その3「アイス」
◇妹、兄の部屋へやってくる
妹「兄さん、ちょっといい?」
兄「おう、どうしたんだ」
妹「私は今かつてないほど燃え上がっているんだ」
兄「うん、確かに今日は猛暑だしな」
妹「……たしかに今日は暑い。でも、それだけじゃないんだよ」
兄「とりあえずエアコンがついてるんだし、ドアを閉めてくれ」
妹「兄さん!」
兄「はい」
妹「アイス!」
兄「え」
妹「私のアイス食べっちゃったでしょ!」
兄「えっと」
妹「私は悲しいよ。兄さんが私にこんなひどい仕打ちをするなんて」
兄「いやいや、食べてないって」
妹「しらばっくれるなんて男らしくないよ! もう観念して新しいアイスを買ってきなさい!」
兄「だから落ち着いて、ちゃんと確認したのか?」
妹「もちろん! 兄さんは往生際が悪いんだから。ほら、ついて来て」
◇兄と妹、冷凍庫の前へ
妹「ほら見てごらんなさい。空っぽでしょ」
兄「たしかに。いやでも俺は食べてないし……。お前が知らないうちに食べちゃったんじゃないか?」
妹「それは兄さんでしょ。この前だって私が買っておいたお菓子食べちゃったし」
兄「それはごめん」
妹「だから今回は兄さんに見つからないように製氷皿の下に隠し、て……」
兄「ん?」
妹「兄さん」
兄「はい」
妹「今日は暑いね」
兄「そうだな」
妹「兄さんもアイスが食べたくなってきちゃったんじゃない?」
兄「まぁ、そうだな」
妹「うん、じゃあ一緒にアイス買いに行こ」
兄「別にいいけど。いや、でも消えたアイスは」
妹「……大丈夫でした」
兄「……そっか」
妹「兄さん」
兄「はい」
妹「暑さは人を狂わせるの」
兄「早くアイス買いに行くか」