交錯編;手を出してきたのは、
2ヶ月近く、放置してしまいました…。すみません。見捨てないで下さい…。
そう、こうなる事は覚悟していた。
ヒナタは風花にあるアルカナ支部の一室にいた。そして自分の向かいには、風見が座り、その背後ーー扉のすぐ横に寄り掛かって立つ日向がいた。
扉に鍵はかかっていないが、明らかに監禁である。
「さて…おそらく察しているだろうけど、憑依事件であんたが知っている情報を吐いて貰うわよ」
「別に隠すつもりはないがーー覚悟は出来ているのか?」
知る事による義務を、その責務を全う出来るのか。その問いに、風見は「ご心配なく」と鼻で笑った。
「矢面に立つのは、別の人物だから問題はないわ」
「…ナギか」
本来、下位の存在が上位存在に楯突く事など出来ない。しかし上位存在からの加護を受けている者は、加護を与えている存在の代理と見做され、危害を加えられないのだ。
ただし、あまりにも度が過ぎる行いをすると、流石に叩きのめされるのだが。
ヒナタは溜息に近い息をつくと、乗り気のしない様子で口を開いた。
「手を出してきたのは、伝令神ヘルメスだ」
「伝令神ヘルメス?医療神アスクレピオスではなく?」
風見の問いに、ヒナタは頷く。
「寧ろ何故アスクレピオスの名が出てくるのか分からないが…今回の件は間違いなくオリュンポス十二神の一柱、ヘルメスが関与している」
そう言い切るヒナタに、風見と日向は「分かった」と受け入れた。そして
「Aだけでなく、ヘルメスもか…」
後から二人の報告を聞いたルカは、執務室で一人、静かに目を伏せ
「お前は、どこにいる…?」
各陣陣営に見立てた盤上の駒。その内の一つを見つめながら、呟いたのだった。
ヒナタが風見達に事情聴取を受けている頃、アイーーではなく、天候の村の村長は別室にいた。
呼び出した人物は「半年ぶりですね」と意地の悪そうな笑みを浮かべる。
「あなた方がに捕まった時以来ですね」
「御託はいい。要件をさっさと述べよ」
アイにそっくりな風貌の女ーーナギは「それではお言葉に甘えて」とにっこりわざとらしい笑みを浮かべ、次の瞬間、真顔になって切り出した。
「Aは天候の村で何をしている?」
「……」
「ヘルメスに狙われた理由は、それしかないだろう」
「…既に予想はしているのだろう?」
だからアイに接触したのだろう、と暗に言う。その問いに私は首を竦めた。
「残念ながら、当時は気づいていなくてね。アイに近付いたのは別件…と思っていたが、実は繋がっていたと最近分かった所だ」
私だって万能じゃない。何でも知っている訳ではないのだ。