油断は禁物のようです。
「やり過ぎた。」
他の受験者が部屋から出て行くのを見ていた僕に、ネグルカが話しかけてきた。
「あれ、ネグルカ居たのか。」
「居たぞ、お前が機械真っ二つにするのもばっちり見てた。お前な、機械を壊さない程度に力抜かなきゃダメだろ。」
「だって、先生が全力でやっていいって。」
「それは、普通の人間に向かって言ったんだろ。」
と言って、ネグルカはコンコンと2つになった機械をつついた。
「ところで、コルム。行かなくていいのか?」
「あっ!行かなきゃ!」
扉の方を見ると、最後の一人が出て行くのが見え、僕は慌てて追った。
皆んなを追って着いたのは、大きな闘技場の様なところだった。
「それでは、前にあるトーナメント表をご確認ください。」
と言われたが、僕は誰が強いとか分からないから、見ても仕方ないなと思い、近くでストレッチをしていた。すると、
「私達、決勝で会いましょうね。」
と、レイシュさんが話しかけてきた。
「決勝で会うんですか?」
「え?もしかして、トーナメント表を見てないんですか?」
「ええ、僕は見ても誰か分からないですから。」
「まぁ、面白い人なんですね。ますます戦うのが楽しみです。」
そう言うと、また、人混みの中に消えていった。
しばらくして、他の教室にいた受験生たちも集まり、実践試験が始まった。
ドンッ
「勝者、コルム。」
いつもは盗賊を捕まえる時は怪我を負わせるが、試験で血が流れるのは嫌だ。
だから、僕は相手の纏う魔力が無くなった瞬間、後ろへ回り込み背中につかで一撃いれていた。確かにこの戦い方は不利ではあるが、勝てるのでまぁ良しとした。
僕は順調に勝ち進み、難なく決勝まで行った。
「やっぱり、決勝で会えましたね。レイシュさん。」
「さんはいらない。レイシュでいいわよ。」
「じゃあ、僕もコルムって呼んでくださいね。」
「2人とも、準備はいいですか?」
『はい!』
「それでは、はじめ!」
はじめの合図でレイシュは一気に距離を詰めてきた。僕は剣が折れないように斜めに剣を受け流した。
「へぇ、これにも対応できるのね。本当に貴方って強いのね。でも、貴方はこうすると弱いっ!」
そう言ってさっきと同じように近づいてくると、僕の盲目範囲2メートルに入った途端彼女の体から魔力が感じられなくなった。
焦って後ろによけると、僕が元いた場所に自慢げに立つ彼女がいた。
「ほら、今回は受け流すんじゃなくて避けた。つまりこれが貴方の弱点なのね。」
「そんな事が分かってどうするんだい?」
「相手の弱点がわかれば、攻め方がわかるのよ!」
そう言ってまた詰めてきた。だが、僕には耳がある。魔力が切られると分かっているのなら、剣を受け止められるし、耳に注意を払える。
カンッ
予想通りレイシュは魔力を解いてきた。
「あら、貴方、受け止められるの?」
「まあね。」
「ふふっ、面白い。」
そう言って僕と彼女は距離をとると、また近づいて剣を交合わせた。すると、会場から「剣姫と戦えてるって相手の子強くない?」と聞こえた。そして、少し調子に乗ったのもあって、このままじゃ勝敗がつかないと思った僕は、一気に勝負に出た。
彼女の足音が聞こえた所に行き剣を振った。すると、あたった感覚が無かった。そして次の瞬間
ドンッ
と頭に衝撃がきて、僕は意識を失った。
気がつくと、保健室らしき所に寝ていた。起き上がると、隣にはレイシュがいた。
「あ、起きた!大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。」
「良かったぁ。」
「ところで、僕は一体どうなったんだい?」
「えっとね。コルムが剣を振った時、私はコルムの後ろにいたの。で、隙ができたと思って頭に蹴りを…」
「なるほどね。」
僕は自分から攻撃を仕掛けた事で、自分の足音と混ざって相手の足音をうまく聞き取れなかったのだ。調子にのり、自分から手を出して負ける。なんともダサい。
「ありがとう。勉強になった。」
「こちらこそ勉強になったわ、ありがとう。」
そう言って彼女は出ていった。それと入れ違いでネグルカが入ってきた。
「ほら、いつまでも寝てないで、早く帰るぞ。お腹がすいた。」
相変わらず自由人だな、と思いつつ、今日の筆記試験での事もあり、付き合ってあげるかと起き上がった。
「じゃあ、今日の夜ご飯は奮発しようか。」
「分かってるなぁ!さすがコルムだ。よし、俺も食うぞ。」
と言って、僕たちは学院を後にした。
その日の夜
「嘘だろ。筆記試験で満点がいるのか?」
「ええ、満点なんてこの学院が始まってから一回もないのよ。しかも、今年は最後に例の問題が出てるのにね。そのおかげで今魔法科の教師たちは研究室に篭りっぱなしよ。」
「そりゃそうだろ。今まで誰も解けていなかった問題が解けたかもしれないんだから。で、そいつの名前は」
「ルットラス=コルムよ。」
「嘘だろ。そいつ、今日測定器を真っ二つにした奴じゃないか!」
「え、それもその子なの。本当に化け物ね。」
そんな会話が学園でされているともつゆ知らず、本人は豪華な夕食を楽しんでいた。




