表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

311/325

交錯編;策士策に溺れるなよ

「私がウンブリエルの立場にいたなら、おそらく同じ事をしていたかもしれない」


それ程までに切羽詰まっており——賢者の石は魅力的なのだ。

その言葉に私は語気を強めた。


「お前らはいつもそうだ。立場が違えばと、ifの話をする——だけど誰かになり変わる事はないし、出来ない。誰もが目の前に現れた選択肢の中でしか生きられない」


己が立場によって選択をするだけ。


「他者を憐れむなんて、傲慢だ」


——そうだろう?シルフィード


そして私は罠だと知りつつ、ファータへと向かった。







 先手を取られる事の重要性を、私は覚えている。


「ファータには手を出さないとでも思ったか、ナギ」


ウンブリエルは腕を組みながら、とめどなく挙げられる報告を聴き流していた。その殆どが、想定内の内容である。


そう、殆どと言うのは——


「流石アルカナ。対応が早い」


殆どが非戦闘員と云えど、その辺の企業とは違う。反社会的組織と見られていたのは、ついこの間までである。いつ逆恨みによる本社襲撃があってもいいように、しっかりと緊急時の対応が教育されていた。

だが、


「ファータはまだまだ体制が整っていない…」


国として、ようやく軌道に乗ってきたファータにこの襲撃は耐えられなかった。城内の様子は混乱に陥り、情報が錯綜する。中には当然、誤報も混じっていた。


「さて、ナギ。お前はどうする?」


そう呟くが内心では分かっていた。ナギは来る。母国を、家族(シルフィード)を救ける為に。


「せっかく奪い返した母国を、見殺しにする筈がない…か」


そう言った奴は、本当にナギの事を知っているのか?


「策士策に溺れるなよ」


そう言ったのはこの場にいない者への呟きか。はたまた自分に言い聞かせたのか。





 一度来ておいて良かった、と俺は心底思った。

ファータへの入国は現在禁止されている。在住しているアルカナ社員からは随時報告が上がってくるが、肝心の城の情報が全く来ないのだ。

しかし最悪な事に誤報が混じっている。

俺は頭を抱え、苦渋の思いでフェアリーリング(みつにゅうこく)したのだった。

そして入国早々、俺は愕然とする。


「どう言う事だ…?」


俺が繋げた場所は城の中庭——の隅。本当は城内に一室、転移用の部屋を用意してあるのだが、状況が分からない以上は使用しない方がいいだろう。

そう判断しての事だったのだが…


「全くの無傷だと…?」」


しかも空の様子が変だ。晴れているのに、霞んでいる。空襲による粉塵の影響か?だがそれにしては色がおかしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