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非戦闘員なので逃走スキルで生き延びます~タワマンでスローライフ始めます~  作者: 雪城
第一章 住所不定の転移者

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25 食材の買い出し

靴屋のおじさんに教えられ、広場の向こう側にある市場へ向かう。

途中で適当な小道の角を曲がり、人がいないことを確認。購入した籠の中の服と靴をアイテムボックスに全てしまう。

軽くなった籠は、そのまま買い物籠として活用する。これで心置きなく食材の買い出しができる。


お財布の残りは銀貨2枚と銅貨8枚。服と靴にかなり使ってしまった。

串焼き1本は銅貨2枚だったので、食材は服ほど高くないと信じたい。


先ほどまで痛いほど感じていた不審者を見るような視線は感じない。

紺のワンピース、木布の靴、それから買い物籠のおかげだろうか。街の住民になったかのような気持ちになる。地元の人っぽいよね。

マンションのエントランスにある時計で4時頃を目安に、ユーイさんに共用施設を案内してもらう約束をしている。あまり長い時間買い物ができないので、さくさく買い出しだ。お肉お肉。お魚お魚。葉物野菜。果物果物。


市場に出ると露店のように様々な食材が並んでいた。籠いっぱいに野菜や果物が積んである。

ぐるっと一通り回って目星をつける。お肉コーナーとお魚コーナーもあった。

魚は干物、調味液に漬けられた魚、貝類が中心で、生の魚は見当たらなかった。比較的日持ちする物が売られているのだろうか。

お肉は露店ではなく店舗の軒先に出して売っているようだった。ちょっとした軽食も売っている。匂いに釣られてふらふらと近寄る。


「嬢ちゃん、朝肉のパン包みはどうだい? 銅貨3枚、うまいよ~」

「朝肉?」

「ああ。朝に歯向かう者の肉さね」

「うーん、頂きます」


その略し方はどうなんだ? と思いながらも、怪しい肉のサンドイッチを買う。

見た目は硬めのパンに、焼かれた細切れ肉とソースを挟んだだけのようなものだ。一口かじる。


……あ、美味しい。ほんのりオレンジ風味。


「美味しいですね」

「だろ?」

「朝に歯向かう者って何です?」

「おや、嬢ちゃんは見たことがないのかい? 肉は食べたことあるんだろ?」


今ちょうど食べているので、こくりと頷く。美味しいです。


「これだよこれ」


出店のおじさんが捌く前の肉をひょいと持ち上げる。

異世界の不思議生物らしく、よく見ると硬そうな黒い皮と、魚のような頭をしていて、全体の形と大きさは鶏のようだが、足が太い。


「ああ……さばくの、大変そうですね」


サンドイッチを頬張りながら朝肉が血抜きされる様子を見る。よく考えるとグロ注意だが、思ったより平気だ。魚や肉を切ったことがあるからだろうか。魚を三枚におろすやつは中学校の頃にキャンプ調理でやったことがあるし、お肉は親の手伝いでたまに触る。どちらも手触りが少し苦手だが、ここから見ている分には平気だ。


「家庭で処理するには皮が硬いんだよなぁ。でも、こちとらこれで商売しているからね」


風魔法だろうか。特殊なナイフが光り、ばっさばっさと捌いていく。


「おお!お見事です」

「へへん」


思わずぱちぱちと拍手する。おじさんも得意げな様子だ。


「どうだい? 買っていくかい? 安くしとくよ」

「えーと、それじゃあ、半量って買えますか?」

「ああ。普通のサイズなら1匹で銀貨1枚だから、半量なら銅貨5枚だな。1匹買ってくれるなら、おまけにオーリヤの実もつけよう。そのまま食べてもいいし、臭み消しにしても相性がいいぞ」

「なるほど。じゃ、1匹ください」

「おし、まいど。ちょっと待ってな」


おじさんが銀貨を受け取ると、奥から布が巻かれて紐で縛られた朝肉を1匹持ってくる。


「はいよ、これは今朝処理したやつね。重たいから気を付けるんだよ。水にさらすか、冷たい場所で保存して2日以内に食べな。こっちがおまけね」

「わかりました、ありがとうございます」


朝肉1匹と、オレンジのような香りがする果物2つが手に入った。


「……ところで、何で朝に歯向かう者っていう名前なんですか?」

「ん? そのままの意味だよ。こいつらは明け方になると、やたらと騒ぎ始めてうるさいからな」

「ああ、そういうことですか……」


魚の頭をしているが、なんだか行動は鶏のようだ。


「ありがとうございます」

「おう、気を付けてなー」


お肉売り場を離れる。次は野菜だ。


……確か、かぼちゃの形をした白い野菜がこの辺りの特産だったかな。


探してみるとすぐに見つかった。フォークリフトと書いてある。小玉メロンサイズで1個銅貨2枚。

自販機価格より少しお安いので2つ買う。

キャベツのような葉物野菜もついでに買う。こちらも1個銅貨2枚。

肉と合わせるとめちゃくちゃ重たいので、買って早々アイテムボックスに放りこむ。マジ万能。

適当な果物と野菜を買ったら、手持ちのお金が銅貨5枚になった。


「いやー、使った使った。すっからかんだ」


人の金でする買い物は楽しい、と実感したところで、そろそろ帰らないとまずい時間だった。

あまり遅くなるとユーイに行方不明者扱いされそうな気がする。

街と束の間の別れを惜しみながら、入ってきたのと同じ南門に向かった。

南門には入ってきた時と同様、門番が2人立っている。


……あ、身分証。大丈夫かな?


自分の他に、馬車で街の外に出る人がいるようなので、少しばかり様子を伺う。

どうやら門での人物チェックは入るときだけのようだ。一安心。

特に身分証の提示を止められないようなので、堂々と出る。


南門を出て街道を少し歩く。門からの距離がほどほどになったところで、アイテムボックスからスニーカーを取り出して履き替える。移動するなら、やはりスニーカーのほうが走りやすい。

私はワンピースのすそを掴んで、自宅マンションに向かって10kmの道のりを走り出した。

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