33 インフォメーションボード
自室のキッチンで夕飯を作り始める。
『何作るんだ?』
「うーん、お肉焼いたやつかな」
『ふーん』
ロウはあまり興味がないようだ。頭の上に乗って様子を見ている。
まずはアイテムボックスから葉物野菜を取り出し、軽く水洗いして手でちぎり、冷蔵庫のブロッコリー適当なサイズに小分けする。片手鍋にお湯を沸かし、野菜を放り込んで下茹でし、取り出して水を切る。
続けてアイテムボックスから肉屋で買った朝肉を取り出す。見た目は完全に鶏肉だ。
入手したばかりの包丁とフライパンをがあるので、ようやくまともな料理が作れるようになったとウキウキしながら肉を切り分けようとすると、あることに気づいた。
「……まな板がない」
やってしまった。はぁと深くため息をつく。
忘れないうちに冷蔵庫に「まな板」とメモを放り込んで発注。そういえば食器も一通り必要だ。
あとから発注するのも面倒なので、平皿や深皿、コップやスプーンなどを、多めにまとめて発注する。
ペコペコのお腹はまな板の受け取りを待ってはくれないので、仕方なくフライパンを裏返し、紙を敷いてまな板代わりにすることにした。
肉を乗せて包丁でやや大きめに切りわける。肉に塩を振り、もみこんで下味をつける。
肉を一旦避けて、フライパンを軽く洗い、フライパンをコンロの火にかける。肉を入れて焼く。
ジュウジュウと音を立てて肉から油が出てきた。肉の色が変わって火が通ったところで少し味見をすると、何とも言えないクセがあった。
クッキー作りで使ったオーリヤの実が少し余っていたので、すり潰してフライパンに入れる。
香りにつられてレイがポケットから顔を出す。
『甘い物?』
「甘くはないなぁ」
『そっか』
お菓子ではないことを確認したら、早々に引っ込んでしまった。
オレンジの爽やかな香りが肉の焼ける香りと相まって、食欲をそそるいい匂いが漂ってくる。
しばらく焼いて、オレンジ風味のチキンステーキが出来上がった。
続けて下茹でした野菜を肉と一緒に炒めようとしたら、ロウが野菜をつまみ食いしていた。
……なんだかハムスターみたい。ちょっと可愛い。
野菜は食べるようなので、ロウとレイの分をとりわける。
残った野菜をフライパンに入れて肉と一緒に軽く炒めて、完成だ。
「できたー」
今日の夕飯はオレンジ風味のチキンステーキ・野菜添えだ。
さわやかな香りが食欲をそそる。さっそく食べよう。
「頂きます! がぶっ! …………おお、美味しい」
チキンステーキをもぐもぐと頬張ると、ジューシーな肉汁が口の中いっぱいに広がる。お肉美味しい。
添えた葉物野菜は、キャベツのような味がした。野菜も美味しい。
パンと一緒に食べながら、もう少し食生活を大事にしていきたいな、としみじみ実感する。
早めに屋上菜園の野菜バリエーションを増やしたいところだ。そして冷蔵庫にチャージできる食材の選択肢を増やそう。
食事を終えてお腹が満たされたところで、魔力量とスキルの状態を確認することにした。
インフォメーションボードに向かう。
インフォメーションボードは、びっくり●ンキーのメニューのように、両開きの扉がついていて、中に白いパネルが収まっている。壁際に設置されたいるため、ぱっと見はテレビやモニターのパネルのようだ。
白い不透明な画面をのぞき込むと、ぼんやりとした自分の姿が反射で映った。その上にジワリ、ジワリと文字が描かれていく。
最初の画面には、マンション内のお知らせの情報が表示された。不審者情報や、ルームクリーニングの記録などが表示されている。
画面を触ると表示が切り替わった。タッチパネル式のようだ。
利用者情報として様々な情報が表示され、冷蔵庫の利用明細も記録されていた。
……後でちゃんと払わないとな。
月末払いの明細内容を確認すると、謎の卵は金額が『‐』となっているが、それ以外の項目は銀貨や銅貨でどうにかなりそうな額だったので安心した。
再び画面をタップすると、私の個人情報が表示された。
「ええと、なになに……。名前、年齢、身長、体重、視力、聴力……って健康診断か!」
その日の健康状態もわかるみたいだ。
数日とはいえパンと塩とブロッコリー生活をしていたせいか、体重が少し落ちていた。解せぬ。
幸いなことに、見た人の性格や、思っていることが反映される、という物ではなさそうだ。
「レベルとスキル、か。思った以上に半端ないな……」
・レベル:3
・体 力:80/300(+300000補正)
・魔 力:180/300(+300000補正)
・スキル:逃走、健脚、幸運、コミュニケーション、アイテムボックス、方便、怠惰、料理。
・加 護:風神の加護、水神の加護、闇神の加護
「補正……って、何これ。30万? 私ちょっと頭抱えちゃうんだけど……」
『強いならいいんじゃね?』
「そういうわけにもいかないかなぁ」
異世界の人間だからか、加護の効果だからか不明だが、体力と魔力に桁外れの補正値がかかっていた。
方便とか怠惰とか謎のスキルもいつの間にか取得していたようだ。いつ取得したのか心当たりがない。
思い出せないなぁと記憶をたどっていると、体力と魔力の表示が更新された。どうやら、徐々に回復しているようだ。夕飯を食べたからだろうか。
「補正かかってるんじゃ、魔力枯渇させるの無理じゃないかな」
『そうかもな。頑張れ』
「はー。いっそのこと、一気魔力使うような凄い魔法を、こう、ドーンと使えればいいのに」
『たぶん街が一つ消し飛ぶぞ』
「流石にそれは困るなぁ」
エレベータを使えるようになるための代償が街一つ。流石にそれはやり過ぎだ。
何かいい案がないか考えたが、結局思いつかなかった。
食べ終わった食器を片付けて、シャワーを浴びた。
夜にメティス様と読書会をする約束があったので、2階の図書室に向かった。
「せっかくなら、メティス様にも相談してみよう」
メティス様なら、何かいいアイディアを出してくれるかもしれない。




