どうしてここに……。王族のはずだろ?」


 すると、対するエカテリーナさんは、俺の事を見つめながら告げた。


「……それは、こっちのセリフですわ! 生きていただなんて……いえ、しかし……信じておりましたわ」


 そう言うと、エカテリーナさんはいきなり俺に抱き着くように傍へ寄って来た。そんな彼女の態度に俺は、何が起きているのか? わけが分からずにいた。……近くでルリィやサレサ、シーフェの視線が鋭いような気がする。気のせいって事にしよう。


 エカテリーナさんは、告げた。


「……ようやく会えましたわ。貴方と……。きっと、生きていると信じておりました……」


 そんな言葉を言ってくれて、俺も少しばかり浮かれた気持ちになっていると、今度はもう1人のパーカーで顔が隠れた男? の方が、告げてきたのだった。


「……全く、困った男だな。君は……。女性関係にだらしのない男というのは……最後に全てを失う人間だぞ? ジャンゴくん……」


「その声……まさか!?」


 もう1人のパーカーの男が、頭に被せられたパーカーを脱いで正体を現した。そこにいたのは――。




「……アブシエード!?」


 先代魔王アブシエード。奴の姿がそこには、あった。まさかの再会に驚く俺だったが……この後、彼らから俺は、衝撃の真実が明らかにされるのであった……。




 ――To be Continued.


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