【第50話】燃ゆる迷宮の主③
祝50話達成なのです!!
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それではお楽しみください!
「わぁぁ、燃えてる〜」
燃え盛る街を見て、何とも気が抜ける声で我らが女神様はそう告げる。
街は相変わらず幻影のようなもので景色を変えながら、僕達の道行きを阻んでくる。
一応、禁書庫までの道中に概要は説明しておいたが、百聞は一見にしかず。
「これは、凄いですね……
聞いていたより目まぐるしく変化しますね」
メイレールさんは辺りを見回しながら、感嘆の声を漏らす。
いや、最初に来た時より変化が早くなってる?
もしかすると、何かあったのか!?
「急いで向かいましょう! さっき来た時より景色の変化が早くなってます!」
「分かりました、早急に向かいましょう」
先程と同様に、ルーナに壁を壊して貰いながら街の中心へ向かう。
街の中心、噴水がある場所まで特に難なく到着した。
マッチ売りの少女は噴水の縁で、ちゃんと僕達を待ってくれていた。
僕達を見つけた少女は目を潤ませて、無理矢理に作ったような歪んだ笑顔で出迎えた。
「何日経っても、来ないから……
忘れられたのかと思っちゃった……」
訓練用の白い本の影響か……
これは申し訳ない事をしてしまった。
よく見ると目の周りが赤く腫れていて、長い時間涙を流していた事が分かる。
「長い時間待たせて、ごめんなさい!
でも、もう大丈夫! 君をここから救い出せるよ!」
「でも、炎が……何処までも着いてくるよ?」
「大丈夫よ〜! その辺はお姉さんがどうにかしてあげるから!」
力こぶなんて無い、華奢な腕を見せつけてドヤ顔を披露するオラシアさん。
なんでこんなに頼りなく見えるんだろう……
「それじゃ、始めますよ〜! お姉さんに君の両手を貸してくれるかな?」
少女は不安そうな顔をしながらも、言われるがままに両手をオラシアさんに預ける。
その様子を見ていたかったのだが、何故かメイレールさんに止められた。
「さぁナツメさんにルーナさん、ここからは私達が気張らなければなりませんよ?
周辺の炎が物語の主を逃がすまいと襲ってくるでしょうから、全力で後ろの2人を守ります」
「えっ? は、はい!」
「分かりました!」
何処から炎が来てもいいように筆を構える。
メイレールさんは両脇を締め、拳を顎の近くに構えた。
ボクシング等で見るファイティングポーズだ。
「メイレールさん、素手ですか?」
「生憎、この拳より美麗な武器を知りませんので」
何だそれ、めちゃくちゃカッコイイじゃないか……
僕も負けないように魅せないと!
少し考えた結果、僕は背の丈ほどの扇を描き持って炎に備える。
『祈りの女神オラシアが乞い願う。
彼の者を物語の呪縛から解放されたし。
封魔の輪よ、我が血肉を贄に顕現せよ!』
僕達の後ろからそのような祝詞? のようなものが聞こえてくる。
聞き慣れない言葉とか、我が血肉とか正直すっごい気になる。気になるけど──。
「うぉらぁぁああ!!!」
「ナツメさん! 後ろ!」
すぐそこまで炎が迫っていた。
それをメイレールさんが拳を振るう風圧だけで払い除けてくれる。
オラシアさんが手を握った辺りから、炎の動きが活発的というか、獰猛になった。
「ナツメ君、こっちも扇いで!!」
「りょー……かいっ!!!」
僕の扇に扇がれた炎は、ボボボっという音を立ててルーナの周りの炎を掻き消した。
僕、ルーナ、メイレールさんのいずれかを狙ってくれるならまだしも、炎の狙いは後ろにいるオラシアさんだからかなり気を遣う。
「これっ、いつまでっ! ……続くんですか!?」
「後ろの作業が終われば収まるはずです!
熱いのは分かりますが、バテている暇はありませんよ!」
「せめてどれくらいで終わるかの目処を教えて貰えると助かります!」
「ちなみにクークラの時は3日程は掛かりましたね……」
衝撃の事実。この炎相手に3日は辛い!
何より体力が持たないし、精神の消耗も激しい。
そんな事を考えている間にも炎は容赦無く襲ってくる。
「ナツメ君! もうここ更地にしたい!」
「ルーナ落ち着いて、意識をしっかり保って!」
かれこれどれほどの時間、炎の相手をしていただろうか……
正直言うと僕もかなり危ない状態ではある。
縦横無尽に何度も襲いかかる炎を扇で防いだり、風を起こしてかき消したり。
僕は風を起こせる武器だがルーナは戦鎚を振るう風圧で応戦しているからか、体力の消耗がかなり激しい。
おかげで脳筋に拍車がかかってしまっている。
「2人とも冷静に心頭滅却なさい。
焦らず、余裕を持って、視野を広く」
メイレールさんからの忠告が飛んでくる。
確かに僕達は冷静じゃなかった。
服の袖を口に当て、煙を吸い込まないように深呼吸する。
現状、四方八方から炎が来るから神経を使う。
ならば──。
「メイレールさん、しばらく1人で相手できますか?
この炎、まとめます」
「ええ、構いませんよ。全て対処致しましょう」
了承を得る事はできた。後はルーナと上手いこといけば成功すると思う。
「ルーナ! 僕に向かって風を一定の間隔で送って!」
「分かった! 行くよー!」
オラシアさんやメイレールさんから少し距離を取り、ルーナは僕の指示通りに風を送る。
僕はそれに合わせて、ルーナから少し横にずれた位置に扇で風を返す。
「えい!」「それ!」「えい!」「それ!」
交互に声を出して風を起こし合う。
すると少しずつではあるが、炎が渦を巻き始める。
最初はつむじ風程の小さい物だったが、回数を重ねる毎に大きく、高く、太く渦巻いていく。
「ナツメ君、これ大丈夫?」
「う……だいじょばないかも……」
「まとめて頂いたおかげで楽ができました。
後はお任せ下さい。 フッ!」
炎の柱の根元に向けて軽くジャブを放つ。
拳の風圧が届いた箇所は穴が空くのだが、渦の勢いが止まる気配は無い。
それどころか、縦に伸びていた炎の渦が横に倒れ、まるで大蛇がとぐろを巻くように僕達を取り囲んだ。
「ルーナ、僕の所まで下がって!
メイレールさん、どうしましょう!?」
「これは参りましたね……どうしましょう?」
絶体絶命という言葉が頭を過ぎる。
しかし次の瞬間、嘘のようにあっさりと終わりを迎えた。
取り囲んでいた炎は霧散し、元々の街の姿が顕になる。
「みんなお疲れ様でした〜。
こちらの作業は終わりましたよ!」
緊張感の欠けらも無い声で、オラシアさんが作業の終了を告げる。
マッチ売りの少女は、何故かオラシアさんに目隠しをされて困惑している。
「ナツメ君、速やかに図書館へ帰りましょうか?
この街の本当の姿をこの子に見せる訳には行けません」
「……え、あっ……!」
そうか、確かにこれは見せられない。
改めて周りを見渡すと、先程は炎の幻影で隠れていた物が顕になっていた。
燃えて倒壊した建物、そして……その下敷きになっているいくつもの黒焦げの人間。
その死体は皆ガッツポーズのような奇妙な姿勢で、焦げ固まっている。
女の子には刺激が強過ぎる。
オラシアさんなりの配慮だったんだな。
であれば、早く帰ろう。
『そして物語は幕を閉じる』




