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第三十四話 中層へ

 そんなこんなで再び訪れたバベルの塔。

 ジェシカを探すのは止めて、真っ直ぐに塔へとやってきた。

 午前中同様採掘をメインにしても良いが、もう少し先まで攻略しておこうと思い直した。その為食事等も用意したし、ある程度は進めておこうと思う。

 まずは1階の転移陣を使い20階へ。そこからマッピングした地図を見ながら上に進んで行く。基本的にモンスターはスルー。特にスキルを使用している訳じゃない為、進行を邪魔する相手はきちんと倒しながらだが。

 25階まではライムと来た時にマッピングしていた為、ただ進むだけなら楽だった。

 30分くらいで24階にある昇り階段まで辿り着いた。それを昇ると、転移陣を使った時の様な感覚に包まれる。それも一瞬で、階段を昇りきるとそこは25階ではなく26階だった。ライムの情報は正しかった。

 26階は岩肌のダンジョン。特に気候的におかしなところはない。だが、出てくるモンスターは下層とは別格なはずだ。ここから50階までが中層になる。下層のモンスターから察するに、俺にとって命の危険はないだろうと思う。

 まあ、油断はしない様に進むとしよう。ゲームと同じなら、罠の類いも出てくるはずだしな。

 マッピングをしながら慎重に進む中、最初に出くわしたのはロイヤルウルフ。そしてそれにつき従う5匹のナイトウルフだ。出くわした場所は通路で、ナイトウルフが4匹も並べば通り抜けるスペースはない。狼型のモンスター特有の機動性を活かした戦いをする気なら、おそらく同時に襲いかかってくるのは多くても3匹。対処出来ない事はないだろうが、保険をかけておくか……


「グラビティ・バインド」


 まさにナイトウルフが同時に跳びかかって来ようとしたタイミングで、俺のスキルが発動する。

 指定座標に重力球を発生させる拘束系のスキル。このスキル自体にダメージはないが、重力球内は五倍の重力がかかる。元が重いゴーレム系なら増加した自重でダメージを負うかもしれない。

 グラビティ・バインドは効果時間が長いが、あくまでも重力を増すだけで完全な拘束には至らない。範囲内を抜ければそれでおしまいと言う欠点もある。が、通路を完全に塞ぐだけの大きさがあり、ナイトウルフ達はスキル範囲内を通らなければ俺の元には辿り着けない。つまるところ、奴らが範囲内から出るまでは俺にとってはただの的と言う訳だ。


「サンダーランス、かける五発」


 雷属性の魔法系スキル、サンダーランス。攻撃力は中層なら十分に主力になりうるだけあるし、ストックが5と使い勝手も良い。ウェイトタイムは五分。これは一発でも使用したら五分後には全快するタイプだ。

 その名の通り雷で出来た槍。それを重力球の中にいるナイトウルフに向かって飛ばす。サンダーランスは発動時に自身の周囲に配置し、それを標的に飛ばす事でダメージを与える。ゲーム中では配置状態だと触れる事すら出来なかったが、多分今なら触れるんだろうな。

 それはともかく。まずは三発。最初に襲いかかってきたナイトウルフにそれぞれ放った。俺自身やスキルも重力球の影響は受けるが、既に3匹は重力球を抜けようとしていた為に難なく命中させる事が出来た。しかし一撃では倒せない。残った二発の内一発を、一番前にいたナイトウルフに放つ。それも命中するがまだ倒せない。しかしダメージを受けた事で怯んだのか、まだ重力球を抜け出せていない。そこに最後の一発を放つ。その直撃を受けたナイトウルフは絶命し、エフェクトと共に消え去った。


「ナイトウルフはサンダーランス三発か」


 特に属性耐性はないはずだから、倒すまでの大体の目安はついた。


「フレイムランス、かける四発」


 今度はサンダーランスの炎属性版。属性が違うだけで性能は完全に同じだ。

 今度こそ重力球を抜け出そうと2匹のナイトウルフが頭だけ脱出していた。だから良い的なんだけどな。

 その2匹にフレイムランスを二発ずつ当てる。当然の様に消滅するナイトウルフ。これで残りは重力球の先にいるナイトウルフ2匹とロイヤルウルフだ。

 仲間がやられた事で警戒しているらしく、闇雲に跳びかかってこようとはしてこない。重力球が消えたらと考えているのかもしれないな。まあ、待ってやるつもりはないが。


「ゴーストフレイム」


 座標指定型の魔法系スキル、ゴーストフレイム。指定場所に設置型の炎を発現させるスキルで、威力は低い。その代わり炎の出現時間は長い。当然触れている間は継続的にダメージを与える。そして何よりもこのスキルの使える所は、一度触れた相手をホーミングする点だ。仮に効果が切れる前に対象を倒した場合、再び最初の座標へと戻り待機状態となる。この手のスキルをトラップスキルと呼んだりもする。

 俺はロイヤルウルフのいる場所を指定してゴーストフレイムを発動した。狼型のモンスターは危機察知能力に長けているが、トラップスキルの類は設置状態だと攻撃性を現さない事もあり奴らの察知能力では気付きにくいはず。少なくとも、ゼロ距離で発動されれば避ける事は出来ないだろう。

 俺のそんな考えは正しく、ロイヤルウルフはゴーストフレイムの餌食となった。直ぐには倒せないが、火の玉の様な炎に追われて逃げ惑う。その様子を見て残りのナイトウルフも動揺している。

