交錯編:時間の長さだけでもないわ
お久しぶりですm(__)m
短いですが、更新しました。
それは俺じゃねぇ!!と言いたいところだが、こんな所で責任の所在を言っても意味がない。考えるべき事はただ一つ、危機的状況をどう切り抜けるか、だ。まずはーーー
「状況把握なんてさせるかよーーーおい、目隠ししろ。あと猿轡」
「ムグ…ッ!」
ウンブリエルの指示に側にいた部下が手早く俺の目と口を塞ぐ。視界を塞がれた俺にウンブリエルは淡々と述べた。
「残念ながら、俺はお前らを甘くみない。転移能力は封じている、ナギ程の戦闘力もない、両手両脚も縛っているから大丈夫ーーーだなんて、油断してやらない」
「…」
自分で言ってもなんだが、過剰防衛では?と思うが、ウンブリエルは「馬鹿言うな」と顔を顰めた。そして
「何を背負っているのか自覚しているからこそ、俺もナギも手を抜かないしーーー抜けないんだよ」
そして遠ざかっていく足音を聞いたのだった。
銀世界の中で、そいつは笑っていた。ようやく、と。
「幸運の女神は、誰に微笑むのかしらね?」
恥辱に耐える女王、陰謀を企てる将軍、因習を守る賢者。
そしてーーー因縁に囚われる妖精。
「血は水よりも濃いと言うけれど、遠くの親類より近くの他人と言う場合も、往々にしてあり得るのよね」
「つまりそれは、シルフィードより自分達の方が私を理解しているって言いたいのか?」
「現にそうじゃない?ーーー記憶を失ってからの時間だけでも、シルフィードより私の方が長いはずよ」
なにより、
「時間の長さだけでもないわ。あんたを嵌めるために、私はあんたについて研究もした」
所属、経歴、戦闘姿勢そして思想。戦略を立てる上で必要な情報だ。
「幹部候補生は初期段階で修得させられるーーー少しお勉強したくらいなんかに追いつけられない精度をね」
「…」
その言葉に、私は理解する。あぁ、もう分かっているのか。
「何を背負っているのか自覚しているからこそ、アルカナは手を抜かないし、手を抜けない」
それはあんたも同じでしょう?
「気持ちは分かるわ。私は同じ立場にいたから。けれど立場は私情を含むべきではない」
それは他ならぬ、あんたが一番分かっておりーーー実践しているから。




