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【第67話】舞い踊る呪い①




 毎度おなじみの禁書庫にて、本日任された物語をルーナと共に確認する。

 物語の名は『赤い靴』。



「このお話はわたし知ってるよ。

 踊り続けるやつだよね?」


「そうそう、どうにもならないから足を切り落として貰ったり、少し怖いお話だよ。

 大まかには知ってるけど、最後とかどうなるの?」


「え、足切っちゃうの?

 わたしが知ってるのは、街から遠く離れた砂漠で赤い靴だけが見つかるってやつだよ」


「もしかしたら、色々な終わりがあるのかもね」



 物語によってはそういう事がよくある。

 あまりに残酷な表現や、救いが無さ過ぎる物語は大まかなあらすじはそのままに、内容が少し優しい。



「………………今回のは僕が言っていた方かも。

 軽く読んでみた感じ、主人公(カーレン)が義足になってた」


「そうなんだ……わたしも読ませて」



 本を手渡すと、ルーナもさっと目を通す。

 僕もそうだけど、ルーナも読むの早いな。



「ふーん、こんな感じなんだ。

 なんて言うか、これってハッピーエンドなの?」


「捉え方によるかもしれないけど、宗教的な観点から見ると、この話は割とハッピーエンドらしいよ」



 まぁ、何処かで聞き齧っただけの情報だけどね。

 正直な所、僕はハッピーエンドとは思えない。



「よし! 行こうかルーナ!

 今回は十中八九、カーレンの異形でしょ」


「それは確かにそうだね! 行ってみよう!」


『悪しき者に正義の鉄槌を、助けの声に愛の手を』


『我は守護する者、扉よ開けこの命朽ち果てるまで』



 壁に描かれた魔法陣が淡く光っている事を確認し、僕達は魔法陣へと歩を進める。


 通り抜けた先は……町の郊外だろうか?

 町は綺麗に見えるが、ここは寂れているな。

 時折見かける人の服はボロボロだったり、裸足の人がほとんどだ。



「……取り敢えず、町に行ってみようか」


「そうだね、ここには長い事居たらダメな気がする」



 なるべく人目を避けつつ、町へと赴いた。

 町まで辿り着くと、先程の雰囲気とは打って変わり、石畳の綺麗な景観が見える。



「さぁ、異形が出そうな所を探し回るよ」


「って言うと、カーレンを引き取った人達の家か、教会とかかな?」


「そうだね。個人の家は探すのは骨が折れそうだから、まずは教会に向かおうと思う」



 とは言ったものの、教会何処だろう……

 僕の想像通りの建物なら、見ただけで分かると思うんだけどな。



「ルーナ、人気が少ない所で少し飛んでさ、背が一際高い建物を探してくれない?」


「いいよ、ここなら人もいないし!

 ちょっと見てくる〜」



 スーッと屋根まで飛び、辺りを見回している。

 しばらくすると何かを見つけたようで、下に降りて来た。



「あっちの方でね、背が高い建物と人だかりがあったよ」


「人だかりか……場合によっては戦い難そうだね」


「人って神様とか天使を崇めてたりするんでしょ?

 わたしももしかして?」


「信心深い人なら崇められるかも?」



 出来ればルーナの翼は隠して教会に行きたい。

 一か八か、万年筆で長い布を描いてみた。

 ルーナに翼を折り畳んでもらい、その上から布で覆ってドレスのように仕上げる。



「うぇぇ……ごわごわする……」


「少しだけ我慢してよ……戦闘の時は外していいからさ」


「分かった……」



 

 渋々了承を得て教会の方向へ進む。

 ある程度歩くと、だんだん人が増えてきた。

 教会が目視出来る程の距離になると、洒落にならない人だかりに目眩がしそうだ。


 人混みを押し分けながらルーナと教会を目指す。

 外側は教会で何が起こっているか分からない人達、中層では中で起こっている事を噂したりしていた。

 そして人だかりの中心、自警団? のような人達が教会に人が立ち入れないように塞いでいた。



「あの、ここで何があったんですか?」


「ん? お前さん達、まだガキじゃねぇか?

 あんなもん、ガキが見ていいもんじゃねぇよ……

 おら、危ねぇからとっとと家に帰んな!」


「いや、僕達の話を少し聞いてください。

 えっと、お兄さんは……神を信じますか?」



 僕達を見るおじさんの目が、少し真剣な物になる。

 この反応を見るに信心深い人だろう。

 よし、このまま押し切る。



「神様? 少なくともこの街に住んでる人間に信じて無ぇ奴は居ないな。それがどうした?」


「おじさん、少しこっちに……」



 おじさんの手を引き、人混みから離れた場所へ。

 そして──。



「う、嘘だろう……

 夢じゃ……ないんだよな?」



 描いた布で隠していたルーナの翼を見せた。

 ルーナの姿を見たおじさんは尻もちを付く。



「見ての通りです。

 ここで起こっている事を解決する為に、僕達は遣わされました」


「遣わされたって……あっ!」




 おじさんは慌てたように片膝を突き、手を胸の前で組んで頭を垂れる。

 これは祈りを捧げる所作だろう。

 ルーナの方を見ると、「どうしたらいいの!?」と言う顔で訴えてくる。



「御使い様、どうか私の愚かな発言をお許しください。

 今後は一層、清く正しく精進致します。

 どうか、お許しください……」



 おじさんが下を向いてる内に、耳打ちでこっそりルーナに台詞を吹き込む。



「えぇっと……ゆ、許します!

 ですから、わ、わたし達を教会の敷地内へ連れて行って貰えますか?」


「っ! ありがとうございます!

 私でよろしければ是非、案内させてください!」



 上手くいった! 人見知りのルーナには酷な役回りを押し付けちゃったから、後できちんと謝っておこうかな……


 おじさんに着いて行き、案内された先は協会の裏口らしき場所。

 異形と戦ったのか、何人か倒れている人も見える。

 もう少し進むとようやく見えてきた。

 幾つもの死体を足蹴にして、僕達の前に現れた。

 軽快な足音と共に。



「うわぁ、これは酷い」


「ひっ……」



 ルーナも珍しく顔を引き攣らせる。

 でも、これは仕方ない。

 赤い靴だけならまだ良かった。

 靴の上には仰向けで引きずられて、ズタズタになったカーレンがそのままなのだから。

 その両目は既に光を失っており、手はだらりと伸び切っている。



「おじさん、案内ありがとうございます。

 ここから先は僕達が対処しますので、安全の為に他の人が入れないようにしておいてください」


「分かりました、御使い様もどうかお気を付けて」



 おじさんを見送った所で、再び異形と向き合う。

 さぁ、異形退治の始まりだ。




読んでいただきありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、そう来ましたか! 今回の異形には今までと一味違ったエグさがあります。ヤバそうでドキドキします!
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