交錯編:ど っち付かずの蝙蝠は身を滅ぼすぞ?
『あぁ、ようやく情報の精査が終わってな。奇襲だった為に被害が大きかったが、落とされる爆弾の威力は実はそこまでではないんだ』
「と言っても、死人は——」
『怪我人はいるが、死者はゼロだ。言っただろう?情報の精査が終わったと。空襲だが、落とされた半分以上が——チャフだ』
電波欺瞞紙。その単語を苦々しく言う日向。当然、俺にも思い浮かぶ物がある。
俺は責める様に問うた。
「まさかお前等が所有していたアレとか言わないよな?」
『……』
「おいっ!リヒトシュタールの加工はお前と風見の管轄だろう…っ!?なんでそんな事になってる!!」
『土の国の工場は既に閉鎖してある。原料も全てファータに輸送済みだ。だが…』
裏切り者の存在は否めない、と言外に含む日向。俺は内心で悪態を吐く。
「〜〜っ!ちなみに、さっき言っていた魔法陣の方は!?」
『そっちはおそらく、供給用の物がある筈だ』
「供給用?」
日向の言い方に、俺は首を傾げた。
「まるで2つあるような言い方だな」
『あぁ、遠隔型と言ってな。魔力供給用と供給先つまり発動用があって、発動用魔法陣内で魔法が展開される』
「…ちなみに、発動用が何処にあるかは分かっているのか?」
俺の問いに、日向は「あぁ…」と落胆しながら言ったのだった。
「行く前に自分で言っただろう?狙いはアルカナだと」
事は急を要した。ラプライアスの元からファータへ移動した私は、その様子に唖然とする。
ファータの首都では現在、大量のチャフによって電波不良を起こし、外部との連絡は碌に取れない。
「しかもチャフとは、ある意味考えたな…完全妨害ではないあたりタチが悪い…」
チャフはレーダーや電波を弾いて、撹乱や送受信妨害を行う。だたし完全反射ではない為、一応通信は出来るのだ。
勿論、精度は下がる。その隙を突いて敵から偽情報が流された。
「どっち付かずの蝙蝠は身を滅ぼすぞ?」
そう私は呟くと、銀色の世界に一度背を向けた。




