↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディスマン短編集『語らずとも談る』  作者: ディスマン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/51

牡丹・椿・辻が花

夏祭りから着物の美しさだけ残して、それを着ている人の美しさを削り落としたらどうなるかなぁと思って

「牡丹」


 夏の宵は、放射状に炸裂していた。

 社へ続く参道を挟むように、露店が威勢よく輝いている。

 時折、耳と目を焼く光と音に空を見上げながらも、やはり男の目を奪うのは隣で咲く牡丹だった。

 散ろうと花弁が離れて石畳に落ちていこうとするその一瞬。男は電燈で少し色素が弾けた牡丹が、歩く度に陰影で色を取り戻す様を、写真にしたいと思った。

 少しレトロな音が花火に消える。紫紅色の色目が夏風に流れて、男はそこに妙齢で艶やかな花園を見たのだった。




「椿」


 赤い花弁が、耳心地よい音色を奏でる。雲の間から溢れた天照の肌の艶が、そのまま椿に乗り移っていた。

 雲海の如く、何物にも染まらないと気高い絹に、高貴でありながら微かに微笑みを向ける椿が寄り添っていた。

 雲が恐れ多くなって上空を立ち去る。心なしか青みがかった、空の色が残された椿は、まさに夏の写し鏡だった。

 ラムネが照れ隠しで鳴る。雪駄がそそくさと道を開ける。

 これまた同じ椿の簪(かんざし)が、肌を焼く熱に向かって優雅に首(こうべ)を垂れたのだった。




「辻が花」


 夜風の抱擁は、辻が花には少し肌寒かったらしい。

 団扇は縁側に置き、風鈴も鳴らないようにテープで仮留めする。残るは、草葉の影で歌う錫蟲(すずむし)と、河岸で踊る蛍だけだ。

 吐いた息は色っぽく、しかして夏夜の熱より暑かった。月明かりで光る薄い桜色の花弁が、少し濡れて光沢を帯びている。

 言葉は存在せず、ただそこに在るための呼吸だ。

 茎を流れる一筋の汗を辻が花が吸う。もしかしたら汗ではなく花弁から滲み出た水かもしれなかったが、そんなことはどうでもいい。

 花は花であることを守り、蠍座が川を泳いでいる。そしてまた一つ、蛍が蠍に食べられていった。

今のうちに夏書いとかないと!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。