交錯編;まずは、村長への尋問だな
ナギや風見達がそれぞれを尋問している頃、ルカは天候の村にいた。
「自分でやっといてなんだが…酷い有様だな」
と、桃塗れの村の様子に呟いた。
既に夏は過ぎ、季節は秋から冬に足をかけている。生っていた桃の実の数が少なかった為「採れるだけ採れ」と風見に指示したのはナギだったが、これはおそらく過剰だったのではないだろうか。
と、思いつつ俺は村の奥へと進む。
目指すはーーー繁栄の世界では旧アルカナの施設があった場所。
そして
「なるほどな…」
その場所は風の壁が出来ていた。それはまるで、風の檻のようで。
「十中八九、天候の村も何かしているな」
問題はどんな事を、何の目的でやっているのか。そして
「ナギは把握しているのか…?」
俺にとって、それが一番の懸念だった。
ナギのやろうとしている事は分からない。ただ誰を相手にしているのかは、おおよその予想はついていた。
「ナギ…」
ナギはおそらく代理戦争の渦中にいる。そして敵対する代理は組織であるのに対し、アテナの陣営はナギ唯一人である。
———少しでも力になりたい。
俺は目を細めもう一度見てから、踵を返した。
「まずは、村長への尋問だな」
その後、ナギの方が先に動いていた事を知り、悶絶するのだった。
フィルマメントは以前と同じく、何の連絡もなしにやって来たルカを前に、内心ため息をついた。
「アポイントもなしに突然来るのは、社会人としてどうかと思うぞ」
「事前に連絡して、隠蔽でもされたら困るからな」
主にナギとか、と疑いの目を依然向ける。その様子に、フィルマメントは何とも言えない目を向けて———静かに問うた。
「あいつはお前にとって、親の仇の筈。憎くはないのか?」
フィルマメントの不躾な質問に、俺はギロリッと睨んだ。が、実のところ俺自身ナギへの感情が複雑ではあった。
確かにサルトゥスとネージェをナギは殺している。普通なら「両親の仇」として恨んでおかしくない。だが——倒れていたナギを見て、俺は血の気がひいた。そして無事である事に心から安堵した。
『ナギを追い掛ける』『宣誓しなかった理由を聞く』。この二点は決定事項だ。だが、その後は?
好きだと言う気持ちに嘘は付けない。だが、親を見捨てたい訳でもない。
俺はフィルマメントを一瞥すると
「答える義務はない——ナギからの動きがないようなら、失礼する」
ルカが出て行った部屋の中で、私は呟く。
「…どうか、引き留めておくれ」
私は何も出来ない。ただただ、お前達が行動するのを、望むのを、待つ事しか許されていない。
それが、願いを叶える条件であるが故に。
フィルマメントは深奥の長老です。ネージェの父親。ルカ、ソルの祖父。ナギを殺そうとした本人。