【第64話】異形が護るもの①
傍から見たら子供4人、童話『ヒナギク』の世界へ足を踏み入れた。
目の前には家、と言うよりは屋敷だろうか?
どうやらその庭に出たようだ。
「何処から見て回ろうかな……と」
「取り敢えず、1番怪しいのはお家の中じゃない?」
そもそもこの物語、かなり狭いな……
庭と屋敷だけなのか?
でも、実際に庭と屋敷以外の景色は見えない。
辺りを警戒しながら、慎重に屋内へと続く扉を開ける。
僕が先行して入ると、後の3人も続いて入って来た。
「色々調べて見よう。離れ過ぎないように気を付けて」
「……了解した」
「わ、分かった」
調べてみたけど、思ったより普通の部屋だな。
特に変わった所も見当たらないし、殺気も感じない。
「なんか、何も無いね? もっと奥にも行ってみる?」
「そうだね、ルーナは引き続き後ろを頼むよ。
ここに扉があるからここから探索してみよう」
最初に入った部屋の奥で見つけた扉を開けると、暗い雰囲気の廊下に繋がっていた。
不気味なほど静かな屋敷に、僕達の足音だけが響く。
見渡して気付いたが、廊下の突き当たりにある部屋だけが、他と比べるとかなり暗く見えた。
そもそも屋敷内が薄暗いのもあるけど、そこだけは見るからに怪しい。
「よし、あの扉まで行ってみよう」
『(コク)』
僕の後ろの3人が無言で頷く。
古びた廊下は歩く度にギィィっと不気味な音が鳴る。
例の突き当たりのドア付近までたどり着くと、暗く見えた正体が分かった。
「草……だね」
「草?」
扉の隙間から鬱蒼と生い茂っている。
よく見ると少しずつではあるが、植物が廊下へ侵食して行くのが確認できた。
間違い無く、この扉の先に居る。
「みんな準備はいい? 先輩はセルビアを頼みますよ」
「……ん……任せろ」
僕は両手に鎌を描き持ち、取っ手に手を掛ける。
音が鳴らないようにゆっくりと取っ手を傾け、扉を半開き状態にした。
部屋の中を覗くと、何やら部屋全体が生き物かのように蠢いている。
正直ちょっと…いや、だいぶ気持ち悪い……
「部屋の上下左右全部が異形っぽい。
最初に僕が入って気を引くから、その後にルーナも入って来て。
セルビア達は危ないから、ここから見てて」
「分かった。お兄ちゃん達も気を付けてね?」
さぁ、かっこいい所を見せないとな。
と言っても僕がしている事って、よくよく考えると止めを刺してるだけなんだよなぁ……
「ルーナ」
「行けるよ」
よし、じゃあ早速──。
扉を押し開いて中に飛び込む。
目に映る植物を、手当たり次第に鎌で刈り取る。
しかし、刈り取る速度より生えてくる速度の方が早い。
「キリがないな……!」
「わたしも行くよ!」
ルーナも入って来た。
戦鎚を器用に振り回して草をすり潰す。
たが、やっぱり攻めあぐねてるな……
何処かに弱点とか無いのか?
部屋を見回しても特に何も……
その時、不自然な箇所を見つけた。
部屋の隅に1箇所だけ、白い花が咲いている事に。
「ルーナ! こっち!」
「了解!」
僕の鎌が、ルーナの鉄槌が──。
ガギィィィンンッ!!
たった1輪の花に盛大に弾かれた。
全力の一撃だったんだけど!?
ルーナも相当驚いているようだ。
今まで切ってきたどの異形よりも硬いかもしれない。
「あの花、硬すぎるよナツメ君!」
「他の場所は難なく切れるのに……」
それも去ることながら、何より部屋が狭い。
室内での戦いはシンデレラの物語で経験してはいるけど、ここは普通の部屋だ。
長身の武器は使えないし、ルーナもかなり加減して戦鎚を振るっている様子。
何か策を考えないと……
そもそも、何でこの異形はこの部屋にだけ居るんだ?
部屋を侵食できるなら、この屋敷ごと侵食してもいいだろうに。
侵食するには限界があるのか?
いや、そもそも侵食する必要が無かった?
「この部屋だけで完結する何かがあるなら……」
「……ナツメ君、何か思い付いたの?」
「毎度の如く、確証は無いけどね。
ルーナ、この部屋にある椅子とか机とか、壁以外の全部を叩き壊してくれる?」
「え、ここの物を壊すだけ? 任せて!」
そう言うやいなや、鬼神の如き膂力で目に映る全ての物の破壊を始めた。
植物に覆われた椅子や、壁に掛かった絵画、その他も形ある物は次々と粉砕する。
ここまでしても、花の異形に動きはない。
「ルーナ! 花の後ろにある箱っぽいの壊して!」
「分かった! それっ!!」
その時、花の異形が初めて牙を剥いた。
植物が全身を這って、僕達を拘束しようとして来る。
力は強くないけど、ここまで数が多いと……
「……後輩……ピンチ?」
「先輩!? 何で居るんですか!? セルビアは?」
「……助けに来た……セルビアは…ドア前」
「助けにって……え、あれ?」
僕に巻きついていた植物がバラバラと床に落ちた。
マジで? 先輩がやったのこれ?
いや、今はどうでもいいや。
「ルーナ、外に避難しよう!
セルビアも連れてってあげて!」
「りょーかい!」
ルーナは纏わり付く植物を引きちぎって部屋を出た。
僕も急いで行くか。
「……後輩…舌…噛まないでね……」
「え、はい……へ? うわぁぁぁあああ!!?」
返事をした途端、天地がひっくり返ってすごい勢いで部屋から脱出させられた。
僕を放り投げたの!?
投げられたと思えば今度は──。
「……よっ…と」
「な、ナイスキャッチ?」
「……ん……もっと褒めてもいい」
先輩に投げられた先で、先輩にキャッチされる。
もうやってる事が滅茶苦茶だよ……
とにかく、今は外に出よう。
庭に出ると、先に避難したルーナとセルビアがいた。
2人とも怪我は無いようで良かった。
さて、ここからどうするかな……
謎の箱に攻撃を仕掛けた僕達を許さないと言わんばかりに、屋敷から植物がワシャワシャと這い出てくる。
「……ここからは……クークラも…参加する。
……異論は…認めない」
花の異形と僕達3人の戦いが始まった。
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次週もクークラちゃん活躍します!




