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【第27話】最強へのリベンジ 〜 午前 〜




 翌朝、自室にて目が覚めた。

 メイレールさんとの1件が終わった後、僕は自室に運ばれてそのまま眠ってしまったらしい。

 体には痛みや倦怠感は無い。

 むしろ絶好調と言っても過言じゃない。


 体の調子や決闘までの日にちを考えると、リオ爺に一撃を入れるなら今日だな……


 思い立ったら行動あるのみ。

 身支度を整え、ルーナの具合を確認しに行く為に自室のドアを開く。

 すると、向かいのドアも同時に開く。


 顔を見せた女の子はまだ眠そうな顔をしていて、薄紫の髪も所々はねている。

 何気に寝起きのルーナを見るのは初めてかもしれない。


 鉢合わせたルーナは僕と目が合うと、にっこりと笑って「おはよ〜」と手を振る。



「おはよう。

 この後さ、朝ごはん食べたら僕の部屋に来れる?」


「うん、いいよぉ。作戦会議?」


「今日、リオ爺にリベンジしようと思う。

 だから、ルーナの意見も聞いておきたくて……」


「分かった……」



 そう返事をしたルーナの目にはもう、眠気など欠片も残ってはいなかった。







 朝食を食べ終えた僕らは1度部屋に集まり、改めてルーナにリオ爺に挑戦する旨を伝えた後、禁書庫に向かって歩きながら作戦会議をしていた。



「色々作戦を聞いたけど、どれも成功率低そうだよね……」


「僕も一か八かくらいで考えてるからね」



 ルーナの言う通り僕の考えた作戦は正直、リオ爺に通用するとは思っていない。

 だけど、作戦が無いよりは幾分マシだ。


 移動中に昨日のメイレールさんとの1件をルーナに話したら、ルーナもモネさんと似たような事をしていたらしい。

 ルーナのお姉さんの事も少し聞いた。

 本人は気にしないでと言っていたけれど、流石に少しは気を遣う。

 少ししんみりした雰囲気になってしまったが、何事も無く禁書庫に着いた。



「もう禁書庫に着いちゃったね……」


「今日が決闘の日程的に最後の訓練になるから、気を引き締めて行こう」


「どうする? 午前中はリオ爺さんに稽古つけてもらって、午後から本格的にやる?」


「そうしようか? 今日は1日訓練に回せるから、それが1番良いと思う」



 下手に張り切ると、午後の訓練で動けなくなるのだ。

 それでは勿体ないので、午前中は戦い方や、ルーナとの連携の練習をするのがベストだと思う。



「お二人共揃っていますね。

 今日の訓練はどうするか決まりましたかな?」



 ちょうどいいタイミングでリオ爺が現れた。

 コーヒーを片手にまったりと歩いて来る。


 取り敢えずルーナと話していた予定をリオ爺にも伝えると、快く了承してくれた。


 コーヒーを持ってない方の手で懐から禁書庫の鍵を取り出して、扉の鍵を開ける。



「では早速、中に入りましょうか」



 禁書庫に入ると、いつも通り魔法陣が書かれた壁の前に立ち、3人はそれぞれの合言葉を唱えて本の中へと入っていく。



「そうですね……午前は少し変わった訓練をしてみましょうか?」


「いつもと何か違うんですか?」


「百聞は一見にしかず。わたくしから少し離れていてくれますか?

 ルーナさんは床から少し浮いておいてください」


「「……?」」



 ルーナと顔を合わせて、お互い首を傾げる。

 なんの事か分からないが、言う通りにリオ爺から距離を取り、ルーナは少し浮いて止まっている。


 リオ爺は僕達が離れた事を確認すると筆を構える。

 ん? よく見えなかったけど、今足元に何か描いた?



「始めますので、気を付けてくおいてださい」



 何に気を付けろと言うのか……

 言ってくれないと気の付けようがない。



「わたくし達の武器の可能性をお見せしましょう……」



 リオ爺はその場にしゃがみ、筆の先端を床に付ける。

 そのまま筆でのの字を描くように動かす。

 すると、床がそこを中心に渦を巻き始める。

 真っ黒な渦が徐々に勢いを増し、僕らの足元まで迫って来る。


 僕は呆気にとられて、黒い渦の中に落ちてしまう。



「ナツメ君!? ほら、手!!」


「ありがとうルーナ、助かったよ……」



 ルーナが手を伸ばして渦から脱出させてくれた。

 僕は羽根ペンで自分の足元に足場を描いてそこに立つ。

 うわぁ、全身インクでべったべた。


 さっきリオ爺が足元に何か描いてたのは足場を作ってたのか……

 だから、ルーナも浮かせたんだ。



「教えてくれても良かったと思います!」


「はっはっは、すみません。

 ただ、状況を判断する能力を養って欲しかったのですよ」


「っていうか、こんな事ができるんですね……」



 僕達の足下には巨大な黒い渦が今も勢力を増して大きくなっている。

 リオ爺はその渦の中心地点に立っている。



「わたくしの数少ない技の1つで、【黒潮】と言います。

 さぁ、準備は整いました。この不安定な足場での特訓と参りましょう」



 リオ爺は体の横で手を広げ、「何処からでもかかって来なさい」とでも言いたげなポーズを取る。


 僕とルーナは理解した。これ、煽られている。



「ルーナ……」


「うん、分かってる」


「 「叩きのめそう!」 」



 僕はなるべく描く物の量を減らしたい為、今立っている足場を崩し、リオ爺がいる方向にインクの線を描き投げ、その上を駆ける。


 ルーナには僕の後ろから追って来てもらっている。

 時折、拳サイズの玉を後方に描いて飛ばし、リオ爺に向けてお得意の戦鎚でかっ飛ばしてもらう。

 まぁ、そんなちゃちな攻撃をした所で、事も無げに躱すか相殺されてしまうのだが……

 僕が元々考えていたいくつかの作戦も、この状況では全て意味を成さない。



 結局午前中の約8年の間、僕達2人はリオ爺に翻弄されるままに終わってしまった……


 しかし、あくまで本番は午後の訓練!

 2人が本気を出すのこれからなのだ。




【前日ナツメとの訓練を終えた直後】


「ナツメ君、とっても強くなっていましたね」


 オラシアは大量の書類が積み上がった机に向かいながら、嬉しそうに語る。


「そうですね、私の本気の殺気の中で意識を保てるとは、正直驚きました」


 一方メイレールは女神であるオラシアの頭を鷲掴みながらそう言う。


「あのぉ、メルちゃん……頭がね、その、痛いの」


「そうでしたか、仕事が終われば緩めますよ」


「あと、わたし思うんですけど、なんでわざわざ禁書庫で訓練をしたのですか?」


「無論、訓練を文字通り『秒』で終わらせて、駄女神に仕事をさせる為ですよ」


「うぅ、メルちゃんが厳しいよぅ……」


「ほら、泣き言を言ってる暇があるなら手を動かしてください」


 これは神界を統べる神であるはずであるオラシアの割と普通の日常である。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界観がますます魅力的に感じられます。 [一言] オラシアのユルさがたまらない!
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