「間違い探し」
――――ユウ子がいなくなり、数日が過ぎた。
「ピンポーン」
「ふぁい・・・。」
夜勤明けの眠い目をこすりながら玄関のドアを開くと、二人の幽霊が待っていた。
「お久しぶりです。」
ユウ子とりんちゃんである。
「何処行ってたんだよ!」
「何処って、・・・病院ですよ。」
違和感があった。ユウ子はそのままであるが、リンちゃんは何かが違うのである。
「あれ・・・?」
たしか、クマのプリントのフリースだったはず。よく見るとコアラのプリントのフリースに変わっていないか?
「リンちゃん。クマさんは?」
「クマさんは、おせんたく。」
「何⁉」
頭をなでると、しっかりとした感触がある。
「生身の人間だ。」
「私達、よっPさんにくっついていたんです。だから、直ぐに意識の回復が出来ました。」
ユウ子は目に涙を溜めていた。
「ご家族も看護師さん達もみな大喜びでした。よっPさんのお陰です。」
言いたい事はあったが、飲み込んだ。
「そっか・・・。」
つまり、あの時すでに、面会謝絶のプレートの向こう側にいたのか・・・。覚醒ののち精密検査など、数日あって退院できた。と、いうわけね。
「で・・・、リンちゃんは、どうしてまたここに来たのかな・・・?」
ユウ子がリンの背中を軽く押す。
「リンちゃんが、よっPさんに何か言いたい事があるそうです。」
ぎく・・・。確かに僕は大分冷酷な事を言った。全面的にユウ子が正しかった。あのままにしてたら、子供一人を見殺しにするところだった。何とでも言ってくれ。
「よっP。ありがとう。」
リンは言うが早いか、ユウ子の後ろにかくれてしまった。
「・・・ん⁉」
お礼⁉わざわざ、この冷酷非道の僕に⁉お礼を言いに来たのか⁉
「ちゃんと言えたね。リンちゃん。」
ユウ子がリンを褒めつつ、こちらを見る。
「私からも、よっPさん。リンちゃんを救ってくれて、ありがとうございました。」
美しい四十五度のお辞儀である。
「いやいや、おかしいって。僕の偏見かも知れないが、幽霊って普通、黄泉の国に引っ張る感じじゃないのか?」
言いながら、目から涙があふれ出た。
「ありがとうって・・・。おかしいよ・・・。ははは。」
多分僕にとって、生まれて初めての感情だった。
「たしかに・・・、おかしいですね・・・。」
ユウ子も涙をふきつつ笑っていた。
リンだけが不思議そうに、キョトンとしていた。
僕の臆病はなおらないが、この幽霊とならば、同居しても大丈夫かな・・・。なんて、思い始めていた。
「間違い探し」終。




