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俺はJKを助けたいのか、それとも助けられたいのか  作者: 酉 真菜
第2章:人類のため働きつづける世界
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第21話:科学者もAIもが、正義の名のもとに-slight hero,slight hope-

 あの後、ジックとどれぐらい話しただろうか。


『私は、人造人間を作りました……』


 俺がジックに明かしたとき、特にジックは驚くこともなかった。

 ただ人造人間をどうやって作ったのか、どこで苦労したのかなど研究の話で、かなり盛り上がったことを覚えている。

 ジックと話していると、勝手に口が動くように話がスラスラと出てきた。

 さらに、ジックは自分の魔法研究についての話、ここに収容されている人の話についていろいろ話してくれた。

 ジックはどうやらほかの人の偉業を深く理解しているらしい。

 彼がどの時代の人なのかは教えてくれなかったが、きっと知らない技術もあるはずなのにそれらを一から教えてくれた。

 彼の穏やかな声、分かりやすい話し方は、どこか神野先生を思い起こさせた。

 最近、神野先生には会っていなかったが、どうしているだろうか。

 ここから解放されてあの病院に戻れたら、また神野先生に会いに行こう。

 そんなことをジックと話しながら、俺はふと考えるのだった。


 どのくらいジックと話し込んでいただろうか。突然、排水口の中の声の通りが悪くなった。

 ジックのことを呼んでも、返事がない。

 俺は排水口の近くでまたジックとつながるときを待ち続けるのだった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ああ、ヒマだ。何にもやることがない。

 病院で忙しかった日々が何となく恋しく感じた。

 ガラスの外側では、時折看守ロボットが通るくらいで変化はない。

 この建物は吹き抜けになっている。

 俺の部屋の反対側にもたくさんの部屋とたくさんの人が収容されていた。

 最初はやることもなく、じっくり見物してみたが、ほぼすべての人がただ部屋の片隅に座っているだけだった。

 なにも変化がない。退屈という拷問のようだ。

 俺は、すぐに興味がなくなってほかの人と同様、部屋の片隅で座り込むのだった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 看守ロボットが歩いてくる。

 俺は、部屋の片隅でそのロボットを見ていた。

 すると、俺の部屋の前で立ち止まった。

 部屋のガラスの端が扉のように開いた。

 俺は目をこすってみる。どうやら本当のことらしい。

 看守ロボットは俺に話しかけた。


「湊 松本 誠司さん、こちらに来てください」


 どういうことだろうか。やっと解放してくれるのだろうか。

 俺は、少し希望を持ちながら、看守ロボットの方に近づいた。

 俺は部屋を出る。

 どうか、あの3人と一緒にこのまま帰還船に乗せてもらえますように……。

 俺は心の中で祈る。


「湊 松本 誠司さん、ついてきなさい」


「はい」


 看守ロボットはどんどん歩いていく。

 たくさんの部屋の前を通っていく。

 こちらを見る囚人は少なく、生きているのか死んでいるのかわからない様子で部屋の隅に座っている方が多かった。

 どこもかしこも、同じような囚人ばかりだ。うんざりしてしまう。

 ここから出る前に、ジックに会いたかったなあ。

 看守ロボットと俺は、途中の渡り廊下を渡って、反対側に向かう。

 俺たちはエレベーターに乗り込んだ。下に向かっている。

 これで、帰れる!エレベーターの扉が開いた。

 目の前には、劇場の扉のような分厚そうな扉があった。ここが出口だろうか。

 看守ロボットは扉の取っ手に手をかけた。


 扉が開かれる!そこは……白い会議室のような場所だった。

 長い机があり、その先に大きな画面があった。

 画面には何も映っていない。ここは……帰還船ではなさそうだ。

 画面の中からぼんやりとなにか人影が現れた。

 その人影はスキンヘッドで、灰色の肌をしていた。

 まるで3Dモデルのようだ。この向こう側には、人がいるのだろうか。それとも、AIだろうか。


「湊 松本 誠司さん。私は、ラッセルと呼ばれています。ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所 所長です」


