【第37話】嫉妬に狂う異形 ②
意気込んでいたものの、異形は想像より手強かった。
「りゃぁああ!!」
ギィンンン……!
またこれだ、槍を振るってもこうして弾かれてしまう。
表皮は硬そうには見えないのに、何度切り付けてもかすり傷しか付かない。
槍を弾かれた手がビリビリと痺れる。
「ルーナ!」
「下がってて!」
息の合ったタイミングでルーナが異形の懐に入り込み、重い一撃を胴に打ち込んで異形を僕から離してくれる。
後ずさった異形はすぐに体制を建て直し、再び僕達を襲ってくる。
異形の攻撃は比較的単純で、4本ある足で踏みつける程度の動きしかしない。
ただ、1回でも当たれば致命傷は避けられない。
「ナツメ君! 1度下がって武器変えて!」
「分かった!」
皮膚が刃を通さないなら、打撃を加えてみよう。
僕は先端の槌が控え目な、柄が長い戦鎚を描き持ち再度異形の元に戻る。
異形が僕目掛けて足を振り上げ、踏み付ける直前に戦鎚で足を払う。
「倒れろ!!」
──ズズゥン……
異形の体制が崩れ、尻もちを付いた形になった。
その時の風圧で砂煙が舞い上がる。
異形が動けない内に一撃は入れておきたい。
「ルーナ! 全力で行って!!」
「任…され、たぁぁああ!!!」
ルーナは戦鎚を片手で構え、空中で何度か回転した勢いのまま異形目掛けて振り下ろす。
ルーナの渾身の一撃が叩き込まれた。
しかし──。
「ナツメ君! 手応え無いよ!?」
「っ!? ルーナは1度離れて!」
砂煙が収まり、少しずつ周辺が見えてくる。
だが、あの巨体がどこにも見当たらない。
急いで周りを見渡す──。
「ルーナ! 上!」
「ナツメ君! 後ろ!」
必要最低限の合図だけで注意を促す。
それぞれの死角から同時に異形が迫り来る。
僕は戦鎚で自分の周囲を真横に薙ぎ払う。
ルーナは上から迫る異形を身を翻して避けた。
お互いが異形から距離を取り、改めて異形を観察する。
下半身は仰向け、胴が捻れて上半身はうつ伏せ状態で這い回る異形が2体……
『し……で……ら…れ……』
『…ン……レレ………ラ…』
うわ……分離してもこの喋り方なのか!
今更ではあるが、この異形はシンデレラを虐めていた義姉の2人ある事は間違いないだろう。
そしてこの異形、恐らくだが目が見えていない。
戦闘中も音に反応して動いていた節がある。
「異形が2匹になっちゃったね、ナツメ君……」
「ホントにね……
しかも、合体してた時より動きが速いときた」
「1人1匹にする?」
「うわぁ、自信無いなぁ……
ルーナの背中を守る係を担当するよ」
「あ、なら私もナツメ君の背中を守る係で!」
「じゃ、決まりだね」
僕とルーナは背中合わせになって武器を構える。
異形は僕達を挟み撃ちのような形で飛び掛った。
「そぉれっ!!」
「えいっ!」
僕は異形の頭に戦鎚を叩き付け、ルーナは下から異形をかち上げる。
『ン…ガ………ク………グ……アア!!』
『…が…が…に…い………ぐあ……!!』
僕達を警戒したのか異形は距離を取り、最初の形態に戻ろうとしていた。
「2匹よりはマシだけど、キツイ……」
「なんかいい方法ないかな?」
その後も異形と何度かぶつかり合いが続いたが、こちら側の消耗が激しくなってきた。
僕は1度態勢を立て直すべく、戦略的撤退を決意する。
「チャームさん! 一旦引きます!」
何処からか見ているであろうチャームさんに告げた。
すると、隣室の小窓から何かが投げ込まれる。
それが地面に着くと同時くらい、投げ込まれた物から破裂音が幾度も鳴り響く。
なるほど、爆竹のような物か……
「2人とも! 今の内にこっちへ!」
「 「はい!」 」
謁見の間に入る時に使った壁の亀裂からチャームさんが手を振る。
異形が爆竹に気を取られている隙に、僕達は難無く隣室へ避難することが出来た。
謁見の間から少し離れるまで歩いた所で、ようやく会話を始める。
「いやぁ、凄かったね……正直驚いたよ。
君は魔法使い…なのかな?
それに君は本物の天使様なのかい?」
「だいたいそんな感じです……ハハハ……」
「事情があるんだろう、深く詮索はしないよ。
それよりも、アレはどうにか出来そうかい?」
正直、出来るか出来ないかで言うと『出来る』。
ただ、これを試すに至っては人手が足りない。
「作戦は思い付いたんですけど、何人かに手を貸して貰えませんか?」
「勿論だとも。具体的には何人くらい必要かな?
僕が動ける兵士を集めておこう」
「ありがとうございます。
そうですね、10人居れば行けると思います」
「分かった。
詳しい内容は兵を集めてから皆に話して欲しい。
僕は動ける兵士を募ってくるから、しばらくこの部屋に居てくれ」
案内されたのは、真ん中に大きなテーブルと椅子が数脚あるだけの簡素な部屋だ。
僕とルーナは近くにあった椅子に腰掛け、チャームさんの連絡を待つ。
「今回はどんな作戦なのか聞いていい?」
「それなんだけどね、ルーナの役割がかなり重要だよ。
間違い無く、1番しんどいと思う……」
「うわぁ……」
そんな露骨に嫌そうな顔を……
でも、ルーナは間違い無く最高戦力だから、前線を張って貰わなければならない。
そして僕は──。
奴を一撃で仕留める。
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次回、いよいよ決着!?
お楽しみに!




