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プチ小説「納涼探偵P」  作者: まぜたん
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9/9

「粘着体質」

 フライパンがジュージューとなる。

 

 僕は、客人(3歳の女児リンちゃん)のために、焼きそばを作っている。

 

 「おなかすいたー。」


 「はいはい、もう少々お待ち下さいませ。」


 僕は、機嫌よく対応する。


 それは、罪滅ぼし半分、祝福半分の複雑な心理による行動だった。


 しかし、母親の許可もなしに食事を出しても大丈夫なのだろうか?

 「ユウ子さん?リンちゃんのお母さん、今ごろ心配してないかな?」


 「一応、話はついています。」


 「え?ユウ子さん、お母さんと話したってこと?」


 「・・・はい。」


 ま・・・、この話しは後にしよう。焼きそばが完成したし、食べながらでよい。


 「いっただっきまーす!」


 握り箸。さか手流。リンは、小さく切ったウインナーを串刺しにすると、かぶりついた。


 「おいしいよ。おねえちゃん、食べないの?」


 リンには、幽霊という概念はない。


 「うん。お姉ちゃん、お腹いっぱいなの。」


 ユウ子は軽く受け流した。


 僕は、焼きそばを食べながら、病院でのいきさつを、根掘り葉掘りと訊きだした。


 ユウ子の話しを要約する。

 リンは、昏睡状態より覚醒をすると、母親と会話をはじめる。→時より、ユウ子に向かって「だよねー!」などと話しかける。→母親にはユウ子が見えずに困惑。→リンの脳の精密検査を依頼。→異常なし。→専門医も困惑。→さらに、別の病院へ精密検査を依頼しようとする。


 「その検査は不要だと思いますよ。」


 そう言いながら、ユウ子は実体化してみせた。

 最初は驚いていたリンちゃんママも、徐々にユウ子に打ち解けた。

 さらに、昏睡状態だったリンの夢。と思っていた事が本当の事だったと知り、探偵さんにお礼がしたい。と言い出した。

 そんな気持ちを利用して母親に頼みこみ、リンを連れ出して来た。


――――――と、そんなところだ。


 「つまり、母親も連れて来ている?」


 僕が、いぶかしげにたずねると。


 「いいえ、よっPさんは、きっと嫌がると思ったので、二人で来ました。」


 「うんうん。なるほど・・・。」


 僕は、おもむろに立ち上がり玄関の扉を開くと、一人の女性が通りすがりを装っていた。


 「リンちゃんのお母さんですね。どうぞ、焼きそばでよろしければ食べていって下さい。」


 「へ・・・。いや私は・・・、はい。すみません。」


 まあ、3歳児の子供を幽霊と二人きりで外に出せる母親はいない。二人を尾行してくるのは当前だろう。


 「すみません。手土産もなしに・・・。」


 「いえいえ、お礼される様な事、何もしてませんから。」


 女子3人の合流で、多少ワチャワチャしたものの、直ぐに落ち着いた。


 しかし、僕は見逃さなかった。リンちゃんママの「ユウ子さん。良かったね〜。」という、文脈の解らない言葉に、ユウ子が気まずい顔をしていたのだ。

 

 「ユウ子さんに。何かいいことあったんですか?」

 あえてリンちゃんママにたずねた。


 「もちろんよ。ユウ子さんはね、探偵さんのそばを離れると消滅するんだから。」


 「消滅する・・・?」

 

 「そうよ。不安でずっと泣いていたのよ。」


 「そんな事ないですよ!」

 ユウ子の言葉を置き去りに、リンちゃんママは続けた。


 「ユウ子さんはね、生きている人間と心の繋がりが無いとダメらしいの。廃屋で、お互いに一目惚れしたんですよね。」


 廃屋で、お互いに一目惚れ・・・?


 あわてて、ユウ子が修正に入る。


 「そうは、言っていませんよ。私は、たましいが引かれ合った感じがした。と言ったんです。恋バナにアレンジし過ぎですよ。」


 もちろん、顔を赤くしている。


 「このたましいの繋がりが、長時間途切れると、私は消えそうになるんです。よっPさんのたましいが頼みの綱なんです。」


 リンちゃんママが嬉しそうに言う。

 「私は、そこに純愛を感じちゃったのよ。究極のプラトニックラブでしょう?」


 「はあ・・・。」


 この人、他人の話を勝手にアレンジして伝えてしまう。アレンジ魔。というトラブルメーカーかもしれない。


 しかし、まあ、この関係・・・。


 僕に本物の彼女ができた場合、ユウ子は別れてくれるのだろうか。結婚して家庭を持っても、ずっと僕にくっついているつもりだろうか。


 僕と別れて、他の誰かにくっつく事もあるのだろうか。


 それまでには、何とか全ての謎を解きあかし、成仏させてあげないとな・・・。


          「粘着体質」終。

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