【第63話】思わぬ同行者
禁書庫の隠し部屋にて、衝撃の事実を明かされた。
僕の前任者が何かをしてしまい、牢獄の中に囚われているらしい。
「それでは、他世界の物語も見て貰えましたし、お2人は本日分の異形を……「ちょっと待ってください!」」
割と重要な話を流されそうになった為、慌てて止めた。
流石にここまで聞いて流すのは無理だろう。
「いやあの、知りたいです。
僕の前任者が何をしたのか、何故そうなったのかを」
「そうですか……
いえ、そうですね。いつかは話さなくてはならないなら、今話しておきましょうか」
リオ爺は視線を少し、鎖で巻かれた純白の本に向け、何があったのかを語り出す。
「この中に入っている者、名は"ディクティオ"。
力を得る為、相方の天翼族を喰らった者です。
彼の思想は危険極まりないと判断され、こういう形で自らの手で封じております」
は……? 相方を喰らう? 力を得る為?
そんな勝手な事があるか?
いや、事情を知らないから何とも言えないけど、それでも……
その食べられた天翼族の人とルーナを、頭の中で重ねてしまう。
何があっても、ルーナにそんな事はしたくないし、そんな選択肢を与えたくない。
「彼はわたくし同様に神域の産まれでしたが、物心ついた時には、既に並々ならぬ憎悪を抱かれておりました」
「リオ爺が何かしちゃった……とかでも無く?」
「そうであれば、どれだけ良かったか事でしょう。
生憎、わたくしにも分からない有り様でしてね。
何を何度聞いても、言葉すら交わそうとしませんでした」
そう語るリオ爺の表情は、今までに見た事がない程に複雑な感情を表している。
訳も分からず憎まれて、力を得る為とパートナーを喰らったと聞かされ、最後には自分の手で封じたんだ。
お世辞にも気持ちが分かるなんて言えそうにもない。
「慣れないながらも、息子のように育てたつもりでしたが、愛は届かなかったようですね。
さて、この話はここまでに致しましょう。
わたくしはこれからこちらの本に入ります。
もし、5日の間にわたくしが戻らなければ、あなた達が対処してください。
どんな手を使っても構いません。
他世界の異形が外に出る事態だけは避けてください」
「「分かりました!」」
「いい返事です。
そう言えば、お2人に本日入っていただく本は既に机の上に準備してありますので、よろしくお願いします。
では、後は任せましたよ」
「リオ爺はいつもの所から本に入らないんですか?」
「これらの本を外へ持ち出すのは危険ですのでね。
この部屋にはあの壁と似た魔法陣が刻まれています故、いつものように合言葉を唱えれば、ここから本を出すこと無く物語の中に入る事が出来ます」
話が終わると、僕とルーナはリオ爺を残して隠し部屋から禁書庫へと戻った。
「リオ爺さん、大丈夫だよね?」
「今は信じるしかないよ。
あの人はここの誰よりも強いんだから」
「そっか、そうだね。
それなら、わたし達も行こっか!」
さて、机に置いてある本は……と、『ヒナギク』?
これはまたマイナーな本だこと……
先にどんな物語か改めて確認した方が良さそうかな。
「あれ? クーちゃんにセルビアちゃん!
こんな所でどうしたの?」
え、来てるの?
先輩はともかく、セルビアまで?
リオ爺に用事とかだったら、少し遅かったな。
いや、まだ間に合うかな?
「先輩、どうしたんですか?」
「……ん……セルビアが……見学したいって」
「見学って、異形退治をですか!?」
「……一応…オラシア様には……許可もらった」
許可を貰っちゃったのかぁ。
えぇ、どうしよう? 普通に危ないしな……
「うーん、どう思うルーナ?」
「どんな異形かにもよるし、どちらかが守りながらだと異形を倒すのが難しくなるし……」
「……そこは…クークラに…お任せあれ……キュピーン」
僕の歓迎会以来だな、この決めポーズを見るの。
いやでも、先輩の足の速さは知っているとは言え、本当に大丈夫なのかな……
「危なくなったらすぐに戻ると約束出来ますか?
セルビアや先輩に何かあったら嫌なので、これだけは約束してください」
「……ん……了承した……セルビアも…いい?」
「うん! お兄ちゃんにお姉ちゃん達、よろしくね?」
「じゃあ皆で出発だね!」
魔法陣の壁の前で4人で本に手を置き、それぞれの合言葉を唱える。
『悪しき者に正義の鉄槌を、助けの声に愛の手を』
『我は守護する者、扉よ開けこの命朽ち果てるまで』
『……そーれ…ほい』
なんだその投げやりで気が抜ける合言葉は……
あれ、セルビアが戸惑ってる。
そっか、これ初めてか。
「開けゴマとかでいいよ。
オラシアさんやメイレールさんもそうだから」
「わ、分かった。やってみる!」
『開けゴマ!』
ポゥッと魔法陣が光ったから、多分これで登録? されたんだと思う。
これで準備は整った。
「ルーナ、最後尾を頼めるかな?」
「え、殿って事? いいの!?」
「いいのって……そりゃルーナにしか頼めないし」
「ふふふ……殿を任されちゃった〜」
なんだ、ニヤニヤとして。そんなに嬉しかったのか?
何はともあれ、ヒナギクの世界に入り込むとしよう。
「それでは、しゅっぱーつ!」
『おー!』
僕達4人は魔法陣へと歩を進めた。
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次回は4人で異形退治です!
お楽しみに!




