交錯編;お前らと比べるな
大地と土の国への一斉攻撃。これにより、各国は能力のある者に緊急召集をかけた。その中には当然の如く、アイや風見、日向そしてルカが含まれていた。しかし各自の配属部隊に三人は目を丸くする。
「全能者の私が遊撃なのは分かるけど、日向とルカまで遊撃部隊だなんて」
と、風見が呟く。その呟きに日向が頷いた。
「転移能力者ルカなんて普通、後衛だろう?それに…」
日向はチラッとルカを見て、言葉を濁した。その後に続く言葉を察してルカは「悪かったな」と睨む。
「お前らと比べるな」
「真面目に訓練には出てるんだけどなぁ」
「平均以上、ナギ以下って感じよね」
そう、いつも「攻撃系もしくは転移系の魔法が使えない」からとナギを心配しているルカだが、武器を持った状態での戦闘力はナギの方が高い。
いつでも戦線離脱が出来る、と言う点を除けばルカもナギと大して変わらないのである。
それを把握しているだろうに、配属先が遊撃部隊とはどう言う事か?
と言う風見達の疑問に、ルカは「フッ」と笑みを溢した。
——この編成を決めたのは、火炎の軍上層部の筈だ。
つまりあいつなら、配置に口が出せる。
——どんな狙いがあるかは知らないが
ナギ、フルメン、ゲフリーレン、ヒュエトス。この4人が繋がって画作しているのは分かっている。そして、一枚岩でない事も。
——フルメンかナギ、どちらが指示したかは分からないが…
「自由に動いていいって事だろう?」
「あぁ、もうすぐだ。もう少しで、決着する。長かった。一体、何年かかっただろう。もう少しで叶う望み。誰にも邪魔させない」
同時刻、別々の空の下で呟いた。