 それが大きな隙だと理解しているのかいないのか……

 まあ、他のモンスターが出てくる前にとどめといきますかね。


「召喚、貪る悪霊」


 その名の通り召喚系スキルの貪る悪霊。召喚系スキルには効果だけを現す単発召喚と、共闘状態になる常時召喚の二種類がある。貪る悪霊は前者だ。指定座標、ただし地面が存在する場所限定で魔法陣を生成し、そこから黒い影がそのまま人型をした様な悪魔を召喚する。

 悪魔なのに悪霊と名付けたのには理由がある。当然、俺が使うスキルはスキルを複合して創った専用スキルだ。つまり、貪る悪霊は悪魔でもあり悪霊でもある。本来物理攻撃性を持たない悪霊召喚は、相手の精神にダメージを与えるものだ。その効果はデバフだったりバッドステータス付与だったり様々だが、貪る悪霊は物理防御を下げる効果がある。そして複合した悪魔召喚スキルは物理攻撃をするものだ。とまあ、相手の防御力を下げつつダメージを与えるスキルだと思ってくれれば良い。

 対象は一体。現れた悪霊はその名の通りナイトウルフを捕まえ捕食する。その光景はなかなかにえぐい……


「アクアランス、かける三発」


 そして今度は水の槍を待機状態に。直に重力球が消える。

 それを見計らって、残ったナイトウルフに放つ。

 直ぐにアクアランスに気付き避けようとするナイトウルフだったが、ゴーストフレイムに追われるロイヤルウルフや、悪霊に喰われているナイトウルフに注意が行っていたらしく動きが鈍い。しかし腐っても機動性には定評のあるナイトウルフだ。二発のアクアランスは命中したものの、一発は避けられてしまった。とは言え、そこに隙が生まれたのは当然の結果だろう。俺はナイトウルフとの距離を詰めて追撃をかける。俺の放ったナイフの一撃はアクアランス一発分には満たなかったらしく、ナイトウルフにトドメを刺す事は出来なかった。とは言っても既に瀕死状態らしく、目の前のナイトウルフはかなり弱っている様に見える。これならもう一度ナイフで切りつければ倒せるだろう。そう結論付けて実際に行動に移すまでは3秒程だろうか。瀕死の為に自慢の機動力を失ったナイトウルフは俺の攻撃を避ける事が出来ずに直撃。予想通り、目の前のナイトウルフはそれで倒せた。

 その間に悪霊に喰われていたナイトウルフも倒せていたらしく、周囲に残っているのはロイヤルウルフのみだった。相変わらずゴーストフレイムに追われてはいるが、どうやらその動きに慣れてきたらしく俺の方に視線を向けている。しかし直ぐに攻撃に移る程の余裕はないらしい。とは言え、上手い事火の玉を避けているからダメージ量もかなり減っているだろう。そう簡単には倒れてくれなさそうだ。


「ストームランス、かける五発」


 個体差があるとは言え、ゲームで言えばロイヤルウルフはナイトウルフの約三倍のHPだったはず。とすると、目安はランススキルで九発。ゴーストフレイムのダメージはおそらくランススキル一発分にもなっていないはずだ。ほぼ全快に近いかもしれない。それでも、動きを限定させられるだけで役に立つ。


「な!?」


 そんな俺の考えを覆し、ロイヤルウルフは火の玉を物ともせずに俺に突っ込んできた。

 どうやら、俺が携えたストームランスの方がダメージが大きいと本能で察したらしい。

 まあ、多少驚きはしたがやる事は一緒だ。真っ正面から近付いてくるロイヤルウルフに向かって二本のストームランスを放つ。左右に少し間隔を開けて放った訳だが、それは左右に避け辛くさせる為だ。一切身体をぶれさせなければ、そのまま直進すればストームランスには当たらないだろう。しかし、目の前に迫る風を纏った槍を見て突っ切ってくるのは難しい。本能だけでなく理性があるからこそ、ロウヤルウルフならば回避行動を取るだろう。左右どちらかに大きく避ける可能性もあるが、おそらく奴はもっと攻めの態勢に出る。となると、上か下。上は簡単に迎撃させると考えれば、残る選択肢は下になる。

 そんな風に考えていると、またもやロイヤルウルフには予想を裏切られた。奴は上に跳んだのだ。


「まあいいさ。それなら良い的になるだけだ!」


 残った三発のストームランスを全て放つ。奴に回避する術はない。そう思っていた。

 ロイヤルウルフの身体が一瞬青白く光ったかと思うと、空中で急加速して俺に迫ったきた。ストームランスの軌道はしっかりと避けている。


「スキルか!」


 すっかり忘れていた。ロイヤルウルフはエアダッシュと言うスキルを持っているんだった。中空を蹴り加速するスキル。空中を歩くだけのエアウォークや跳躍するだけのエアジャンプの上位スキルで、言葉の通り普通に移動するよりも加速する。

 ロイヤルウルフは俺の首に噛み付こうとしている様だ。だが、それは叶わない。


「瞬触一蹴」


 俺が創ったカウンタースキルの中でも最強クラスのスキル。相手の物理攻撃が当たる1秒前から当たった瞬間までが発動可能時間。その攻撃を無効化し、攻撃してきた相手を吹き飛ばし固定ダメージを与える。ウェイトタイムは24時間あるが、この固定ダメージ。中層のモンスターなら全て一撃で倒せるだけの威力がある。当然、通路の端まで吹き飛ばされたロイヤルウルフはその一撃で絶命した。

 ロイヤルウルフの攻撃一発でやられはしないが、首を噛み千切られたらどうなるかは分からない。咄嗟に瞬触一蹴を使ってしまったが、まあ問題はないだろう。

 下層程余裕ではいられない。そんな現実を痛感しながら、俺は気を引き締めて先に進む事にした。

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