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サキュバスは、性犯罪を減少させる  作者: ウロノロムロ
サキュバスは、引きこもりと恋愛出来るか
6/11

お願いですからあなたに恩返しさせてください

引きこもりのヒロナリに助けられたと勝手に勘違いして、勝手に部屋に押し入って、勝手にエロい恩返しをさせてくれと言い出すリリアン。

これだけ聞くと単なるメンヘラ痴女だが、その通りなので仕方ない。


目の前にいるゴスロリ美少女にエロい恩返しをさせてくれとお願いされるヒロナリだか、ヒロナリからすればリリアンはどう見ても十代前半の中学生ぐらいにしか見えない。


『ねーわ、ぜってぇねーわ』


「こんなロリっに何かしたら俺が捕まるし」


まるでお人形さんのように美しい少女ではあるのだが、小柄でか細く華奢きゃしゃ、さらにツルペタ、ゴスロリの衣装が余計にロリっに思わせる。


「失礼ですね、私はこう見えても

人間の年齢で言ったら百歳を超えてるんですよ」


「私からしたらあなたの方がお子ちゃまですよ」


リリアンは少しエラそうにツルペタの胸を張ってみせる。


『その理屈で言ったら、八十歳差とか

おめーがただのショタコンじゃねーかよ

やべぇ奴じねぇか』


百歳、百歳と言っているリリアンだが、サキュバスの中では相当若い方で、愛倫アイリンレベルから見れば赤子も同然。

人間でもご長寿さんは百二十歳近いので、せめて人類は全員超えないとまだまだひよっこ扱いされてしまう。


-


なかなかウンと言わないヒロナリに業を煮やすリリアン。


「エロい恩返しをさせてくれるまで、私ここから動きませんからね」


もはや恩返しの押売りみたいなことになっている。


『何でもするって言ってたのが、

いつの間にかエロ限定になってるし』


押し込み強盗が居直り強盗になった感がある。


「サキュバスってセックスしたら

相手の男から精気奪うんだよな?」


さすがにあやしいと思うヒロナリ、いろいろと探りを入れてみる。


「恩返しだなんて言って、

俺から精気吸いたいだけだろ?」


少し焦るリリアン。


「いえ、恩返しですから」


その後の追求にも。


「恩返しですから」


恩返しで押し通そうとする。


「恩返しなんですってば」


横を向いて汗を掻きながら口笛を吹く。


『こいつ絶対恩返しって言いたいだけだろ』


「恩返しだって言うんなら

俺から精気を奪うような真似はしないよな?」


「な?」


ヒロナリに念を押されるリリアン。


「な?」


ついに観念して本音をポロリ。


「精気も少し分けてください~」


今度は一気に懇願モード。


「お願いします~」


泣き真似してお願い。


「お願いですから~」


『恩返しとか言っといて、

物乞いしてんじゃねーよ!』


「ち、違うんですよ、

恩返しと私のエネルギー補給、両方出来て

一石二鳥だと思っただけですから」


そんな問答が続くこと数時間。


-


恩返しさせてくれるまでは絶対に帰れらないと言うリリアン。

すっかり眠くなったヒロナリは、リリアンなどもうどうでもいいから一人で寝ようと思いはじめる。


「お前、押入れで寝ろな」


こっそり布団に忍び込もうとするリリアンを冷たく突き放すヒロナリ。


「え? 私押入れなんですか?

そんな青い猫型ロボットみたいな扱いしますか?」


「電撃が得意で露出が激しい鬼みたいな美少女宇宙人も押入れで寝てましたか、そう言えば」


そんな昭和のおっさんしかし知らなそうなことまで知っているリリアン、順調に秋葉系の人として育っている模様。


「お前、夜這いとかしてくんなよ」


心配になって念を押すヒロナリ。


「何を言ってるんですか?

夜這いこそはサキュバスの代名詞みたいなもんですよ?」


「相手がいつガバッと来るかわからない、

その緊張感を布団の中で噛みしめる、

それこそが大人の恋愛の楽しみってもんですよ」


『なに言ってんだ?コイツ』


改めて貞操の危機を感じるヒロナリ。


「お前が襲って来ないように縛っていい?」


「な、な、なんと、

プ、プレイですか?

そういうのが好きな感じですか?

い、い、いいですとも、

私だってサキュバスの端くれです、受けて立ちますよ!」


『もういいや、寝よ』


サキュバスとして口先だけは達者なのだか、どこかウブなところがあるリリアン、当然その晩は夜這いなどするはずもなく、押入れでおとなしく寝る。


-


ただ、押入れで寝たとは言え一晩ヒロナリの部屋に泊まったという既成事実はつくれた訳であり、そのことに調子に乗ったリリアンは、その日からずっとヒロナリの部屋に居つく。


