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プチ小説「納涼探偵P」  作者: まぜたん
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8/9

「間違い探し」

 ――――ユウ子がいなくなり、数日が過ぎた。

  

 「ピンポーン」


 「ふぁい・・・。」


 夜勤明けの眠い目をこすりながら玄関のドアを開くと、二人の幽霊が待っていた。


 「お久しぶりです。」


 ユウ子とりんちゃんである。

 

 「何処行ってたんだよ!」

 

 「何処って、・・・病院ですよ。」

 

 違和感があった。ユウ子はそのままであるが、リンちゃんは何かが違うのである。

 「あれ・・・?」

 たしか、クマのプリントのフリースだったはず。よく見るとコアラのプリントのフリースに変わっていないか?

 「リンちゃん。クマさんは?」


 「クマさんは、おせんたく。」


 「何⁉」


 頭をなでると、しっかりとした感触がある。


 「生身の人間だ。」


 「私達、よっPさんにくっついていたんです。だから、直ぐに意識の回復が出来ました。」

 ユウ子は目に涙を溜めていた。

 「ご家族も看護師さん達もみな大喜びでした。よっPさんのお陰です。」

 

 言いたい事はあったが、飲み込んだ。

 「そっか・・・。」

 つまり、あの時すでに、面会謝絶のプレートの向こう側にいたのか・・・。覚醒ののち精密検査など、数日あって退院できた。と、いうわけね。

 「で・・・、リンちゃんは、どうしてまたここに来たのかな・・・?」

 ユウ子がリンの背中を軽く押す。

 「リンちゃんが、よっPさんに何か言いたい事があるそうです。」


 ぎく・・・。確かに僕は大分冷酷な事を言った。全面的にユウ子が正しかった。あのままにしてたら、子供一人を見殺しにするところだった。何とでも言ってくれ。


 「よっP。ありがとう。」

 リンは言うが早いか、ユウ子の後ろにかくれてしまった。

 「・・・ん⁉」

 お礼⁉わざわざ、この冷酷非道の僕に⁉お礼を言いに来たのか⁉


 「ちゃんと言えたね。リンちゃん。」

 ユウ子がリンを褒めつつ、こちらを見る。

 「私からも、よっPさん。リンちゃんを救ってくれて、ありがとうございました。」

 美しい四十五度のお辞儀である。

 

 「いやいや、おかしいって。僕の偏見かも知れないが、幽霊って普通、黄泉の国に引っ張る感じじゃないのか?」

 言いながら、目から涙があふれ出た。

 「ありがとうって・・・。おかしいよ・・・。ははは。」

 多分僕にとって、生まれて初めての感情だった。

 「たしかに・・・、おかしいですね・・・。」

 ユウ子も涙をふきつつ笑っていた。

 リンだけが不思議そうに、キョトンとしていた。


 僕の臆病はなおらないが、この幽霊とならば、同居しても大丈夫かな・・・。なんて、思い始めていた。

 

             「間違い探し」終。

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