【第20話】束の間の休息
お腹が減った……
そうだ、アレから寝ていたんだっけ。
頭痛は……治まってるな。
ここは僕の部屋かな?
「……後輩……起きた?」
「先輩……おはよう、ございます?」
「……ん……夜だけど…おはよ」
今は夜なのか……
それにしても、久しぶりの先輩だな。
この抑揚のない話し方、今はとても落ち着く。
重い体を起こし、先輩と向き合う。
「僕って、どれくらい眠ってました?」
「……ほぼ3日……ぐっすりだった」
3日か、そういえば休暇を貰ってたから大丈夫なのか。
そういえばルーナはどうなった?
僕よりも酷そうだったし……
「先輩、ルーナは?」
「……ん……大丈夫……今は一階で…ご飯食べてる」
良かった……
安心して、尚且つご飯という単語を聞いて思い出した。
お腹減ったなぁ……
「僕もご飯、食べたいです」
「……分かった……アルバに伝えてくる…
……後輩……1人で…歩ける?」
「僕は大丈夫そうなので、アルバさんによろしく言っておいてください」
先輩は頷くと駆け足で去っていった。
さて、僕もルーナの元に向かうか……
身体に痛みは無いけど、長い事寝ていた影響か足元がふらつく。
壁伝いに階段を降りて何とかダイニングに向かうと、テーブルの上には料理が準備されていた。
テーブルにはルーナが座って料理を食べまくっていた。
元気そうで何よりだ。
「やぁ、ナツメ君。気分はどうかな?
有り合わせで作っただけだけど、ゆっくり食べてね。
クークラ!」
「……ん!」
アルバさんが名前を呼ぶと、先輩は僕の椅子を引いて座るのを手伝ってくれる。
席に着くと、目の前に様々な料理が運ばれて来た。
有り合わせと言う割には、かなりのボリュームだ。
「喉を詰まらせないように召し上がれ」
「いただきます!」
いつも通り、手を合わせてからいただく。
久しぶりのご飯だ。
まずはスープで飢えた胃を慣らし、肉やパンを少しずつ口に運ぶ。
「──染み渡るなぁ……」
「あっ! ナツメ君、起きたんだ!
身体は大丈夫? わたしは全身バキバキだよ……」
「僕は割と大丈夫。ルーナも元気そうで良かったよ」
会話を楽しみながら2人で食事を終え、夜中ということもあり、明日に備えてこの日は寝る事になった。
◆◇◆◇◆◇◆
朝、他の図書館メンバーよりも遅れて朝食を取り、ダイニングで僕とルーナは休日に何をするかでプチ会議をしていた。
「さて、休日にどうするか考えようじゃないか」
「わたしは食べ歩きとかしたいかな……」
「……ん……賛成…」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ???
「先輩、なんで居るんですか?」
「……クークラも……行く」
「え、でも仕事は 「……行く!」 ……はい」
「じゃあ3人で食べて回ろっか!」
決まってしまえば後は早い。
以前のように受付のアベリアさんに見送られ、僕達は3人で図書館を後にした。
街はいつも通り活気に満ちており、歩いているだけで明るい気持ちになる。
「いろんな屋台が並んでるね〜!」
「ルーナは何か食べたい物ある?」
「わたしは美味しければ何でもいいよ。
クーちゃんは何食べたい?」
「……お肉……食べたい」
好きだなぁ、肉。
以前、散々な目に遭ったのに……
思い出すだけで満腹になりそうだ。
「……! ……あれ…食べよ?」
先輩が指さした先を見ると、棒に刺さった大きな肉の塊が火の上でぐるぐると回っている屋台があった。
非常に食欲を掻き立てられる肉の魅せ方だ。
焼けた肉は表面だけを薄く削るように切り、削った肉を薄いパン……? に野菜と共に挟んで売っている。
間違いない、これは『ケバブ』と言うやつだ!
僕達は屋台に向かい、3人分のケバブを注文した。
勿論、商品の売買はバッジで済ませる。
正直言うと、バッジを見せるだけで商品を受け取るのは未だに慣れない……
でもまぁ、今はそんなことより──
「美味しい〜!」
「うまぁ……」
「……ん……美味」
僕達の言葉のボキャブラリーの少ないな……
でも、本当に美味しい物を口にすると、誰だって多分こんな感じになるはずだ。
「……次……何食べる?」
「えっ!? もう食べちゃったんですか?」
確かにそんなに量は無かったけど、早いな……
まぁ僕も、半分以上は食べてるし似たような物か。
3人が食べ終わった所で、次の店を探す。
さっきのケバブが割とピリ辛だったので、口は甘い物を欲している。
「先輩、次は甘い系が食べたいです」
「……ん……クークラも…食べたい」
「確かに、ちょっと辛かったね」
甘味を売っているお店を探し歩いて数分、僕達はとても可愛いスイーツを売っている店と出会った。
串に刺した数種類の果物の表面に薄く飴がコーティングしてある。
非常にカラフルで尚且つ、甘そうだ!
早速購入して、まだ辛さが残る口で頬張る。
「おぉ、思ってたより甘いな……」
「うん、甘〜い! さっきの辛さがやっと中和されたよ」
「……甘々…美味しい」
「あっわたしパイン苦手だから、クーちゃん食べていいよ」
「……んぁ」
ルーナが先輩に食べさせてあげるという、何とも微笑ましい光景を楽しむ。
しかし、そんな僕達の平和はそう長く続かなかった。
「いた〜! ナツメ君、ルーナちゃん!!」
頭上の声に目を向けるが、逆光で誰かは分からない。
ただ、この声は割と聞き慣れた声だ。
僕達の前に着地した声の主に声を掛ける。
「そんなに急いでどうしたんですか、モネさん?」
「大変なんだよ! あの事がバレちゃったんだよ!
不甲斐ない団長でごめんね……」
「あの事?」
「あ、あの、もしかするとAクラスの人達絡みですか?」
「そうなんだよ、Aクラスの子達が早くもナツメ君がルーナちゃんを選んだ事を嗅ぎつけたんだよ!」
あの人達か、そういえばプライドは高そうだったな……
でも、バレたからなんだって言うんだろ?
「それでね、納得行かないから決闘だって言い出して……」
「決闘!?」
「そっか、ナツメ君は知らないかもだけど、生徒間での決闘は稀にある事なんだよ?」
ルーナはそう言うけど、穏やかじゃないな……
「そんな訳でね、来月に聖天騎士で決闘を開催するから、そこでルーナちゃんの実力を示して欲しいんだよ!」
「わ、私の実力って! 相手はAランクの生徒ですよね!?」
「本当はナツメ君が選んだ人だから、こんな事したくはないんだけど、もう収拾がつかなくて……」
モネさんが珍しく少し落ち込んでいるな。
ただ、ルーナだけが危ない目に合うのは絶対に嫌だ。
今、僕がルーナに出来る事と言えば──
「その決闘、僕とルーナのペアで参加出来ますか?」
僕は決闘への参加を申し出た。
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次回は決闘に向けて、また本の中へ……




