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12/20

今年の試験は簡単なようです。

学院に着いてあたりを見渡すと、受験生らしき人で溢れかえっていた。皆んなどこか緊張した面持ちで、家族と話している。

もし、僕が実家と仲がよかったら、こんな風になってたのかな。なんて、つありもしない妄想をしてしまった。


「受験受付はこちらです。ここからは受験生お一人のとなりますので、付き添いの方は外でお待ちください。」


と聞こえ、僕は受付へと向かった。


「ルットラス=コルムさんで間違いありませんか?」

「はい。間違いありません。」

「えっと、その子は何かな?」


そう言って、受付の人はネグルカを指さした。


「あぁ、僕の従魔です。」

「あぁ、それじゃあ筆記試験の時は一緒に連れていくことが出来ないので、実技の時までこちらで預かってますね。」

「あ、お願いします。」


ネグルカはとても不満そうだったが、僕がごめんと手を合わせると、仕方ないなと言う事を聞いてくれた。


そして筆記試験会場の教室に入った。

椅子に座るとすぐに、答案用紙と問題用紙が配られ、教室全体が緊張感に包まれた。


キーン コーン カーン コーン

「それでは、回答始め!」


その合図で問題用紙をめくった僕は驚愕した…



簡単すぎる。嘘だ。

試験にある問題は旅に出る前の5歳の時にはもう知ってるものばかりだった。

試験時間は60分。だが、どう見ても10分で終わる。もしかしたら今年のテストだけ、どうしても入れたい人が居て、簡単にしたのかもしれない。

貴族社会だ、大いにあり得る。

他にも学院側がテストを簡単にする理由を考えながら、問題を解いていった。

すると最後の問題でようやく、旅に出てからネグルカに教えてもらった事がでた。


「ナイス!ネグルカ!」


とつい声が漏れてしまった。


【問 魔力回路と外魔力(空気中の魔力)のみで行う魔法に関して、その術式の構成式を書きなさい。】


確かにこれは普通の学生には難しいと思う。

そもそも、この世界では術式というものがあまり発達していない。何故なら、自分から離れればその魔法は消えるので、わざわざ術式を組み立ても結局は近接戦になるからだ。

でもネグルカは、空気中の魔力を使っているから、自分から離れようと問題はない。

つまり、術式なんてものは人間には無用の長物って事だ。


そんな事をわざわざ覚えてる受験生は少ないだろう。だが、僕はネグルカから嫌というほど聞いているので、僕が知ってる術式を全て書いた。


キーン コーン カーン コーン

「やめ!」


あぁ、実に長いテストだった。

術式を書いた後時計を見ると後40分も余っていたので、僕は他の受験生の魔力量を探っていた。

この世界では、前世のようにスキルやレベルなどはみれないけれど、剣術はその人の体を見ればどのくらい上手いかは分かるし、魔力量も魔力感知で分かる。

見たところ、そんなに強そうな人はいなかった。


答案用紙と問題用紙が回収されると、


「では次は、実技テストになります。案内しますので、ついて来てください。」


とさっきの受付の人が教室に来た。

後ろをついていくと、着いたのは不思議なところだった。体育館のような建物なのだが、床だけは土なのだ。そして、真ん中には変な機械が置いてある。

すると、その機械の隣に立っていたガタイのいい男が、


「やあ諸君。これから基礎測定を行う。まずは、この機械で君たちの剣の威力を測らせてもらう。安心しろ、名一杯力を込めていいぞ。」


と言った。

どうやら、機械の真ん中にある石に向かって剣を振るうとその威力を数値として出してくれるらしい。


「ではまず、クレヘンス=レイシュ。お前からだ。」


「はい!」


そう言って、金髪に空色の目をした女の子が人混みから出てきた。

すると、周りがざわざわし始めた。注意深く会話を聞くと


「あの人が剣姫って呼ばれてるレイシュさん?」

「そうよ!とっても強いんだって。」


確かにあの子は見た目からしても、他の人よりも強い。


そして、レイシュさんが構えた。


「はっ!」


カンッという音と共にふわっと風がこちらまできた。なかなかにやるなぁ、と思い数字を見ると、

【今の記録 535】

この数字がどのくらい凄いのかは分からないが、超えたいと強く思った。

次は誰が呼ばれるのかとそわそわしていると、全然名前が呼ばれない。不思議に思って前へ行くと、さっきのガタイのいい男は固まっていた。


「嘘だ。俺がこの学校で教え初めて20年は経つが、500を超えるなんて見た事ないぞ。そもそも普通は100前後だっていうのに。その5倍…あり得ない。」


と、ぶつぶつ言っていた。

後ろで見ていた助手らしき人がため息をついて、


「はい、じゃあ次の、ルットラス=コルム君。」


僕の名前が呼ばれた。ワクワクしながら前に出ていくと、


「あいつ、コルムだってよ。魔力無しの無能なんだろ。」

「そうらしいな。しかも、スキルも遠視とか言う意味不明な無能なんだってよ。」

「無能な奴に無能なスキル。お似合いだな。あはははっ」


と、後ろでさっきとは大違いの声が聞こえてきたが、家で慣れている僕はなんとも思わなかった。


剣を構え、目を瞑り、魔力感知を使うと、機械の真ん中にあった石には魔力反応があった。

これなら近づいても当てられると確信した。

そして、言われた通り、思いっきり剣を振った。

ガタンッ

さっきとは違う音がした。あれ、おかしいなと思い目を開けると、

機会が石ごと横に真っ二つになっていた。

周りを見ると、皆んな空いた口が塞がらないようだった。

人は驚くと言葉も出ないらしい。


「あのー、僕どうしたらいいですかね。」


と、助手の女の人に言うと、はっと我に返ったようで


「皆さん、予想外の事態になりました。基礎測定は明日また行います。ですので、次の試験会場へご案内いたします。」


と慌てながらもしっかり対応してくれた。

呆然としながら女の人について行く皆んなを見て、僕も行こうとした。すると、


「貴方って強いのね!私より強い人久しぶりに見た!」


と、レイシュさんが話しかけてきた。


これが僕と彼女の初めての会話だった。

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