交錯編;血の気が多い連中ばかりだ
天候の村への憑依事件が起きてから二日。桃を打つけると言う超強硬手段が思った以上に功を奏し、現在は落ち着きを取り戻していた。
風の国と連携し、村人全員の精密検査等を行なっている。
幸いな事に、今の所一人も霊障等がなく済んでいた。
「事態の収拾はこのままつくだろう。問題は今後の対応だな」
「まずはヒナタへの事情聴取でしょ。流石に、シラを切らせはしないわ」
と、風見は強気で言い切り、その様子に日向は「そう上手くいくか?」と眉間に皺を寄せる。
「相手は理の人だぞ?素直に情報を教えてくれるとは思えない」
「それなら恋人を人質にするまでよ」
そんな事したらアルカナが潰されるわっ!と日向は眉間をおさえた。
その様子に風見をフンッと強気に鼻を鳴らす。
「いつまでも下手に出てたら、進展なんてしないわよ。それに、ヒナタの方も困っているんじゃない?」
「困ってる?」
「憑依事件の首謀者側には、明らかに理の上に立つ存在がいる。けどヒナタは怖くて手が出せない筈よ」
「それは俺達も同じだろう?」
「何言ってるのよ。同じじゃないわよ」
言い切る風見に、日向はようやく風見の意図が分かった。顔を引き攣らせ「まさか…」と呟く。
悟った日向に、風見は黒い笑みを浮かべて言ったのだった。
「逃しはしないわ、ナギ」
「とでも、言ってるだろうなぁ」
私はアルカナの応接室で嘆く。向かいにはフルメンとヒュエトスが据わっており、それぞれ異なった表情を浮かべていた。
クスクスといけ好かない表情を浮かべたヒュエトスは「ま、当然だな」と肯定する。
「俺達もそのつもりでいたしな」
「ヒュエトス…もう少し言い方があるだろう」
フルメンはゲンナリした様子でヒュエトスを嗜めたが、私は「別に気にしてない」と優雅に紅茶を飲んだ。
「もともとAとやり合う予定だったんだ。もう一柱増えようと、大した差はない」
「大した差って…お前は」
強気な発言に、フルメンだけが頭を抱えるが、フルメンは一度咳払いをして、本題を切り出した。
「大地と土、ニ国への総攻撃について、異論はないな?」
「それ、私が拒否出来る内容じゃないだろ」
「矢面に立つのはお前だ。それに」
「元の対アルカナ同盟からの共同作戦だ。同盟の提案及び交渉をしたお前を無視して決行するのは無理だろう」
と、フルメンの言葉を引き継ぐようにヒュエトスは話す。
私は「形ばかりの、確定報告だろうが」とため息を吐いた。
「全く…血の気が多い連中ばかりだ」