確かめる術はないな
ファータの外れ、国境付近にある建物の中でーーー本国に連絡を取ろうとしたウンブリエルは、急に外が騒がしくなり、外を見ようとして唖然とした。
「ゲリラ豪雨!?」
バケツをひっくり返したかの様な雨音。そして
ドーーンッ!!
と落雷が発生する。
「おい、この天気の影響度合はどれくらい…」
「中止した方がいいレベルかな」
「……」
声をかけた筈の部下に振り返れば、そこにはいるはずのない人物がいた。部下達は全員昏倒しているらしく、床に倒れている。
「ナギ…」
何故お前が?どうして分かった?様々な疑問が浮かぶが、それらの答えが分かっても、現状を解決する事が出来ないのが分かっているので、ウンブリエルはわざわざ問わなかった。代わりに
「俺を殺さない理由はなんだ?」
指揮官である自分を制圧しない理由を問うた。ナギはギロリと睨む。
「本当は八つ裂きにしてやりたいが、確認しなくてはいけない事があるからなーーー私怨を晴らすのは、その後だ」
ナギは杖の先を、ドンッとわざとらしく床に打ちつけた。そして
「…村崎は大地の国に潜伏していたんだな」
「あぁ、そうだ。罪をなすり付けられ、行き場を失っていた時にこちらで保護した」
「保護ねぇ」とナギは皮肉じみた眼差しを向ける。
「大地の国は村崎やアレン…随分と癖のある人物を好むんだな」
「逃避者の最後の砦とでも言ってもらおう」
「吐かせ。村崎に関しては、魔薬かアルカナの内部情報が目当てだろうーーー清流の街にばら撒くよう誘導したのはお前か?」
「さぁな。俺達は村崎を保護した後に、アルカナが破棄し損ねた魔薬を回収しただけだ。それを村崎が勝手にちょろまかして、水の国で事件を起こしただけに過ぎない」
「幇助した者がいる筈だ。じゃなきゃ異世界へ転移できる筈がない」
「村崎が死んだ今、確かめる術はないな」
「…っ!」
ギロリと睨む私に、ウンブリエルは鼻で笑う。
「そんな事より、一体何をした?高位術師を集めたとて、天候をここまで急激に変えるなんて出来ない筈だ」