当然ヒロナリは物凄く嫌がって邪険にしたが、今まで嫌々自分で行っていたご飯や飲み物など食料品の買出しに喜んで行ってくれるので、パシリとしては大変重宝していた。


「これってもしかして、人間で言うところの同棲なんじゃないですかね、キャッ」


こちらの世界でビッチのような真似はしないと宣言していたリリアン、そして人間と恋愛したいとも言っていたリリアン。

それがここまで強引に押し掛け女房する理由はただひとつしかない。


リリアンはヒロナリのことが好きだった。


ここまで全くいいところがないヒロナリを好きになるというのは、リリアンの目はとんでもなく節穴なのかもしれないし、ダメな男を好きになるタイプなのかもしれない。

もしかしたら、ただ人間との恋愛に憧れているだけということもあり得る。


それでも、蝙蝠の姿で見つめ合ったその時からリリアンが恋に落ちていたというのは紛れもない事実であり、それが理由でヒロナリの部屋に押し掛けて来ていた。


好きになると強引に攻めるところは少し愛倫アイリンに似ているかもしれない、サキュバスの種族特性なのだろうか。


食事はいつもヒロナリに合わせて冷凍食品やカップ麺、ジャンクフードばかりだったが、それでも好きな人と一緒に食べるのは美味しいし、嬉しい。

それが自然と顔に出てしまい、いつもヒロナリに気味悪がられる。

そんな初めて同棲した十代カップルの女子みたいな楽しみ方をしているリリアン。


そしてリリアン、自分が寝泊まりしている押入れが暗くて結構気に入っていた。


-


そんな奇妙な同居生活が数週間も続くと、さすがにヒロナリも慣れて来る。


確かに黙ってさえいてくれれば間違いなく美少女ではあるのだから、綺麗な置物、目の保養として部屋にあってもいいかもしれない。

そんなことを思わなくもない。


「なぁ、サキュバスって今の人間ぽい姿と蝙蝠の姿ってどっちが本体なわけ?」


次第に口数も多くなり、サキュバスにも少し興味を持ちはじめる。


「さすがに俺初めての相手が蝙蝠とか、勘弁して欲しいわけよ」


「ずっと思ってたんだけどさ、鶴の恩返しってあるじゃん?

あれいい話風になってるけど

本当に正体が鶴なら、男は鶴と獣姦してた、ただのやべぇ奴じゃね?」


「しかも子供まで生むとか意味わかんねーし」


少し寂しそうな顔をするリリアン。


「そうですかぁ、私は異類婚姻譚いいと思うんですけど……」


人間を好きなサキュバスであるリリアンが、好きな人からそういう発言を聞くのはやはりショックだった。

人間と恋愛することを夢見ていたリリアンだが、やはりそれは叶わぬ恋なのか。



「そうそう、本体ということで言えば、私達の本体は魂ですかね。

私達の遠い遠いご先祖様は実態のない魂だけの存在だったんですよ。

その流れから進化して来た私達も本体は魂で、肉体を構成する要素を自由自在に変えられたりするので、人型のこの姿にも蝙蝠の姿にもなれるってとこですかね」


愛倫アイリンとリリアンはよく魂の話をするが、彼女達は実際に人間の魂を見ることが出来る。

もちろん全く関係のない人間の魂は見ないようにしているが。

愛倫アイリンは慎之介の魂を英雄や勇者のようだと言っていたが、果たしてヒロナリの魂はリリアンにどう見えているのか。



リリアンにとって楽しい二人の同居生活はこのままずっと続くかと思われたが、やはり楽しいことばかりという訳にはいかなかった。


日数が経つに連れリリアンは見るからに痩せ、やつれていく。

それはヒロナリが見ても一目瞭然にわかるぐらいに。


人間の世界に来てから愛倫アイリン同様、口から食べ物を摂取することだけで生活して来たリリアンだが、ヒロナリとの同居で食べる物は冷凍食品やカップ麺、ジャンクフードばかり、栄養バランスのよい食事などは望めようもない。


それに愛倫アイリンクラスのようなレジェンドになると口から摂取した食べ物を無駄なく効率良くエネルギー変換することが出来たが、まだまだひよっこのリリアンにはそれが難しく、人間世界に来てからの生活に破綻が来たのかもしれない。


心配するヒロナリをよそに、それでもリリアンは一緒に居続けようとしたが……。


-


ある朝ヒロナリが目を覚ますとリリアンの姿は部屋のどこにもなかった。

押入れにも、家のどこかにいるという訳でもなかった。


『やっと、あいつも諦めてどっか行ったか

いなくなってせいせいするわ』


おそらく空腹に耐えかねて、ここでの生活を諦めたのだろうとヒロナリは思う。


『今頃どっかの男の腕に抱かれて

あんなことやこんなことしてんだろーな』


サキュバスが本気で空腹を満たそうとすれば当然そうなる訳で、あんな美少女のリリアンがどこかの男にあんなことやこんなことをされている、そんなことを思うと少しモヤモヤしないこともない。


『まぁ、俺には関係ねーし』


ベッドに寝転がり、改めて部屋を見回すヒロナリ。

自分以外には誰もいない、暗く静かな狭い世界。

リリアンが来る前、この部屋はこんなにも静かだったのだなと、ヒロナリは気づく。






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