7話『青春の予定』
七月十九日が今年度一学期の終業式その日。その日を目前に、約一週間後に控えていた。正確には九日。長いようで短いけれど、それは過ぎたら短いと感じるだけで実際体感としては十分長い。
早く来ないかと、そわそわする姿は猫に待て、というもので落ち着くことはなかなかできないそういう雰囲気がクラスに、学年に、校舎に流れている。
宿題はどれくらいかなとか、補習やばいとか、バイトいれすぎたとか、何処へ行こうかとか、鬼も笑うような気の早い話を惜しげ無く交わす。これぞ高校生、青春、という事を俺は思う。
そんな俺は莉緒に呼び出され自販機の前でお話。莉緒の当りはやはり少しだけ弱くなった。なんというか気を許し合った仲、そんな感じ。因みに口づけの事を三月は知らない。
「夏休みの予定? さぁな、自慢じゃないけどさ、俺人生で出来た友達を片手で数えられるんだ、莉緒と三月」
「あっそ、で? 要するに予定はないのね?」
「ああ、そう言うこと。会いたくなったらいつでもメールで誘ってくれ、そうしたら自転車ぶっ飛ばしていく」
「やめてよ、普通に嫌いになる。それに自転車なんて持ってないじゃん」
「大丈夫、朝ゴミ捨て場に自転車あったから」
「それ犯罪だから」
「ゴミでも使えるんだから有効活用しないと罰が当たるぞ? 万の神っていって――誰に電話?」
「警察……まぁいいや、三月にも予定ないか聞いておいてよ」
「今すぐ逃げないと……なんで俺が? 莉緒が訊けばいいじゃん」
「頼んでんだけど」
「……わかったよ、訊いておく」
なんだろう、喧嘩でもしたのだろうか。そう俺は思うが喧嘩をした、とかそういう雰囲気ではなかった。別に普通の雰囲気。それに二人が喧嘩なんて考えられなかった。
夏休みは宿題だけがお友達、だった俺が女子と……これはアレか、リア充か。青春してるなぁと、俺はしみじみと思う。
そんな有頂天気分で俺は三月に予定を訊く。
「うん、なんもないよ」
「……意外と悲しいよな、それ」
「別に寂しくないよ? 莉緒も修哉くんもいるからね」
そう言って三月はすこし照れたように笑う。守りたいこの笑顔。
そうだ、二人も友達が居るじゃないか――。
それから九日はすぐに過ぎ、ミカンもその黒い体毛のせいで暑そうだ。
一学期終業式は冷房の効いた大体育館で行われた。注意事項やら学習が何やらと言われて終業式は午前中に終わった。
一ヶ月ちょっとの、九月前に終わる夏休みは幕を開けた。




