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第三十六話 砂漠エリア

 塔の攻略は順調に進み、31階にまで辿り着いた。

 マッピングはしているが各階を完全に踏破している訳ではなく、階段を見つけたら直ぐに昇ってきた。そのおかげかなかなかのハイペースで進んでいると思う。ステータス画面で時間を確認したところ16時を回ったくらい。とりあえずは、40階にある休憩所を目指すとするか。

 31階からは塔の内部がまたも変わった。今回はなんと砂漠地帯。森の時もそうだったけど、きちんと空があり太陽まで見える。まあ、それも神が創り出した擬似的なものなんだろうけど。

 ニセモノとは言っても陽の光は確かに感じるし、当然熱気も相当なものだ。下層の時同様にウォーターアーマーを使い熱気対策にする。

 31階は一面砂漠の為、方向感覚が狂う。所々に建物の様なものがあり、それが目印にならなくはないのだが……陽炎もありその位置すらも正確とは言えない。階段の存在は近付けば視認出来るのだろうが、遠目には察知出来ない様になっている。

 とは言え、とりあえずは進むしかない訳だが……

 森の事を考えると、はっきり言ってこの手のダンジョンは俺の苦手分野だ。帰還アイテムがあるとは言え、この風景を見ていると気が滅入って仕方無い。


「はぁ」


 大きく溜息を吐いてしまうのも当然の反応だろう。

 それでも何とか最初の一歩を踏み出して、俺は砂漠エリアの攻略を始めた。

 とりあえずは一番近くに見える建物を目指した訳だが、何故か途中モンスターと遭遇する事はなかった。


「ここは外れか」


 一番近い場所に階段がある訳がない。そう分かっていてもどこか期待していた自分が嫌になる。

 中を調べたところ、特に採集可能な物はなかった。

 建物から出て周囲を見回す。入口のある位置がちょうど自分が歩いてきた方向なので、間違えて戻ってしまうと言う事はない。こうやって建物の入口なんかを目印に方向だけはある程度把握していけたら良いんだが、建物自体が倒壊している事もあるだろうし、そもそも移動中に方向が狂ってしまえばそれまでだ。

 考え出すとどんどん嫌になってくる。

 何とか頭を切り替えて、改めて周囲の風景を観察する。

 ここの建物を出て右手と後方にまた建物が見える。まずは真っ直ぐ進んで階段の有無を確かめるか。問題は、直線状に何かしらの目印があり続けてくれるかどうかだ。何故なら、ゲームと同じなら砂漠エリアは端同士が繋がっておりループするからだ。ちなみにこれは森エリアにも言える事だったりする。

 つまり、一度位置が分からなくなると本当にどうしようもないのだ。

 あー……思考を巡らせていると直ぐに鬱な方向に向かってしまう。とにかく進もう。

 そう思って次の建物を目指して歩き出した刹那、地面が盛り上がりそいつが姿を現した。一言で表せば巨大ミミズ。この手のエリアでは有名な存在。そして名前もそのまま、サンドワーム。しかも、現れたのが紫色のサンドワームだ。ゲームと同じなら通常は褐色をしている。なら紫色のこいつは何なのかと言えば、間違いなくサンドワームの一種だ。しかし、変異種と呼ばれる存在。その名はヴェノムワーム。見るからに毒々しい色合いの通り、こいつは強い毒を持つサンドワームだ。そしてゲームの設定通りの生態なら、ゲームの時よりも厄介な相手になっているだろう。

 サンドワームは体内に酸を作り出す部位があり、それを吐き出す事で獲物を捕らえやすくする。攻撃パターンとしては体当たり、丸呑み、酸と言ったところだろう。それと比べてヴェノムワームはその皮膚にも毒を持ち、尚且つ体内で毒を作り出す部位があり吐き出す事も可能。更に言えば、その毒は酸性であり通常のサンドワーム同様の脅威もある。真っ当には戦いたくない相手だ。

 エルダートレントに始まりクリスタルゴーレム、そしてマッド・ワーカーと今回のヴェノムワーム。エトルアンも含め、レアモンスターに遭遇する確率がやけに高い気がするぞ。そんなスキルはないんだけどな……

 大体は地中からの奇襲攻撃で襲ってくるワーム系だが、このヴェノムワームは俺の目の前に現れたきり様子を窺っているのか動かない。なら、今のうちに逃げるのも手か……?

 そんな俺の甘い考えは、次のヴェノムワームの行動で簡単に覆された。

 ヴェノムワームの全身から漏れ出す紫色の気体。それは奴が体内で生成している毒が霧状に変化したものだ。自身の周囲に毒を撒き散らす無差別範囲攻撃。本来ならヴェノムワームの最終手段であり、滅多に見る事のない攻撃方法。だからこそ、その予備動作を失念していた。あの動きを止めていた事自体が、この攻撃の予備動作だ。


「仕方ないな……」


 毒霧が広がるスピードは速い。逃げるのは難しい。戦闘を継続する前提なら回避は不可能。なら防ぐしかない訳だが……

 俺はいくつかある選択肢の中から、最も確実な方法を取る事にした。


「空間隔絶結界・歪環」


 半径5メートル程の球体状の結界を形成するスキルで、スキル発動から効果継続時間は僅か5秒。しかし指定した座標空間を完全に孤立させ、結界の内外干渉を不可能にするスキル。ただし、例外はある。


「メルトダウン、カウント3」


 結界スキル発動から1秒後に座標指定型のスキルであるメルトダウンを発動。

 メルトダウンは発動時にその効果を現すまでの時間を指定する。指定可能時間は3秒から10秒。そのカウント後に実際の効果を発動する。

 そして歪環の例外。それは座標指定型のスキルだ。最初から結界内で効果を現すものならきちんと発動する。まあ、結界系スキルをメインにするジョブならそもそも座標指定すら出来なくさせるスキルも覚えられるらしいが。

 ともあれ、俺は結界の中心点――つまりヴェノムワームの位置を指定した。そして3秒後、実際に核を使用している訳ではないがそれに類似した見た目の大爆発が起きる。結界の中のみで。それはヴェノムワームは勿論、その毒霧さえも吹き飛ばす爆発だ。

 余談かもしれないが、メルトダウンはヴェノムワームの毒霧同様無差別の攻撃判定を持つ。いや、より厄介な性質だ。毒霧はヴェノムワーム自身に効果はないが、メルトダウンは俺自身を巻き込む。普通に使うと大変なスキルだったりする。結界系や防御系スキルとの併用が不可欠なのだ。

 まあ、これで砂漠エリアでの最初の戦闘は終了だな。ただ、やはりいきなり毒霧を使ってきたのが気になる。基本的に、そういった設定はゲームと変わらないはずだ。少なくとも、ここまでで大きな差異は殆どなかった。とすると、誰かから逃げてきたのかもしれない。

 何となく嫌な予感がしつつも、とりあえず俺はさっき考えた通り次の建物を目指す事にした。

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