「はあ。所長さんがどうして……」


「これからあなたの収容理由やこの収容所の役割について説明します」


「はあ……」


「あなたは人造人間を作りました。それを自認していることも確認済みです」


 そうか、あの俺の昔話をしていた時、こいつらが出てきたのは自認させたかったのか。


「未来予測によると、あなたの人造人間技術は大規模な第四次世界大戦の要因になります」


「そんなまさか……」


「ほかの主要因はありますが、大戦が泥沼化する一因となることは確かです」


「そんな一因ぐらいで……」


「この収容所の役割は文明滅亡の危機を回避するのが目的です。滅亡の要因は取り除くのが最適だと考えます」


「最適って……」


 3人の安否が俺の頭をよぎった。


「真菜、みこ、英利羽は?今、3人はどうしてる?」


「現在、人造人間は別の場所に収容されています」


 人造人間、人造人間って、彼女らはちゃんと名前があるのに……。

 淡々と事実だけを伝えていく所長が、むかついてきたのだった。


「次にあなたの囚人識別番号を伝えます。あなたは、No.C34M20370817です。こちらの番号は今後呼び出しの際に使われるので、覚えておいてください」


 覚えておいてくださいって、こんな長い番号をすぐに覚えられっかよ


「最後に、あなたの処遇について伝えます。ここに来た囚人の処遇は全部で3つあります。関連事項消去、関連事項消去+処刑、歴史からの完全抹消のいずれかです」


 どういうことだ?それは、つまり……


「つまり、俺はもうあの時代には戻れないのか?」


「いいえ。関連事項消去処遇の方は、関連事項に関して事実や設備の消去と、当人の関連する記憶の消去の後、解放されることがあります」


 普通には戻れないということなのか?どういうことだ?


「歴史からの完全抹消ってどういうことだ?」


「歴史からの完全抹消とは、囚人の存在自体を世界から抹消します。そのため、囚人自体はこの世界に存在しなかったことになります」


 なんてことだ。どういうことなんだ。

 俺はもう普通にはあの日々に戻れないのか。


「あなたの場合、状況が複雑であるため、現在計算中です。処遇については追ってお知らせします」


 なんで刑罰がそんなにも少ないんだ。ただの懲役刑とか罰金刑とか存在しないのか。

 なんでこんな未来なのに、あんまりなことが多いんだ。

 3人についても、人間扱いしてないようじゃないか。

 あんな部屋で過ごさせて、最後は3つの最悪の選択肢しかないなんて……。


「どうなってるんだ。なんでこんな未来なのに、人権が守られていないんだ。なんで普通に人間らしい生活を送らせてくれないんだ。なんでこんなことにならなきゃいけないんだ」


「私たちは、世界で一番自由と人権を重んじた機関です。あなた方の自由と人権は十分に守られています」


 これで、世界一だと?どういうことだ。

 俺の処遇だって3つしかないというのに……。

 つまりどんなによくても、関連事項消去だってことだ。

 ……ということは、あの3人はどうなるんだ?


「No.C34M20370817、終了です。部屋に戻りなさい」


 看守ロボットが俺に近づいてくる。

 俺は所長に向かって叫んだ。


「あの3人はどうなる?どうするつもりだ!俺はどうなってもいいから、あの3人だけは、3人だけは……」


 俺の腕を看守はつかみ、会議室から引きずりだそうとする。

 俺は必死に抵抗した。


「おい、所長!聞いてんだよ。話せよ。おい!」


 画面に映し出された所長はだんだんと薄くなっていった。

 俺は看守ロボットを振り払おうと暴れてみる。

 しかし、このひょろ長い看守ロボットは思ったよりも力が強かった。

 俺は叫ぶことしかできずに、この会議室を出た。

 所長は何も答えてくれることはなかった。


極秘調査報告書 21

ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所における処遇

ラッセル所長によって計算された未来予測をもとに歴史上の危険人物を割り出す。その危険度を元に、基本的には処遇が決まる。影響力、その影響のリスクなど様々な因子を総合して、危険度は割り出される。収容される人物と処遇に関して、収容所顧問から助言と承認をもらうと、護送・警備ロボットらが出動する。

(ツーヨルゥ協定世界調整機構ミスリム山脈収容所所蔵)

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