【第42話】憤怒の異形と涙①
禁書庫に着いた僕とルーナ、それからリオ爺の3人は、これから入る物語の本を手にして、魔法陣が描かれた壁の前に立っている。
「それではわたくしはもう参りますので、そちらは任せましたよ。
くれぐれも怪我をせぬよう、安全第一でお願いします」
「分かりました。
リオ爺が行った後に僕達も物語に入りますね。
気を付けて行ってください!」
『我が願いに応じ見せよ…物語のその先を…結末の向こう側を』
リオ爺は軽く手を上げ「ではお先に」と言い残し、魔法陣の壁へと消えていく。
リオ爺が完全にいなくなった事を確認して、僕も本を机に置いた。
「よし、僕らも行こうか?」
「だね。言われた通り、安全第一でね」
本の上に2人で手を重ねる。
『悪しき者に正義の鉄槌を、助けの声に愛の手を』
『我は守護する者、扉よ開けこの命朽ち果てるまで』
いつものように、淡く光る魔法陣をくぐり抜ける──。
魔法陣を抜けた先は町……と言うよりは、規模的には小さな村だろうか?
藁葺き屋根の小さな家屋が数軒並んでいる規模の、可もなく不可もない、至って平凡な村だ。
──壊滅している事を除けば。
「ねぇナツメ君……異形のせい、だよね?」
「たぶんそうだと思うけど……
まぁ、人は……避難したのかな」
壊滅こそしているが、誰も倒れていたりはしていない。
いや、鬼だったら人も……
想像したら背中がぶるっと震える。
異形に繋がる手掛かりがないか、周囲の探索を始めた。
小さな村だし、調べる箇所もかなり少ない。
その時、村の入口らしき場所に落ちている板に村の名前? らしき物が縦書きで書いてある。
昔の字だが、辛うじて読める。
「益荒男の……村?
ルーナ! こっちに来てちょっと見てみてよ!」
その看板をルーナにも見てもらう。
「ますらお……って、なに?」
「立派な男とか、強い男って意味だね」
「強い男……って桃太郎の事だよね。
ここで生まれたのかな?」
「分からないけど、益荒男の村をこんなにしたってことは、桃太郎に相当の恨みがあったんだろうね……」
改めてもう一度、辺りを見回してみる。
倒壊寸前の家屋、散乱する瓦礫、なぎ倒された柵。
規則性などは無く、ただ無造作に破壊された感じだ。
せめて人に聞ければ良かったけど、周りに人がいる気配も無いし……
「ルーナ、上から見渡せる?」
「見てみるよ」
ドッ! っと一蹴りでかなり高い所まで飛び上がった。
うわぁ、地面えぐれてるじゃん……
「ナツメ君! あっち! あっちに何かいる!」
「分かった、行ってみよう!」
僕からは見えないが、ルーナは指差す方向に何かが見えるみたいだ。
ルーナが指さした方向へ延々と歩いていみる。
ここまでの道のりには度々破壊の痕跡が見て取れた事から、着実に異形には近ずいているはずだ。
「おかしいなぁ、わたしが見た時は森の手前位にいたんだけどな……
早いところ追いかけなきゃなのに」
「しょうがないよ、異形も動くんだから。
森で戦うのはちょっと嫌だけどね。
……ルーナ、下がって。向こうから来てくれたよ」
全貌は見えないが、並々ならぬ殺気が肌をピリピリと刺激する。
森の少し奥、目の前にある木々を避けずに、殴り倒しながらソレがゆっくり迫って来る。
「大きさはそこまでじゃないっぽいけど……
この異形、かなりヤバいよナツメ君!」
「うん、気を抜いたら膝が震えちゃいそうだよ……!」
そして、とうとうソレが姿を顕にした。
背丈は僕やルーナより頭1つ分高いくらいなのだが、その腕は地面に付きそうなほど長く、そして太い。
皮膚は全体的に赤黒く、所々に刺々しい骨のような物が突き出し、額にはそれはそれは立派な一本角が禍々しく主張している。
見間違いようもなく、鬼の異形だ。
「ルーナ! まずは様子見で行くよ!」
「りょーかい!」
羽根ペンを走らせ、片手間描いた槍を幾つか異形に向けて投擲した。
異形は避ける素振りも見せず、異形の肩や腹部に深々と刺さる。
「わたしも! えいっ!」
ゴッッ!!
ルーナの戦鎚も異形の横っ腹にクリーンヒット。
ズサーっと転がった先で、ゆらりと立ち上がる。
今までの異形と何かが違う……?
「ルーナ! 今の内に叩くよ!」
「分かった! 全力で行く!」
ルーナは背後から異形を打ち上げるように戦鎚を振るい、僕は宙に浮いた異形の着地点に槍を描き構える。
またしても鬼の異形は何もせず、やられるがままルーナの戦鎚も僕の槍も受け入れる。
「ナツメ君! 手応えはあるのに、アイツにはほとんど効いてないよ!」
「分かってる! でも、反撃が来るまでは押さないと!
今の内になるべくダメージを稼がないと!」
それから僕達は数分間もの猛攻を続けた。
あらゆる武器で刺し、打ち、削り、切り。
何度も、何度も、何度も……ただ頭を空っぽにして2人で攻撃を繰り返す。
しかし、未だに異形は倒れないし、反撃もしてこない。
「ハァッ……ハアッ……くそ、全然ダメだ……」
「ふぅ、ふぅ、体力持たないよ……」
諦めかけたその時、鬼の異形が動いた。
地面に付きそうなほど長い腕を天高く掲げ──。
──地面へと振り下ろした。
ただ、それだけ。
たったそれだけの行動で、異形を中心に直径10mほどのクレーターが出来上がった
離れていたから良かったものの、巻き込まれていたらと考えると、背中に冷たい汗が流れる。
「ここからが本番だ! 行くよ、ルーナ!」
「うん! 叩き潰しちゃうんだから!」
鬼の異形との戦いが始まる。
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書くぞぉ!




